TIME/タイム
監督:アンドリュー・ニコル
出演:ジャスティン・ティンバーレイク/アマンダ・セイフライド/キリアン・マーフィ/ヴィンセント・カーシーザー/アレックス・ペティファー/ジョニー・ガレッキ/オリヴィア・ワイルド/マット・ボマー/ヤヤ・アラフィア/コリンズ・ペニー/トビー・ヘミングウェイ/シャイロー・ウーストウォルド/ベラ・ヒースコート/アーロン・ペリロ
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【時間がすべてを支配する世界で】
遺伝子操作によって人類の年齢は25歳でストップ、寿命が貨幣の代わりとして流通する世界。ウィル・サラスは日雇いの仕事で食いつなぎながら、“残り1日”の暮らしを続けていた。富裕層のヘンリーから100年もの時間を渡され、自分たちがいかに搾取されているかを知ったウィルは、富裕層が住むゾーンへ。ローン会社社長フィリップ・ワイスやその娘シルビアと出会ったウィルだったが、タイムキーパーの追及が彼へと迫るのだった。
(2011年 アメリカ)
【不足が痛い】
この世界を舞台とした連作短編集の、中心となる1本を映画化した、というイメージ。
本来なら描かれるべき、時間のやりとりや社会システムなどのディテールはかなり省略。その日暮らしといういい加減な生活でいかにして家庭を守るのか、突然死を迎える死者たちの処理、物価をめぐる混乱、病気や怪我への対処、富裕層ならではの苦悩、この世界をコントロールする側の思惑、時間監視者の生きざま……といった、この設定に説得力を与えるための諸要素も「他の短編エピソードからエッセンスだけを借りてきた」くらいのレベルにとどめられているような感覚だ。
要するに、設定だけ先行の掘り下げ不足。
そもそもウィルとシルビアの行動が広い世界にどのような影響を及ぼすのかすらテキトーにすませてある。が、それでも、この作品世界が現実世界の投影であることがハッキリとわかる点は誠実だ。
1日の生活に汲々とする人々。走らない金持ち。富の再配分が進まず、というより上層によってコントロールされることで成立する格差社会。そのんまん僕らの生きる世界じゃないか。「貧しい者に対して必要以上に大きな希望を与えてはならない」という、富める者中心の社会システムを支えるべき策と真理は、本作内でも現実世界でも生きている。
持つ者と持たざる者を分かつタイムゾーンは、現実世界でいえば世界地図の緯度と経度、まさしくタイムゾーン。現実世界でも地球規模で格差のラインは存在するのである。
歩けば2時間かかる道のりのために2時間分の命を支払う、というバスのシーンでも明らかな通り、もともと時間とカネはイコールで結ばれるもの。その事実を思い知らせる役割も、本作は担っている。
この監督、弱者の視点から歪んだ社会システムを描くのが大きなテーマであるはずで、その点は一応の成功を見ているだろう。
そのあたりの面白さはあり、生臭いディストピアを構築する色調と美術と音楽、澱みのないテンポなど丁寧な作りや、役にハマるジャスティン・ティンバーレイク、アマンダ・セイフライドの可愛らしさのおかげでダレることなく観られるのだが、やはり、掘り下げと突っ込みの欠如は否めない。
う~ん、『ガタカ』や『トゥルーマン・ショー』には確かに切なさがあったんだけれど、それがないんだよね。この社会で起こっているさまざまな出来事を省略したことに加え、なまじエンターテインメントへと振っちゃったのも間違いなんじゃないか。
有限かつ可視の命っていう、もうこれ以上ない切なさファクターを主軸としていながら、人々の暮らしや恋愛の陰に潜む切なさ哀しさが消し飛んでしまったというか、無視しちゃっている感じ。ラストで「時間そのものの貴重さ」へと落とし込んだのも、一貫性を欠いているように思える。
ホントに連作短編集があるなら、それは読んでみたいと思うけれど。
●主なスタッフ
撮影は『カンパニー・メン』などのロジャー・ディーキンス、編集は『エンバー 失われた光の物語』のザック・ステーンバーグ。
プロダクションデザインは『ウォッチメン』などのアレックス・マクダウェル、衣装は『ツーリスト』のコリーン・アトウッド。
音楽は『ウォール・ストリート』などのクレイグ・アームストロング、サウンドエディターは『ダークナイト ライジング』などのマイケル・バブコック。SFXは『ハンテッド』のロバート・スタージス、VFXは『サロゲート』のジョン・P・ヌージェントら。スタントは『トロン:レガシー』のデイヴィッド・レイチ。
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