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2014/06/09

リアル・スティール

監督:ショーン・レヴィ
出演:ヒュー・ジャックマン/ダコタ・ゴヨ/エヴァンジェリン・リリー/アンソニー・マッキー/ケヴィン・デュランド/ホープ・デイヴィス/ジェームズ・レブホーン/カール・ユン/オルガ・フォンダ/ジョン・ゲイティンズ/グレゴリー・シムズ

30点満点中16点=監3/話2/出4/芸3/技4

【父は戦う】
 生身のボクシングは廃れ、いまやロボット同士が戦う時代。元ボクサーのチャーリー・ケントンは、あちこちに借金を作りながらオンボロのロボットを駆り、地方の祭やアンダーグラウンドでファイトするうだつのあがらない生活を続けていた。そこへ元恋人の訃報が届き、十年も連絡を取っていなかった息子マックスをひと夏だけ預かることに。反発するふたりだったが、マックスが廃品処分場で見つけた古いロボットをキッカケに……。
(2011年 アメリカ/インド)

【題材のディテール部が詰め切れていない】
 実現しているのか、していたとしてどれだけ売れているのかは知らないけれど、フィギュアやビデオゲームへの展開も考えていたんだろうね。
 あと、日本マーケットも意識している感じ。まぁ「ロボット技術=日本」なんだから大々的にフィーチャーするのは当然としても、超悪男子とか、タク・マシド(増戸拓さん、とかになるのか)とか、須藤元気へのオマージュとか(違う?)。

 カルトなB級を狙えば、そのあたりのオタク系のノリは成功していたように思うのだが、なまじっか“感動父子モノ”へと舵を切ったのが間違い

 いや、雰囲気はそれなりにいいんだよな。カントリー・ミュージックで幕を開ける非SF的なオープニングとか、“ふたりの距離”を視覚化した出会いのシーンとか、マックスの中にある“父性または強いものへの憧れ”を提示したりとか。

 でも、ちょっと舌足らず。それぞれの人間の背景が描けていない。恋人や息子を置いて逃げたチャーリーの葛藤、それでも“強い父”を信じようとするマックスがその価値観を育んだ過程、ふたりとベイリーとの信頼関係、ファラ・レンコヴァとタク・マシドの立ち位置……。それらを十分に描かず、全体的な展開を綺麗にまとめることだけに腐心して、無理やり感動へと持って行くようなイメージ。

 加えて、肝心の“ロボットによるボクシング”が、上手に詰め切れていない印象も残る。
 ATOMは他のロボットより人間的な動きを見せるとされているけれど、区別がつくほどの差はない。ゼウスの強さについて「あらゆる状況に対応できる」と説明されたって、それを感じ取れる場面がなければ、なんだか誤魔化されている感じ。音声認識では反応が遅いってのも、それを明確にピンチやチャンスとして見せてやらないと。

 戦術的、スポーツ(ボクシング)的、ロボット的、プログラミング的といった観点から各ロボットの特性がどこにあるのか、日本人だったらそういうところをちゃんと詰めるよね。
 たとえば、動きは遅いけれどパワーのあるタイプとか、逆にATOMは動きのスピードと柔軟性や「ビデオゲームで育ったマックスが操るため、複雑なコンビネーション・プログラムを瞬時に戦いの中で適用できる」ことが強みになったりとか、ゼウスは「相手の動きや戦略をマルチコアでリアルタイムに分析できるが、発熱と多大な電力消費のため4ラウンド以降は動きが鈍る」とか。

 そういうキャラ設定というか、ディテールへのこだわりがお話や試合展開の面白さも左右するはずなのに、はじめから「最後はチャーリーがシャドーで闘う感動」がアリアリで、細かなところは端折られている。
 あと細かいけれど、WRBっていうネーミングも単純すぎてツマラナイ。

 お約束感動ストーリーとしての安心感はあるし、テンポが速くて軽快に見られる楽しさはある。CGとライブアクションの見事な融合、ダコタ・ゴヨ君の確かな純真少年っぷり、エヴァンジェリン・リリーの可愛さも本作の魅力だろう。
 でも“ロボットによるボクシング”である意味が物足りない映画。

●主なスタッフ
 原作は『運命のボタン』などのリチャード・マシスン。原案は『落下の王国』のダン・ギルロイ、『きみに読む物語』のジェレミー・レヴェンで、脚本は『夢駆ける馬ドリーマー』など感動ものを手がけてきたジョン・ゲイティンズ。
 撮影は『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のマウロ・フィオーレ、編集は『ジャンパー』のディーン・ツィマーマン、プロダクションデザインは『エスター』のトム・メイヤー、衣装は『トロピック・サンダー』のマレーネ・スチュワート。
 音楽は『スリーデイズ』のダニー・エルフマン、音楽スーパーバイザーは『戦火の馬』のジェニファー・ホークス、サウンドエディターは『ブラック・スワン』のクレイグ・ハニガン。
 SFXは『イーグル・アイ』のジョー・ディゲターノ、VFXは『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』のエリック・ナッシュ。スタントは『インモータルズ』のギャレット・ウォーレン、ボクシング・コンサルタントにシューガ・レイ・レナード。

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