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2014/06/21

顔のないスパイ

監督:マイケル・ブラント
出演:リチャード・ギア/トファー・グレイス/テイマー・ハッサン/スティーブン・モイヤー/クリス・マークエット/オデット・ユーストマン/スタナ・カティック/ユーリ・サルダロフ/エラ・モルトビー/マーティン・シーン

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【謎の暗殺者の行方を追って】
 ロシアとつながりを持つ上院議員が暗殺され、その手口から何十年も前に姿を消したロシアのスパイ=カシウスが容疑者として浮上する。CIA長官ハイランドは、かつてカシウスを追い詰めた元分析官ポール・シェファーソンを呼び戻すも、彼は「模倣犯だ」と断言する。いっぽうカシウスに関する論文を書いたFBI捜査官ベン・ギアリーは間違いなくカシウスの仕業だと主張、ポールとベンはカシウスの教え子ブルータスと接触するのだが……。
(2011年 アメリカ)

【キレはいいが詰めは甘いか】
 予想外の展開と妥当な行動がバランスよく繰り広げられ、説明を極力省いて事態と心理とを描写していくテンポの良さは上々。特に序盤から中盤までには、何が起こっているのかが曖昧でも、カシウスの正体や狙いが何なのかわからないままでも、事態が一変してからも、力ずくで観客を引っ張っていけるだけのパワーを感じる。凄腕スパイの郷愁トリガーが安っぽいラジオっていうのも、いい味わいだ。

 無言で闇に目を凝らすポールの姿、あたりに滑稽なほど気を配るベンといった様子に疑心暗鬼の緊迫感が漂うなど、雰囲気作りも悪くない。
 回想シーンはギラリとした質感、サントラは打込みミニマルから管弦楽まで多彩、アクションにはキレがあって、見た目の確かさもある。

 リチャード・ギアにしては珍しく深い影のある役だけれど、これが意外とハマっていて説得力もアリ。熱さと知性とを兼ね備えたイメージをよく出しているトファー・グレイスも悪くない。オデット・ユーストマンってオデット・アナブルだったのね。相変わらず綺麗な人。

 そんなわけで、存外に評価は低いようだけれど、しっかり作られているし面白い映画になっていると思う。

 傷があるとすれば、窮屈さだろうか。
 スパイ・アクションというよりクローズドな範囲で小さく進む究明型ミステリーの趣が強いので、スケール感に欠けるのは確か。年代順に捜査資料が張られた壁なんてすごく好きなパーツなんだけれど、でもそこから状況が一変する部分の描写には“いきなり感”が残る。

 全体に都合よくいろいろなことが展開する感も否めないし、せっかく描写の妙や意外性で惹きつけながらラストは「これこれこうだった系」へと堕してしまったのは、はなはだ残念。
 ポールの孤独がもっと浮かび上がる部分やベンのキャラクターとしての深みがあれば、最後の「家(HOME)へ帰れ」という言葉に対する葛藤も効果的だったろうに。
 要するに、驚かせたりテンポを上げたりスッキリまとめたりなど、やりたいことをやり切るために細部を犠牲にした結果、詰めの甘さを感じさせる仕上がりになった、というイメージ。

 ただ、前述の通り演出的なセンスも感じさせるし、複雑なように見えて全部わかってから俯瞰すると実はわかりやすいという構造・構成は、なかなかのもの。あまり大きな期待をせずに観ると随所に良さを感じられる映画、ということなのかも知れない。

●主なスタッフ
 監督兼脚本のマイケル・ブラントと脚本デレク・ハースは、『ウォンテッド』『3時10分、決断のとき』の脚本コンビ。
 撮影は『エクスペンダブルズ』などのジェフリー・L・キンボール、編集は『シェルター』のスティーヴ・ミルコヴィッチ、プロダクションデザインは『天使と悪魔』に携わったギレス・マスターズ、衣装は『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』のアギー・ギャラード・ロジャース。
 音楽は『ニューイヤーズ・イブ』のジョン・デブニー、サウンドエディターは『トロピック・サンダー』のジム・ブルックシャイア。SFXは『ローラーガールズ・ダイアリー』のケン・ゴーレル、スタントは『アーマード 武装地帯』のランス・ギルバートと『ウィッチマウンテン/地図から消された山』のデイヴィッド・バレット。

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