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2014/03/12

アカデミー賞 短編アニメ映画賞受賞作品集

 WOWWOWが短編アニメのオスカー受賞作6本を放送してくれた。古くは1977年作品から2010年の映画まで、年代は幅広く、テイストや技法もそれぞれ。放送時は年代を遡る形式だったが、ここでは逆順にまとめてみよう。すると、やっぱ自分は新しいものが好きなんだな、とわかる。

■■砂の城 (1977年 カナダ アニメ)

監督:コ・ホードマン

 砂漠の中で不思議な生き物が次々と生み出される。彼らは協力して砂の城を作り始めるのだが……、というストップモーション・アニメ。
 自己増殖していく生き物それぞれの形・性格・動きが城作り(にまつわるドタバタ)に反映されているのは面白く、『かいじゅうたちのいるところ』あたりに影響を及ぼしたのかも、などと思わせる雰囲気もある。

 ただ、さすがにアニメーション技術としては原始的。即興性の高い、あまり厚みのない音楽とも合わせて「子どもの頃、日曜の昼間に観たような感じだなぁ」という印象が強い。幼稚園児が訳もわからぬままボぉっと観る、みたいな。15点。

■■老人と海 (1999年 ロシア/カナダ/日本 アニメ)

監督:アレクサンドル・ペトロフ
声の出演:三國連太郎/松田洋治

 久しぶりに出会った超大物のカジキマグロを釣り上げようと、小さな船でひとり格闘する老いた漁師。彼が最後に観た光景は……。いわずと知れたヘミングウェイ作品のアニメ化だ。

 エンディングで製作過程をチラっと見ることができるのだが、ガラス板の上に描かれたものらしい。その透明感、水や霞みなどの質感の巧みな表現は素晴らしく、写実的なデザインとコマ数を減らすことによって生まれる牧歌的な雰囲気もいい。無常観(または無情感)あふれるオチへ向けて、寂しげな空気も終始保たれている。
 が、あまりに喋りすぎ。描かれるひとつひとつに説明的独白が重ねられるってのは、どうも。16点。

■■ハーヴィー・クランペット (2003年 オーストラリア アニメ)

監督:アダム・エリオット
声の出演:ジェフリー・ラッシュ

 神経を侵された母から生まれ「事実」だけを教育されたハーヴィーは、オーストラリアに渡って看護婦と出会い、結婚する。『メアリー&マックス』の監督アダム・エリオットの出世作となったクレイ・アニメ。

 テキトー感あふれるデザイン、けれど緻密に作られた独特の世界、そして下品でナンセンスで病的な物語とディテール、そこから滲み出す歪んだ(でも「何がどうなるか誰にもわからない」という意味では真理に満ちた)人生論……。それが、この監督らしさってことなのだろう。
 要は、ソイツに馴染めるかどうか。先が気になる点では成功しているのだろうけれど、楽しい映画ではないし「好き」とはいえない。15点。

■■デンマークの詩人 (2006年 ノルウェー/カナダ アニメ)

監督:トーリル・コーヴェ
声の出演:リヴ・ウルマン

 スランプに陥ったデンマーク詩人は、創作のヒントを得ようと作家シグリットの住むノルウェーへ向かう。彼はそこで農場に暮らす美しい娘と恋に落ちるのだが、彼女には婚約者がいて……。

 ペイネを思わせるタッチのペン画風アニメ。いかにも北欧っぽい色づかいとデザインが特徴。内容的には『ハーヴィー・クランペット』や『フォレスト・ガンプ』に近い、人生って何が起こるかわからない、さまざまな偶然によってできているんですよ、的なお話。
 技術・技法よりも、人生の真理を軽く描いてみせるところや、見た目とか一途な詩人と娘のキャラクターとかデザインとか、そのあたりの“オシャレ感”を楽しむような作品かも。16点。

■■ロゴラマ (2009年 フランス アニメ)

監督:フランソワ・アロー/エルヴェ・ドゥ・クレシー/ルドヴィク・ウープラン
声の出演:ボブ・スティーブンソン/シャーマン・アウグストゥス/アヤ・エヴァンス/ジョエル・マイケリー/マット・ウィンストン/デヴィッド・フィンチャー

 強盗犯ドナルドを追う、シェリフのビバンダムたち。その追跡劇と銃撃戦にエッソ・ガールとビッグ・ボーイが巻き込まれてしまい……。
 って、これ相当にヤバイんじゃないか。

 モチーフになっているのは世界中の企業のロゴ、トレードマーク、キャラクターたち。その数3000。しかも勝手に使用しちゃっているらしい。でもクレームはなくって、おおむね各企業から好評、むしろ「なんでウチは使ってくれなかった」とかいわれたそうな。
 マクドナルドなんか、これをはじめとしてアチコチで悪者扱いされていると思うんだが、おおらかなんだなぁ。

 ポップでキッチュでゲーム風でペーパークラフトみたいなデザイン(そりゃあロゴやキャラクターをほぼそのまんまで世界を構築しちゃっているんだから当たり前だ)がノリノリ。ポリス・アクションから一気にディザスターへと突入するストーリーはワルノリ
 物質文明への風刺か、権利主義的社会への批判か、ただ「面白そうだからやってみよう」だったのか、いずれにせよ、こういう作品に“お墨付き”を与えてしまうアカデミーの懐の深さ(『ベーカリー街の悪夢』を破っての受賞なんだな)にも恐れ入る。17点。

■■落としもの (2010年 オーストラリア/イギリス アニメ)

監督:アンドリュー・ラーマン/ショーン・タン
声の出演:ティム・ミンチン

 王冠を拾って集めることが趣味の青年が、砂浜で不思議な生物を拾う。タコツボに似たその生き物は彼になつくのだが、両親からは家に置いておくことを反対されてしまい……。現代風の3DCGアニメだ。

 グラフィックノベル的な絵、スチームパンクっぽい町や生き物たちのデザイン、セピアの色調など美術面の仕事と、そうして生まれた世界を大きく立体的に、けれどどこか絵本的な(画面分割とかもあるし)角度と動きで捉えるカメラワークが特徴。
 ギターとシロフォンをベースにしたサントラと、あらゆる種類のSEを細かく丁寧にまとめたサウンドデザイン&エディットも魅力的だ。

 内容としては、これまた物質文明への批判、せこせこと進む世の中にあって忘れ去られ捨てられ不要とされていく“何か”に対するノスタルジーだといえるだろう。
 デザインワークとテーマ性と音とがあいまって、全体に温かさと不思議さと寂しさとが持続する。それも心地よいけれど、個人的には青年が最後に辿り着いた場所の扉の開閉(特に閉まるところ)がツボ。18点。

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