ヤング≒アダルト
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:シャーリーズ・セロン/パットン・オズワルト/パトリック・ウィルソン/エリザベス・リーサー/コレット・ウォルフ/ジル・アイケンベリー/リチャード・ベキンス/メアリー・ベス・ハート/ケイト・ノーリン/ルイーザ・クラウゼ/J・K・シモンズ(声の出演)
30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3
【彼女が望むもの】
ヤング・アダルト小説のゴーストライターとして生計を立てているメイビス・ゲイリーのもとに「赤ん坊が生まれたよ」というメールが届く。送り主は学生時代の元彼バディだ。久しく会っていなかったが、37歳になってなおバディへの想いを断ち切れないメイビスは生まれ故郷の小さな町マーキュリーへと向かう。偶然出会った同級生マットの心配をよそに「バディもきっと同じ気持ちのはず」と信じるメイビスは彼に近づくのだが……。
(2011年 アメリカ)
【進めない辛さ】
道具立てとその描写が達者なら、下手な説明は不要。アバンタイトルの部分で描かれるメイビスの、ダメっぷりというか人生に対する諦めっぷりというか、ただただ惰性で生きている様子が、なんとも素晴らしい。
犬への接しかた、ひとりでWii Fit、古ぼけたPCとポンコツのクルマ。プリンタのインクにツバつけるって……。寝っ転がってる男なんか背中だけでイケてないことがわかって、そんな男とユキズってるメイビスのイケテなさまで伝わってくるもんなぁ。
いまさらながらのカセットテープと、クローズアップされる前時代的なメカ、そして繰り返される同じ曲(これが後で効いてくる)。
たどり着くのは、ようやく文明が入ってきた町。ふんわりと暮らしている人々。それにゲンナリするメイビス。
その後の展開やメイビスの振る舞いから、何をいいたいのかはハッキリしている。パっとしない田舎から離れて都会で仕事をしていても“取り残される”ことや“進めない”ことはあるのだ。というよりも、むしろ離れることでいつまでも「あのとき」が心から消えず、夢見た未来から逃れられなくなってしまう。自分自身が誰よりもゾンビ。いつまでもヤングとアダルトの間の宙ぶらりん。そんなユーウツ。
彼女の人生を狂わせた出来事、というエクスキューズはあるけれど、だからこそなおさら、そのどうしようもなさが辛い。
メイビスにできるのは、ささやかながらも過去の自分といまの自分を認めてくれる人の存在に慰めを見出して、これでいいのよと自身を納得させることだけなのだろう。
マットの妹サンドラに対する「あなたはここにいるのよ」という言葉に、メイビスの優しさと悔恨が滲みあふれている。
相変わらずシャーリーズ・セロンは、その美貌に裏打ちされた自信をなりふり構わぬ演技へと昇華させていて、この映画をしっかり自分のものにしてしまっている。
メイビスという存在を作り出したヘアメイクの仕事、その“悲しき狂い”を捉えた演出・撮影・編集も見事だ。
ほとんど田舎に帰らず、物書きらしき仕事をしている者としては(まぁこっちは結婚して幸せに暮らしているけれど)、なにげに身につまされる作品でもある。
●主なスタッフ
監督と脚本家のディアブロ・コディは『JUNO/ジュノ』のコンビ。撮影エリック・スティールバーグと編集デイナ・E・グローバーマンは『マイレージ、マイライフ』の人たちだ。
プロダクションデザインは『アジャストメント』のケヴィン・トンプソンで衣装は『フィリップ、きみを愛してる!』のデヴィッド・C・ロビンソン。音楽は『ヤギと男と男と壁と』のロルフ・ケント、音楽スーパーバイザーは『リリィ、はちみつ色の秘密』のリンダ・コーエン。
サウンドチームは『JUNO/ジュノ』のペリー・ロバートソンとスコット・サンダース、『ソルト』のウォーレン・ショウ。メイクは『お家をさがそう』のマリー・アーロン、ヘアスタイリストは『ニューイヤーズ・イブ』のミア・ニール。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント