ロビン・フッド
監督:リドリー・スコット
出演:ラッセル・クロウ/ケイト・ブランシェット/ウィリアム・ハート/マーク・ストロング/オスカー・アイザック/ダニー・ヒューストン/アイリーン・アトキンス/マーク・アディ/マシュー・マクファディン/ケヴィン・デュランド/スコット・グライムズ/アラン・ドイル/ダグラス・ホッジ/レア・セドゥー/ロバート・パフ/ジェラルド・マクソーリー/ヴェリボル・トピッチ/サイモン・マクバーニー/マーク・ルイス・ジョーンズ/ブロンソン・ウェッブ/ジャック・ダウンハム/ジョナサン・ザッカー/マックス・フォン・シドー
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【運命に導かれた男】
12世紀末。十字軍遠征に失敗した獅子心王リチャードはイングランドへの帰還途中で命を落とし、従軍中の平民ロビン・ロングストライドが王冠をロンドンへと持ち帰る。新たに即位したジョンは親友ゴドフリーの言に従って圧政を敷くのだが、ゴドフリーは内乱に乗じてイングランドに攻め込もうとするフランス王フィリップと通じていた。成り行きで前王の側近ロバートとして暮らすことになったロビンが、立ち上がるときがやって来る。
(2010年 アメリカ/イギリス)
★ややネタバレを含みます★
【流れの良さに割り切った作りが成功】
ロビン・フッドについては「なんか、政治に逆らった義賊だよね」くらいの知識しかないわけだが、その義賊になるまで、前日譚としての映画。
で、「伝説の英雄」の例に漏れず実在性は曖昧なロビンという男。いろいろな伝承やエピソードがあって、でも作者・編纂者・年代によって内容やディテールはかなり違うらしい。
それを、上手にまとめてある。
獅子心王リチャードや弟のジョンといったあたりの、歴史的背景をよく知らなくても理解できるような展開。さすがに十字軍遠征くらいはマストだけれど「この頃のイングランドとフランスは仲が悪かったのね」ということがわかれば細かな理由は必要なし、みたいな割り切りがうかがえる。
そうやって史実部分をコンパクトにしたぶん、ロビンを寝室に誘うマリアンが犬を連れて2階へ上がることで「あんたとは何もないから」と暗に伝える場面のように、人と人との信頼・敵対関係やその変化を描いて、頭・知識ではなく心情でストーリーへと引き込むような流れ。
このあたり「いいときのブライアン・ヘルゲランド」だと感じさせるシナリオだ。
キャラクター配置+それぞれの扱いが絶妙で、ストーリー上/役柄上の重みと出番のバランスが取れているのもポイント。で、配役も「こいつ絶対に悪者やん」「実は憎めないヤツ」的なハマリかたが良。
やっぱり正義感(というか熱い価値観)を持つマッチョが似合うロビン=ラッセル・クロウをはじめ、貧しさの中にも気高さを失わないケイト・ブランシェット、相変わらずの存在感を示すマーク・ストロング、もう後々裏切るのが丸わかりのオスカー・アイザック、絵に描いたような「主人公の片腕になる大男」をまっとうするケヴィン・デュランド、場を締めるマックス・フォン・シドーと、いずれも疑問のないキャスティング。ウィリアム・ハートとダニー・ヒューストンが「あ、そうだったの」と感じさせるあたりも、適材適所ということなんだろう。
ロバートの死を伝える場面なんか、オスカー級3人が揃うとこんなにもピリっとするんだ、と素直に驚かされて、お芝居も光る。
作りも、お話の流れの良さ、とっつきやすさを邪魔しないナチュラルな撮りかた。曇り空、湿った空気、暖炉の火とロウソクだけで照らされた暗い室内など“その場感”を重視した絵作りを基本にスムーズな進行だ。
その中に「もう1回『グラディエーター』やろうよ」「中世版ノルマンディー上陸作戦(侵攻方向は真逆だけれど)なんか面白そうじゃん」という制作サイドのノリも感じられて楽しい。
そんなわけでけっこう面白いんだけれど、「惜しい」という思いも拭えないのは確か。流れとノリの良さ、人と人との関係を重視したぶん、そこに組み込まれなかった要素の不足が余計に気になるのだ。
たとえば「時が早すぎる」としてロビンの父を処刑せざるを得なかったサー・ウォルターの悔恨と彼に対するロビンの想いはもっと丁寧に描かれるべきだったし、終盤のマリアンの決意、ジョンの妻イザベラの心情変化、ロビンの仲間たちの活躍ぶりなども欲しかったところだ。
3部作(ノッティンガムへの帰還まで+フランスとの戦いまで+義賊としての活躍)とか1時間×5話くらいにすれば凄いモノになったよなぁ、と考えざるを得ない。いっそのこと戦国時代の日本に置き換えて大河ドラマにしちゃっても快作になるんじゃないだろうか。
●主なスタッフ
脚本は『L.A.コンフィデンシャル』などのブライアン・ヘルゲランド。撮影は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のジョン・マシソン、編集は『キック・アス』のピエトロ・スカリア、プロダクションデザインは『ワールド・オブ・ライズ』のアーサー・マックス、衣装は『マイアミ・バイス』のジャンティ・イェーツ。音楽は『プロヴァンスの贈りもの』のマルク・ストライテンフェルト、サウンドは『ウォンテッド』のワイリー・ステイトマンと『アンストッパブル』のマーク・・ストーキンガー。
SFXは『慰めの報酬』のデイヴ・クロウンショー、VFXは『ウィンブルドン』のリチャード・スタマース、スタントは『キング・アーサー』のスティーヴ・デント。
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