シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム
監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニー・Jr/ジュード・ロウ/ノオミ・ラパス/ジャレッド・ハリス/スティーヴン・フライ/ポール・アンダーソン/ケリー・ライリー/ジェラルディン・ジェームズ/ウィリアム・ヒューストン/ウォルフ・カーラー/アフィフ・ベン・バドラ/ダニエル・ナプロス/エディ・マーサン/レイチェル・マクアダムス
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4
【新たな敵は、天才】
欧州各地で連続爆破事件が発生、その犯人像を巡ってドイツとフランスが一触即発の事態を迎える。一連の出来事の裏には高名なジェームズ・モリアーティ教授がいると推理した名探偵シャーロック・ホームズは、彼に挑戦状を叩きつけ、事件のカギを握る女占い師シムと接触。また政府要人である兄マイクロフトとも協力、新婚旅行に出かけるはずのワトソンも捜査に巻き込むが、強大な力と天才的頭脳を持つモリアーティによって危機に直面する。
(2011年 アメリカ)
【アクション&アドベンチャーとして観れば】
相変わらず突っ走る。観客に推理や解釈の余地を与えず、ひたすらシャーロックが考えたり行動したり暴れたり、その様子を“見守る”ような流れと作りに終始する。
要するに、ミステリーというよりアクション&アドベンチャー。その範疇においては、疾走感も重量感もあって、マズマズのデキ。
予測とその対処、計画・準備とその結果をフラッシュバックで描写するシーンからあふれ出るスピード感や、説明してわからせる部分と見せてわからせる部分のバランスなどが秀逸。スローを頻繁に駆使するアクションも、ここまで徹底すれば逆に痛みや重みが伝わってきて効果的だ。
格闘そのものにもキレがあり、贅沢にVFXを使って再現された当時の街や岩肌に張り付く屋敷、バリエーション豊富な衣装、爆発などのSFXも各場面を盛り立てる。笑いを挿入して緩急のリズムを加えることも忘れない。
全体に、細部まで手が込み配慮が行き届いていて、まったくのホラというか、現実味の乏しい展開や物語なのに、そこに面白さと説得力を十二分に与えるような仕上がり。少なくとも、ホームズとワトソンのユニークな関係を見ながら「まぁこのふたりにお付き合いしましょうか」と思わせるものにはなっている。
ただ残念なのは、アイリーン役のレイチェル・マクアダムスが早々に姿を消してしまうこと。ノオミ・ラパスじゃあヒロインとして弱いんだよな。
そのぶん、ホームズ・シリーズにおける隠れた重要キャラクターといえる兄マイクロフトをスティーヴン・フライが楽しく演じているものの、弟以上にキレるという設定はしっかり出せていない気も。
またジャレッド・ハリス演じるモリアーティも、キャラクターとしても配役としてもいまひとつ。ヴィランとしての凄味や風格に欠けるのだ。頭でホームズを苦しめないんだもの。主役コンビが追い詰められるのって結局は銃撃とか格闘だし。
ベネディクト・カンバーバッチがホームズ、マーティン・フリーマンがワトソン、『ギャングスター・ナンバー1』などのポール・マクギガンらが監督を務める英BBCのドラマ版『SHERLOCK』がすこぶる面白いだけに、それと比べてしまう自分がいる。
そりゃあ金のかけかたと、それによって作られる迫力はこっちのほうが上だけれど、「ホームズもの」としてのトータルな仕上がりには疑問が残る。
やはりこちらはあくまでアクション&アドベンチャーと捉えて観るのが正解かも知れない。
●主なスタッフ
前作から引き続き参加のスタッフがほとんど。撮影のフィリップ・ルースロ、編集のジェームズ・ハーバート、プロダクションデザインのサラ・グリーンウッド、衣装のジェニー・ビーヴァン、音楽のハンス・ジマー、VFXのチャス・ジャレット、スタントのマーク・ヘンソン、ファイト・コーディネーターのエリック・オラムとリチャード・ライアンなどだ。
そのほかでは、脚本は『この森で、天使はバスを降りた』に役者として出ていたキーラン・マローニーと夫人のマイケル・マローニー。音楽スーパーバイザーは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のカレン・エリオット、サウンドエディターは『アンノウン』のオリバー・ターニー。
SFXのマーク・ホルトとVFXのシリオ・クゥインタヴァールは『裏切りのサーカス』、スタントは『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のマーク・ローンスホワイトと『エクスペンダブルズ』のチャド・スタヘルスキー。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント