« 30デイズ・ナイト | トップページ | フェア・ゲーム »

2013/12/24

アイ・アム・ナンバー4

監督:D・J・カルーソー
出演:アレックス・ペティファー/ティモシー・オリファント/テリーサ・パーマー/ダイアナ・アグロン/カラン・マッコーリフ/ジェイク・アベル/ジェフ・ホッケンドナー/ケヴィン・デュランド

30点満点中17点=監4/話3/出4/芸3/技3

【逃げのびた地にも敵の影。いま秘めた力が覚醒する】
 惑星ロリエンから地球へと逃げのび、それぞれの守護者とともに暮らす9人の子どもたち。だがモガドリアンの追撃は執拗で、犠牲者はすでに3人を数えていた。ひたすら逃亡生活を続ける“ナンバー4”は、ジョン・スミスと名を変え、オハイオの田舎町へ。地元の高校に通い、カメラ好きのサラや科学オタクのサムらと友達になるものの、この場所にもモガドリアンの魔手は迫り、さらには謎の女性もジョンの痕跡を追い続けていた。
(2011年 アメリカ)

【意外といいけれど訴求力には欠ける】
 全6巻(ただしアメリカでも3巻までしか出ていないみたい)からなるYAファンタジーの第1巻を映画化したものらしい。要するにプロローグ。映画としてもパイロット的な仕上がりだ。

 宇宙から山小屋へと一気に突っ込んで、アクション、そして主人公周辺の描写へと怒涛のごとく進むオープニングは秀逸。
 で、「自分が何者なのかを知る」みたいなありがちパターンはスっ飛ばしてあるんだけれど、これは原作からそうなんだろうか。その潔さ、テンポの良さは、なかなか観やすい。映画としても、説明すべきところはパパパっとセリフですませ、それ以外はなるべく「見せてわからせる」ベクトルでまとめられていて、クドクド感がなくっていい。

 ま、細かな事実関係とか「ジョンたちが身分を偽ったりネットに出回っている情報を削除したりするテクノロジー」といったディテールまでキッパリ省略してリアリティが薄かったり、守護者ヘンリーが人間にすら捉えられちゃうくらい弱かったり、あれこれ都合よく事が進んだり、相も変わらず「学園のボス」みたいなのと対立したり……と、突っ込みどころや安っぽい部分は多く、あくまで(ちょっとオツムの足りない)YAであることは確かなんだけれど、その範囲内ではやれることをやっているんじゃないかな。

 たとえば能力の覚醒に対して戸惑いより嬉しさが優先してしまうジョンの様子(『スパイダーマン』でもそうだったから、これが現代ファンタジーのトレンドだよね)。わざわざ60年型のフォード・ピックアップとかニコンのフィルム・カムラといった前時代アイテムを用意して作り出す“古さ”。散らしてあるのはアデルをはじめとするポップなサントラ。そして、とりあえず恋でしょ仲間でしょという若者の大前提。
 ヘンに小難しい設定で観る者を構えさせたりオタク趣味に訴えかけるのではなく、親近感で勝負するようなパッケージング。

 主役アレックス・ペティファーは元気の良さも暗さも知性も感じさせて、加えてかなりのイケメン。『アレックス・ライダー』より、はるかに魅力的に躍動する。
 サラ役のダイアナ・アグロンは顔だちっていうより演技や表情の作りかたから色っぽさが漂う好素材だし、やけにカッコいいテリーサ・パーマーも、科学オタクとしてそれっぽいカラン・マッコーリフも適役。犬=キマイラともあわせて、安定感がありながらいろいろ今後の想像もふくらむキャラの配置じゃないだろうか。

 てなわけで意外と好感を持てた作品。ここのところ好き勝手やっていたカルーソー監督が上手く職人的にまとめたという印象も残る。
 でも、だからこそ、アクとか“妙な魅力”には欠ける。これからどうなるんだろうというワクワク感とか訴求力も弱いかも。

●主なスタッフ
 脚本は『ハムナプトラ3』のアルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラーおよび『バフィー~恋する十字架~』のマーティ・ノクソン。
 撮影は『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』のギレルモ・ナヴァロ、編集のジム・ペイジ、プロダクションデザインのトム・サウスウェル、衣装のマリー=シルヴィー・ドゥヴォー、音楽スーパーバイザーのジェニファー・ホークスらは『ディスタービア』と同じ面々。
 音楽は『魔法使いの弟子』のトレヴァー・ラビン、サウンドエディターは『ウルフマン』のペール・ホールバーグとカレン・М・ベイカー、SFXは『ノーカントリー』のピーター・チェズニー、VFXは『G.I.ジョー』のグレゴリー・L・マクマリー、スタントのブラッドリー・ジェームズ・アレンとファイト・コレオグラファーのペン・チャンは『キック・アス』

|

« 30デイズ・ナイト | トップページ | フェア・ゲーム »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アイ・アム・ナンバー4:

« 30デイズ・ナイト | トップページ | フェア・ゲーム »