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2013/12/13

幸せパズル

監督:ナタリア・スミルノフ
出演:マリア・オネット/ガブリエル・ゴイティ/アルトゥーロ・ゴッツ/エニー・トライレス/フェリペ・ビリャヌエバ/フリアン・ドレヘル/ノラ・ジンスキー/マルセラ・ゲルティ/マルタ・ウォンス/メルセデス・フライレ

30点満点中17点=監4/話3/出3/芸4/技3

【主婦とパズル】
 夫との間に愛がないわけではなかったが、家事に追われ、ふたりの息子は気ままに育って、いくぶん疲れ気味の主婦マリア。今日も自分の誕生パーティだというのに食事の準備と給仕に追われている。そんな彼女が受け取ったプレゼントの1つが、ジグソーパズル。たちまちパズルの虜となったマリアは「ジグソーパズル選手権に出場するパートナー募集」の広告に惹かれ、ロベルトと出会う。家族に内緒でパズルの練習を続けるマリアは……。
(2009年 アルゼンチン/フランス)

【切り取られた日常と非日常】
 想像していたのとは、ちょっと違う内容。「ジグソーパズルで人生が変わっていく」的な感じじゃなくって、主婦の生活の切り取り映画だ。

 いや「なんでこんなのをプレゼントとして買うんだろ」というモノがキッカケとなってその後が変わってしまう、そんな人生の真理は感じられる。パズルを速く仕上げるためのテクニックとかメンタル部分など、題材がパズルゆえの要素も盛り込まれてはいる。が、そのあたりは必要最低限。
 退屈な日常の中に突然混ざり込むことになった非日常に、主婦がどう付き合っていくかという様子を静かに描くことが主題。そのへんは女性監督ならではの目線と方向性なのかも知れない。

 その描きかたが、けっこう映画的。
 セリフの大部分が、なんてことのない会話。キッパリと核心に迫るようなところは、ほぼない。でも、そのふわっとした会話、それを発する人物たちの表情や体の動きなどで、心情を表現し、物語を紡いでいく。説明的なシーンやクドいセリフがなくっても、ちゃんと出来事の進行や人物の心理は伝わるよ、という、いい見本。

 パーツとしては、手先・指先の捉えかた、微妙かつ計算されたフレーミングが、ひとつのポイント。当然、料理したりパズルを組み立てたりする指は盛んにうつされるんだけれど、いっぽうで荷物を受け渡したりバイバイと振られたりする手は、画面の外に置かれることも多い。
 そのバランス、うつす・うつさないの選択にドキリとさせられ、彼女にとって何が重要で、何に意識が向いていて、いま何を考えているかを観客に想像させる方法論としての面白さを感じる。
 印象的な音楽、あるいはクルマのキーをロックする音や時計の秒針のチクタクなど、サウンドでスパイスを利かせる作りも見せる。

 まぁ、そこ=“主婦の生活の切り取り”にとどまっている点に食い足りなさは覚える。
 が、思い通りにいかない、というより、過分なモノを望んではならない人生の現実を、「用意されたものでひとつの形を作り上げるしかない」性質を持つパズルに投影しているんだろうな、などとテーマ部分まで考えさせられる、味わいのある作品である。

●主なスタッフ
 撮影は『ウィスキー』のバルバラ・アルバレス。音楽のアレハンドロ・フラノフはジャズ・キーボード奏者らしく、YouTubeでライブの様子を観ることができる。

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