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2014/03/10

メアリー&マックス

監督:アダム・エリオット
声の出演:トニ・コレット/フィリップ・シーモア・ホフマン/エリック・バナ/レネー・ゲイヤー/イアン・モリー・メルドラム/ジョン・フラウス/ジュリー・フォーシス/ベサニー・ウィットモア/バリー・ハンフリーズ

30点満点中17点=監3/話2/出3/芸5/技4

【少女と中年男、海を越えた手紙の交流】
 1976年、オーストラリアのメルボルンとアメリカ・ニューヨークを結ぶ文通が始まった。いっぽうは額のアザを気にする夢見がちな少女メアリー・デイジー・ディンクル、かたや過食ぎみで人づきあいの苦手な中年男マックス・ジェリー・ホロウィッツ。チョコとTVアニメ『ノブレッツ』が好きなふたりは、マックスの病気やメアリーの研究のおかげですれ違いも引き起こすものの、数十年に渡って何度も手紙をやりとりすることになる。
(2009年 オーストラリア アニメ)

【人そのものを決めるもの】
 小さくいえば「日々の細かなことの何に意識を向けるか」、大きく捉えれば「どう生きるか」が、人そのものを決める。

 メアリーには恵まれない家庭環境(というより母親の生活態度か)と幼さが、マックスにはアスペルガー症候群がエクスキューズとしてあって、とにかくふたりの「日々の細かなことの何に意識を向けるか」「どう生きるか」=価値観と行動は、理解しがたい様相を見せる。
 あまり頭のよろしくないぶちゃいくな女の子(ベサニー・ウィットモアちゃんの声は可愛い)と、たらふくチョコ食って寝て不満をたらしているだけのブ男(フィリップ・シーモア・ホフマンの存在感はさすが)に、どうやって感情移入などできるか。

 おまけに、全体として下品。加えて本作はナレーション・ベース(あまり好きじゃない作風)、翻訳もかなり端折られている印象だ。

 ただ、見た目の独自性は秀逸。
 プロダクションデザインは監督自身だそうで、セピアとグレーに分かたれた2つの世界、デフォルメされた空間の広がり、ホコリっぽさとカビ臭さ、いろいろとあるけれど必要なものは何もない空虚感などを、鮮やかに作り出している。
 木や土や紙や雨や汗の質感、ゆがみやたるみや柔らかさや堅さの表現などクレイ・アニメとしてのデキも上質で、大胆かつ多彩なカメラワーク、プロコフィエフにヘンデルにプッチーニに『ザ・タイプライター』に『ケ・セラ・セラ』とバラエティに富んだ楽曲ともあいまって、鮮烈な(それでもやっぱり下品だけれど)ヴィジュアル・イメージが広がる。

 で、なんやかんやありまして、ラストへ。このエンディングで作品全体の印象も大きく変わる。
 ああ結局のところ「日々の細かなことの何に意識を向けるか」や「どう生きるか」は選ぶことが可能で、それは「なんでなの?」と他人には理解しがたいものであるかも知れないけれど、選択の理由の裏側や、選択の積み重ねによって行き着く果てには、やっぱりその人の「人そのもの」が現れるものなのだ。
 とっつきにくいけれど、人生の真理に迫る1本。

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