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2013/11/20

ジュリエットからの手紙

監督:ゲイリー・ウィニック
出演:アマンダ・セイフライド/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/クリストファー・イーガン/ガエル・ガルシア・ベルナル/ルイーザ・ラニエリ/マリナ・マッシローニ/リディア・ビオンディ/ミレーナ・ヴコティッチ/ルイーザ・デ・サンティス/マルシア・デボニス/ダニエル・バルドック/アシュレイ・リリー/オリヴァー・プラット/フランコ・ネロ

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3

【50年前の恋、現代の愛】
 イタリアのヴェローナを訪れた雑誌社勤めのソフィ。だがシェフである恋人ヴィクターは食材探しに夢中だ。仕方なくひとりで「ジュリエットの家」へ出かけたソフィは、壁に張られた無数の紙と、それらを回収する女性の姿を目にする。恋の悩みを吐露する手紙に「ジュリエットの秘書」たちが返事を書いているのだ。壁の中で50年も眠っていた手紙を偶然にも見つけたソフィは、その女性=クレアに対して返事を書くことになったのだが……。
(2010年 アメリカ)

【ただロマンチックなだけじゃない】
 ある意味で安っぽいプロットだと思う。偶然にも手紙を見つけ、その返事がちゃんと相手に届き、都合よく「いまの彼氏とは違う魅力を持つ男性」と出会い、そこから先も予定調和でお話が進む。
 もっと寄りゃあいいのにとか、ここはもう少しドラマチックに撮れたよなとか、画面作りもちょっと野暮ったい。
 でも映画としては、けっこう魅力的に仕上がっている。

 理由の第一は、ふたりの女性
 アマンダ・セイフライドって、ひょっとしたら演技はそれほど上手くないのかも知れない。少なくとも、やや硬めのセリフ回しは深刻な役柄には合わないような気がする。でも、とにかく表情の作りがチャーミング。意識を込めて相手を見上げたり、静かに悲しんだり、戸惑ったり。
 その変幻自在の顔が、若手美形女優にしては珍しく肉厚の体型とあいまって“可愛らしさ”を作り出す。彼女の魅力を引き立たせる衣装もいい。
 ヴァネッサ・レッドグレーヴは、もう立ち姿だけで、気品と苦労と「女性だけが持つ強さと弱さ」を感じさせて、こちらも素晴らしい。

 次にセリフ。「人生は苦労そのものよ」なんて言葉で真理を突き、トリュフを「マッシュルーム」ということで混じり合わないソフィとヴィクターとの関係を表し、「アリタリア航空の株を買え」とヒネった言い回しで物事を描いてみせる。

 そして、あくまでもサラリと“生きかた”へと突っ込んでいるところ。
 幾人ものロレンツォたちは、ほんの一瞬しか登場しないくせに、その言動やいでたちだけで「どんな人生を送ってきたか(いま過ごしているか)」がわかるように描かれている。ヴィクターだって、何か真剣な話だなと察すればちゃんと人払いをする配慮を見せる。
 主役である女性ふたりだけでなく男どもの背景とか価値観まで感じさせることと、「愛する人を探す旅=それこそが人生」というテーマを多重的に盛り込むことで、人にはそれぞれの“生きかた”があるのだと軽やかに思い知らせるのだ。

 ジュリエットの秘書は実在していて、日本語で書かれた手紙には日本語で返信が来るらしい。映画公開後にはヴェローナに観光客が殺到、手紙の量も急増したのだとか。
 それも無理はないけれど、そういうハヤリにつながるだけの軽薄単純なロマンチシズムにとどまらず、もう少し深い部分も持っていて、かつ全体に、テンポの良さ、説明/描写のバランス、省略の上手さなどもある、素敵な映画だと思う。

 って、おい、フランコ・ネロとヴァネッサ・レッドグレーヴって本当のカップルなんだ。しかも付き合い始めてから結婚まで40年かかって、その間にはいろいろ紆余曲折もあった模様。
 そういう裏話も、本作にいい陰影を与えてるんだろうな。

●主なスタッフ
 監督は『ブライダル・ウォーズ』の人。撮影は『ファイヤーウォール』のマルコ・ポンテコルヴォ、編集は『アサルト13 要塞警察』のビル・パンコウ、プロダクションデザインは『魔法にかけられて』のスチュアート・ワーツェル、衣装は『トスカーナの休日』のニコレッタ・エルコーレ、音楽は『幸せのちから』のアンドレア・グエラ、音楽スーパーバイザーは『トゥー・フォー・ザ・マネー』のジョン・フーリハン。

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