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2013/12/16

ミケランジェロの暗号

監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
出演:モーリッツ・ブライブトロイ/ゲオルク・フリードリヒ/ウーズラ・シュトラウス/マルト・ケラー/ウド・ザメル/ウーヴェ・ボーム/ライナー・ボック/クリストフ・ルーザー/セルゲ・ファルク/マルセロ・デナルド/カール・フィッシャー/メラーブ・ニニッゼ

30点満点中18点=監4/話4/出3/芸4/技3

【隠されたミケランジェロの絵】
 ウィーンで画廊を営むユダヤ人のカウフマン家。秘密の部屋に隠されているのは、かつてイタリアから盗み出されたミケランジェロの絵画だ。一家に育てられたルディは親衛隊入りを望み、絵の存在を密告。ナチスはイタリアとの同盟強化を果たすため、その絵をムッソリーニに贈呈しようと考える。スイスへの出国と引き換えに絵画を差し出すカウフマン家だったが、それが巧妙な贋作だと判明。本物を巡って、知力を尽くしたゲームが始まる。
(2011年 オーストリア/ルクセンブルク)

【予想外を積み重ねながら予定調和へ】
 金持ちのユダヤ人が警察を脅し、ナチスはユダヤ人を収容所へと送り、親衛隊隊員は上層部の顔色をうかがい、教授は絵の真贋に眼光鋭く、ヒトラーとムッソリーニの各側近は儀式の進めかたでいがみ合う。最初はルディが放ち、後にはヴィクトルが口にする「僕を信じろ」というセリフ。
 あっちにもこっちにも「権威」というものはあって、それを持つ者は利用するのが必定だけれど、抑圧と服従で結びつく関係はたやすく逆転もする。そんなアイロニーが散りばめられた映画

 出世と生き残りを図るルディやその上司ヴィドリチェクといった小者と、一家の財産を守ろうとするカウフマン家の長男ヴィクトル、彼らが奪い合うのは1枚の絵画。描かれる事件は、意外とミクロだ。
 実のところ当時のナチスは、こんなこと(架空の出来事なんだろうが)にかかずらわっているどころの騒ぎじゃなかったはず。でも、このレベルの懸案が“国家の一大事”につながるという、ミクロとマクロのつながりがユニーク。
 ひょっとしたら何事もなくあの絵がムッソリーニに渡っていたら、歴史は変わっていたのだろうか。とすると、これもセカイ系?

 いっぽうで(というか、こちらが本題か)スリリングかつサスペンスフルなドラマでもある。過度に説明せず事態をドンドンと転がし、時制にも工夫をこらし、多彩な音楽と派手に動くカメラで物語に引き込んでいく。
 絵がどこに隠されているのか(邦題になっている『暗号』が在り処を示している)は、観客にはバレバレ。つまり重要視されるのは、そこへ行きつくまでの二転三転のハラハラだ。この点に関しては、まったくもって先の読めない展開を次々と畳みかけて、でも「結局はこうなるんでしょ」という予想にもしっかり応えてみせる安心感がある。
 予想外を積み重ねながら予定調和へと至る。そんな面白さ。

 いろんな角度から楽しめる作品である。

●主なスタッフ
 撮影は『飛ぶ教室』のペーター・フォン・ハラー、プロダクションデザインは『ヒトラーの贋札』のイシドール・ウィマー、スタントは『ナイト&デイ』に関わったトム・ハンスルマイアー。

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