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2013/09/03

ザ・ロード

監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン/コディ・スミット=マクフィー/ロバート・デュヴァル/ガイ・ピアース/モリー・パーカー/マイケル・ケネス・ウィリアムズ/ギャレット・ディラハント/ボブ・ジェニングス/アグネス・ハーマン/シャーリーズ・セロン

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【灰色の世界を旅する父と子】
 大異変の後、動物は死に絶え、草木は枯れ果てて、この星は灰色の空と荒れた大地に覆われることとなった。妻も絶望とともに世を去り、残された男は“世界のすべて”である息子とともに南へ向けてひたすら歩を進める。わずかな食料や道具を積んだショッピングカートを押し、相次ぐ地震や倒れる木に怯え、人肉を喰らう者たちから逃げつつ、自ら命を絶つ術も準備して、進み続ける彼らの旅路。その先々で男と少年が目にするものは?
(2009年 アメリカ)

【親とともに生きる姿】
 荒廃した土地を舞台に、ただただ南を目指すロードムービー。暴徒や盗人たちと対峙するスリルはあるものの、設定から想像できるアクションSF的な要素はほとんどない。

 その静かな旅路を取り囲む、陽の射さない世界の作り込みが見事。色調の工夫やVFXの力も大きいのだろうが、いや作ったというよりも前に、よくこんな場所があったもんだ、それを不自然さなく見せられるもんだと感心させられる。グレイに覆われ、陰がはびこり、文明が崩れ去ったさまが、鮮やかに広がる。

 いっぽう、男の夢または回想として描かれる“before”は油絵のようにカラー豊か。と同時に、どこか儚げ(シャーリーズ・セロンが「もう逝ってしまった人」という雰囲気を全身にまとっているのが凄い)でもあり、これほど違いながら地続き感もある2つの世界がフラッシュバックされることで、哀しさは増す。
 音楽は常に静かだが、過去を思わせるピアノから不協和音まで振れ幅は大きく、この対比も作品世界の創出に貢献している。

 セロン似の少年、コディ・スミット=マクフィー君をキャスティングできたことも、本作にとっての幸運だ。誰がどう見ても「彼女の子」。この容貌と確かな演技力が、彼を“世界のすべて”だと感じる父親の心情に大きな説得力を与えている。

 さて、展開としては前述の通り「ただただ南を目指すロードムービー」であり、その中で出会う人との関わり、遭遇する出来事を単発的に見せていくスタイル。何かに向けて盛り上がっていくような作りではない。
 ただ、抑揚がないというより、序盤から早くも暴徒と対決するなど「1つ1つのエピソードは父子にとって一大事だが、それらを簡潔にまとめて見せている」といった雰囲気だ。

 なるほど、そもそも終末世界で生きるというのは、そういうことの連続なのだろう。なんとか生き延びようと足掻きながらも、諦めや覚悟も胸に秘めて日々を過ごす「人にとっての死の前の時期」を、やや淡々とした調子で描くことが本作の道。

 そして、父子に名前が与えられていないことからもわかるように、これは普遍的なテーマを持つ映画。
 子は単に親によって守られるだけでなく「自分より小さかった頃のパパ」や「善き人を見分けられなくなった心の歪み」、「パパなしで生きていかなくてはならない未来」といった、終末世界でもなお流れ続ける時間、人に刻々と訪れる変化を意識することになる。それこそが“親と関わりあいながら生きること”だと、この作品は告げているように感じる。

●主なスタッフ
 監督はミュージッククリップ出身らしく『プロポジション-血の誓約-』という映画が出世作である模様。原作は『ノーカントリー』のコーマック・マッカーシーで、イギリスでTVムービーなどを手がけてきたジョー・ペンホールが脚色。
 撮影は『赤ちゃんの逆襲』のハビエル・アギーレサロベ、編集は『ペネロピ』のジョン・グレゴリー。プロダクションデザインのクリス・ケネディ、衣装のマーゴット・ウィルソンは『プロポジション』でも監督と仕事をしており、その他の美術スタッフには『S.W.A.T.』のガーション・ギンズバーグや『クローバーフィールド』のロバート・グリーンフィールドら。
 音楽は『ジェシー・ジェームズの暗殺』のニック・ケイヴとウォーレン・エリス、サウンドエディターは『ミルク』などに携わったロバート・ジャクソン。SFXは『しあわせの隠れ場所』のデイヴィッド・フレッチャー、VFXは『ジャンパー』のマーク・O・フォーカー。

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