ニューイヤーズ・イブ
監督:ゲイリー・マーシャル
出演:別掲
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【新しい年がやってくる】
最後の1日で「1年の誓い」を実行しようとするイングリッドとポール、病院でそのときを待つ癌患者スタン、新年出産第1号を狙うテスとグリフィン、1年ぶりに再会したシェフのローラと売れっ子ミュージシャンのジェンセン、エレベーターに閉じ込められたランディとエリーズ、会場へ急ぐヘイリーと母のキム、スピーチに向かうサム、トラブルに見舞われるイベント責任者クレア。大晦日、タイムズスクウェアのカウントダウンが近づく。
(2011年 アメリカ)
【表面的なまとまりはいいけれど、表面だけ】
IMDbのレーティングが5.4で、ラジー賞5部門ノミネート。ほとんど絶望的な数字ながら、そこまでヒドクはない。
姉妹作『バレンタインデー』が“愛”を切り口にして人と人とのつながりを描いていたのに対し、本作は“セカンドチャンス”をテーマに人の世のあれやこれやを語る。
エピソードのバリエーションは豊富、大晦日の浮かれも寂しさも取り込んでいる。オジサンはもう赤ん坊の姿にサッチモを重ねられるだけでホロリときちゃうのだ。
とはいえシットリというよりも軽快。ほとんどの出演者がコメディ演技に徹してクスリとさせ、テンポよくお話を進めていく。
そんなわけでデートムービーとしての観やすさは上々。少なくとも「観なくてよかった」というレベルではないだろう。
が、そこで止まっていることも確か。
まず、キャラクターとキャスト面でのバランスの悪さ。
観ているうちに軽さが意外にも心地よくなってくるザック・エフロン、恋と仕事に挟まれる役がよく似合うキャサリン・ハイグル、極上のテンションを見せるソフィア・べルガラ、何をやってもカッコいいアシュトン・カッチャー、歌うと途端に魅力を放つリア・ミシェル、短い時間でグっと引き込むヘクター・エリゾンドらはGOOD。
ハル・ベリーは「ああなるほど、この人にしかできないかもね」という役だし、ミシェル・ファイファーなんかクレジットを見て「そうだったのか」と気づくくらいの化けかただ。
ここまではいいとして、ロバート・デ・ニーロ、ヒラリー・スワンク、ジェシカ・ビール、リュダクリスは、明らかにもったいない使われかた。なぜか華のないジョン・ボン・ジョヴィ、場違い感たっぷりなサラ・ジェシカ・パーカー、子役芝居のアビゲイル・ブレスリン、もっさりしたジョシュ・デュアメルなどは、作品世界の良質な雰囲気をポコっと落とす。
この手の映画には不可欠な“短いひとことで世の中の真理を突く”というセリフまたはキャラクターもないし、切なさも不足。ラストのオフザケに喜んでいるのは作っている側だけだろう。
そして、浅い。「1本の映画として仕立てるには苦しいけれど、まあまあ楽しいエピソード」を、無理やり1本にするのではなく集めて連ねたことじたいは正解なんだろうけれど、それは要するにちょっとしたことの羅列にすぎないともいえるわけで。
こういう男と、こういう女の、こういう関係、っていう表面部分しか出せていない感じ。たとえば「ニューイヤー・パーティが嫌いな男」とか「元彼に未練がありながらも強がる女」とか、それっぽい登場人物を配してそれっぽく描くだけ。もっと背景まで感じさせる工夫が欲しかったところだ。
表面的なまとまりはいいけれど、まさに表面だけ。という仕上がり。
■■1年の誓い
ミシェル・ファイファー/ザック・エフロン
■■ホスピタル・ストーリー
ロバート・デ・ニーロ/ハル・ベリー/アリッサ・ミラノ/コモン/ケイリー・エルウィズ/バーバラ・マーシャル
■■出産競争
ジェシカ・ビール/セス・マイヤーズ/サラ・ポールソン/ティル・シュヴァイガー/カーラ・グギーノ
■■ジェンセン&ローラ
キャサリン・ハイグル/ジョン・ボン・ジョヴィ/ソフィア・べルガラ/ラッセル・ピーターズ
■■エレベーター
アシュトン・カッチャー/リア・ミシェル/ジェームズ・ベルーシ
■■母と娘
サラ・ジェシカ・パーカー/アビゲイル・ブレスリン/ジェイク・T・オースティン/キャシディ・リーフ/ベス・ケネディ
■■エイハーン・パーティ
ジョシュ・デュアメル/ショーン・オブライアン/ラリー・ミラー/ジャック・マクギー/ペニー・マーシャル/クリスティーン・レイキン/チェリー・ジョーンズ
■■タイムズ・スクエア
ヒラリー・スワンク/クリス・“リュダクリス”・ブリッジス/ヘクター・エリゾンド/ロブ・ネーグル/キャスリーン・マーシャル/ライアン・シークエスト
●主なスタッフ
監督をはじめ、脚本のキャサリン・ファゲイト、撮影のチャールズ・ミンスキー、衣装のゲイリー・ジョーンズ、音楽のジョン・デブニー、音楽スーパーバイザーのジュリアンヌ・ジョーダン、サウンドエディターのエズラ・ドゥウェックと、ほとんどが『バレンタインデー』と共通。
ほかでは編集が『Mr.&Mrs.スミス』のマイケル・トロニック、プロダクションデザインは『恋とニュースのつくり方』のマーク・フリードバーグ。
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