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2014/04/30

トイレット

監督:荻上直子
出演:アレックス・ハウス/タチアナ・マズラニー/デヴィッド・レンドル/ステファニー・ドラモンド/ゲイブ・グレイ/エレーナ・ジャトコ/サチ・パーカー/ニコール・スタンプ/スティーヴン・ヤフィー/もたいまさこ

30点満点中17点=監4/話4/出3/芸3/技3

【4人と1匹の奇妙な同居】
 ママが死に、某研究所に勤めるレイに残されたのは、古い家、センセーという名のネコ、4年間引きこもりを続ける兄のモーリー、はねっかえりの妹リサ、そして母が呼び寄せた日本人の“ばーちゃん”。自宅アパートが火事になったため、問題ありまくりの兄妹や言葉の通じないばーちゃんと仕方なく同居することになったレイは、冷たく皮肉な態度を取りながらも、この一家をなんとか上手くまとめていこうと苦労するのだが……。
(2010年 日本/カナダ)

【不便さもひっくるめての人生】
 解像度もコントラストも低調な画面、コンパクトでカット数は少なめ、ゆったりとした間合い……。
 作風もリズムも好きな類ではないんだけれど、なぜか観てしまい、ホっとしてしまうのは、この監督の映画の中に確固とした“何か”があるせいなのかも知れない。

 その証拠に、もたいまさこ以外のキャストや、撮影、編集、美術といった主要パートに現地スタッフを迎えているのに『かもめ食堂』『めがね』などと共通する空気感がしっかりと生きていて、オンリーワンのものに仕上がっている。

 軸となっているのは「便利さ・不便さ」だ。
 家族や同僚や級友などとの面倒な関係、通じない言葉、ひとりが占拠すると他の人が困ってしまうトイレという場、ネコの世話、古いミシン、病気、お金。社会には、スイスイと思い通りにいかないものがあふれている。

 けれど実は、そうしたものがあるからこそ、生活にはいろいろなことが起こり、いろいろな想いが生まれたり実現したりして、生きることが退屈じゃなくなるのだ。
 科学が思わぬ事実を暴くことだってある。便利さを追求した日本の誇る最先端テクノロジー=ウォシュレットも、結局のところ「流す」という基本機能は変わっていないわけで、それがとんでもないことをしでかすことだってありうる。

 要は、周りが不便であれ便利であれ、それらをひっくるめて人生であり、それぞれの人がどんなふうに人生を味わい、楽しみ、成長し、乗り越えていくかってことが大切。
 カメラは必要以上に登場人物へ寄ることはないんだけれど、「誰がその場面の中心か」はわかるような作り。だからなおさら「小っちゃなモロモロを感じながら人は生きていて、その人の周囲では時間と想いが渦巻いている」ということが伝わってくる。

 そんなことを考えながら、さて、こちとらもしゃがみにいくか。

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