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2014/02/25

ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男

監督:ラッセ・ハルストレム
出演:リチャード・ギア/アルフレッド・モリナ/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ジュリー・デルピー/ホープ・デイヴィス/スタンリー・トゥッチ/ジョン・カーター/ジェリコ・イヴァネク/クリストファー・エヴァン・ウェルチ/デヴィッド・アーロン・ベイカー/メイミー・ガマー/イーライ・ウォラック/ピーター・マクロビー/ジョン・ベッドフォード・ロイド/スチュアート・マーゴリン

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3

【大富豪の偽自伝、出版なるか】
 クリフォード・アーヴィングは、それなりに実力はありながらも売れない作家。新作出版の話が消えて窮した彼は、怒りにまかせて「今世紀最大の作品を用意している」と宣言、あるノンフィクションをデッチ上げる。それは表舞台に決して現れない謎の大富豪ハワード・ヒューズから依頼された彼の自伝だ。調査担当のディックとともにヒューズの記録を調べ、関係者にあたり、手紙まで偽造して出版契約にこぎつけたクリフだったが……。
(2006年 アメリカ)

【見やすくて、考えさせられる部分も】
 敬愛するラッセの作品にしては、ちょっと物足りなさは残る。この後に撮られた『HACHI 約束の犬』は「オーソドックスに、丁寧に、静かに、この監督らしい引き算と足し算の優れたバランスをもって、しっとりとした映画に仕上げてくれている」と評したが、本作は少し異なり、確かにオーソドックスで丁寧ではあるけれど、ラッセ特有の“わび”のようなものはさらに抑え目だと感じる。職人に徹したようなイメージ。

 ただ、それが奏功。お話としての面白さとクリフのジタバタを装飾なく届けてくれる感じで、ニンマリさせながらラストまで見せ切る

 描かれるのは、偽の自伝を出版しようとやっきになりつつ、浮気をごまかしたり悔いたりするクリフとディック、つまりは、嘘と真実を巡る2つの物語。その渦中で、手段が目的と化し、目的がすり替えられ、しまいには自分が何をしているのかすら曖昧になってしまうクリフの様子。

 また、不誠実な動機と行為を経ながら限りなく真実に近づいた嘘と、真実を知る者によって「真実」と認められた嘘と、偽りは混じっているものの自分が真実だと信じたい出来事と、そして正真正銘の真実と、いったいどこに差があるのかと疑問を投げかける内容にもなっている。
 さらにいえば、功を焦るひとりの作家の思惑(陰のパワーに知らず知らず踊らされるのだけれど)がその後のアメリカ史を揺り動かすという皮肉にも切り込んでいる。

 そうしたメッセージ性を持ちながら、「さあどうするんだクリフ」的なエンターテインメント性も両立させたバランス感覚はさすが。
 一応はクリフの内面に生じた歪みを視覚化するなど心の部分へ踏み込みつつも、そこをクドクド広げることなく、パニック場面でも極端なドタバタには陥らず、見せるべきものをテンポよく見せていく素直な作り。
 カメラを水平レベルから俯瞰へ、あるいはアオリへと動かしてその場の支配権が誰にあるのかを示したり、クリフの後ろにギロリと睨みを利かせるハワードの写真を置いて“監視の目”を感じさせたりなど、表現もわかりやすくてキッパリ。
 フィルムの質感を生かしたり、美術や衣装、メイクで当時を再現(ギア様も実年齢より若く化けている感じ)する手堅さもある。

 要は、見やすく楽しめて、考えさせられる部分もあって、狙い通りに仕上がったんだろうなと思わせる映画だ。

●主なスタッフ
 撮影のオリヴァー・ステイプルトンと編集アンドリュー・モンドシェインは監督の前作『アンフィニッシュ・ライフ』から引き続いての仕事。
 プロダクションデザインは『ジュリー&ジュリア』のマーク・リッカー、衣装は『フィリップ、きみを愛してる!』のデヴィッド・C・ロビンソン、音楽は『キッズ・オールライト』のカーター・バーウェル、音楽スーパーバイザーは『フェーズ6』のトレイシー・マクナイト、サウンドエディターは『ディナーラッシュ』のブライアン・ラングマン。

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