プリンセス トヨトミ
監督:鈴木雅之
出演:堤真一/綾瀬はるか/岡田将生/沢木ルカ/森永悠希/宇梶剛士/甲本雅裕/合田雅吏/村松利史/菊池桃子/江守徹/平田満/宅間孝行/玉木宏/和久井映見/笹野高史/中井貴一
30点満点中15点=監3/話2/出3/芸4/技3
【大阪アンダーグラウンドで、何が起こっているのか?】
国からの補助金が問題なく使用されているかを監査するため、大阪へとやって来た会計検査院の松平、鳥居、旭。3人は、400年にも渡って受け継がれてきたある秘密に近づくこととなる。大阪の歴史的建造物を保護する財団法人OJOの真の目的、お好み焼き屋「太閤」の主人・真田、その息子・大輔と幼馴染のチャコ、大坂夏の陣、明治政府との密約……。さまざまな謎の果て、ついに2011年7月8日午後4時、大阪が“全停止”を迎える。
(2011年 日本)
【初期段階でのマズさ】
見た目の仕上がりとしては、そう悪くないと思う。色調にこだわった絵、軽快さもジックリ感も併せ持つ編集と音楽、それっぽさがあってセット臭さの少ない美術など、丁寧な仕事。
演出も『ショムニ』や『鹿男あをによし』で見慣れた安さはあるものの、場面を大きく捉えたり、大量のエキストラを動員したり、人のいない大阪をちゃんと作り出したりと、スケールに配慮している印象はあって、劇場向けのクオリティはキープ。松平@無人のOJOというシーンは、映画的な面白さのある場面といえるだろう。
全体に「頑張って作りました感」が漂う。
が、そもそも論というか、作り始めの段階に難を抱えているように思う。
たとえば冒頭、大坂夏の陣の場面で「血」が出てこない。恐らく意図したものなのだろうが、そのリアリティのなさが、物語からもリアリティを奪ってしまっている。
配役は、主要な大人にほとんどネイティヴ関西弁スピーカーがいないという有様。“敵方”である松平にネイティヴの堤真一を持ってきて、その倒錯感で何かを表現したいのかなとも考えたが、そうでもなさそう。まぁ安直に芸人ばかり配する愚を避けたことは評価できるけれど、これまたリアリティを無視した制作姿勢だ。
堤真一と中井貴一、あと笹野高史は安定した芝居を見せてくれるが、この2人以外はTVサイズ。キーとなるチャコ=沢木ルカも、極上のヴィジュアルインパクトと演技が釣り合っていないのが痛い(キャリアに乏しい子役には過度な要求かも知れないが)。
で、シナリオ。相沢友子は『大停電の夜に』でも『重力ピエロ』でも「芯はあるんだけれど練り切れていない&不足が気になる」と評したが、今回もまた同様。生き方に多様性が認められるようになった現代において、どうしても守らなければならない絶対的なもの、という芯の部分は感じられるものの、その価値観が松平や旭を揺るがすことにつながる説得力とか、物語を鮮やかに占める手際の点で、ちょっと弱い(まぁ原作が抱える問題なのかも知れないけれど)。
加えて今回は、説明に次ぐ説明、繰り返しに次ぐ繰り返しで、わかりやすぅくお話を進めるTVライクな展開。
ただ、単に脚色のマズさというわけじゃなく、これこそまさに作り始めの段階における難=「いい映画にしようという意志の欠如」なんだろう。
●主なスタッフ
原作は『鴨川ホルモー』の万城目学。
撮影は『海猿』の佐光朗、編集は『キサラギ』の田口拓也、美術スタッフは『大奥』の竹村寧人、『HERO』の荒川淳彦、『世にも奇妙な物語』の吉田孝ら。衣装は『Sweet Rain 死神の精度』の伊賀大介。音楽は『ちりとてちん』の佐橋俊彦、サウンドは『大日本人』の柴崎憲治と『容疑者Xの献身』の大河原将。VFXは『曲がれ!スプーン』の石井教雄。
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