リトリート・アイランド
監督:カール・ティベッツ
出演:タンディ・ニュートン/キリアン・マーフィ/ジェイミー・ベル/ジミー・ユール
30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4
【隔絶の島で、3人の男女は】
コテージひとつだけの無人の島ブラックホームへやってきたのは、建築家のマーティンと記者のケイト。流産を機にぎくしゃくしはじめた夫婦関係を修復するため、思い出の地で休暇を過ごそうというのだ。相変わらずふたりの心はすれ違うが、負傷した若者ジャックが漂着したことで事態は一変。軍人を名乗るジャックは「島の外では不治の伝染病が蔓延っている」という。外界との連絡手段を絶たれた彼らは共同生活を送ることになるのだが……。
(2011年 イギリス)
【道具立てはマズマズも深みと濃さが足りず】
うつしかたによっては自然にあふれた平穏な島にも見える地を、曇った空をベースに、湿った空気感や寂しげなコテージ内を陰影とともに捉え、弦をメインにした重苦しいサウンドトラックを乗っけることで、静かな狂気と焦燥感にあふれる舞台にしてしまう。
場所も登場人物も限られていてステージ向きにも思える設定(整理すれば室内劇に仕立て直せるはず)だが、ケイトが書き続ける原稿、ジャックが無造作に置いた銃にジリジリと近づくケイト、微かに揺れる無線機のメーターなど、寄るべきところにはグっと寄って緊迫感を作り上げていて、映画的な描写にも取り組んでいる。
晴れやかさを一瞬も見せず、ただただ苦悩と疑心暗鬼と作り笑いと暴力と謀の中に身を置く人物たち。その様子を、タンディ・ニュートン、キリアン・マーフィ、ジェイミー・ベルともしっかりと表現する。
気になるオチは、まずまず妥当なものだろう。セリフによる説明に頼ってはいるものの、前提を180度覆す転換は、面白いし納得もできる。
ただ、中身が濃密かっていうと、そうでもない。「それぞれが相手に対する罪を背負い信頼を失ってしまった夫婦」と、ジャックの登場によってもたらされた「もはや何を信じていいかすらわからなくなった状況」が、上手に有機的に結びついていない感じ。
一応は各人の怖れやジリジリを拾い上げるのだけれど、表面的なところにとどまっていて、深くえぐり込んでいったり、「こういう心情がこう変化した」「それゆえにこういう行動を取った」という説得力のある展開を実現できていないのだ。ラストも心理サスペンスではなくパニックSFに寄り過ぎているイメージ。
全体として深さの足りない仕上がりになってしまったのが残念。
●主なスタッフ
監督カール・ティベッツはもともとは編集マンだったらしく、共同で脚本を務めたジャニス・ハレットとともにこれがデビュー作。
撮影は『アレックス・ライダー』のクリス・シーガー、音楽は『キック・アス』のイラン・エシュケリ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント