GODZILLA ゴジラ
監督:ギャレス・エドワーズ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン/渡辺謙/ブライアン・クランストン/エリザベス・オルセン/サリー・ホーキンス/デヴィッド・ストラザーン/リチャード・T・ジョーンズ/ヴィクター・ラサック/ケン・ヤマムラ/ヒロ・カナガワ/カーソン・ボルデ/CJ・アダムズ/ジェイク・カナナン/ジュリエット・ビノシュ
30点満点中16点=監4/話1/出3/芸4/技4
【怪物vs怪物vs人類】
フィリピンで巨大な地下空洞が発見され、そこでは未知の生物が卵から孵り海へ逃げ出したらしいと判明する。同時期、日本では原子炉プラントが大地震のため崩壊、幼きフォード少年の母が命を落とす。15年後、兵士となったフォードは、あの事故に何らかの秘密が隠されていると信じる父ジョーと避難区域へ。そこでふたりは、原子炉崩壊だけでなく米ロによる水爆実験の真相にも関わる事態=2種の怪獣の存在を知るのだった。
(2014年 アメリカ/日本)
★ネタバレを含みます★
【期待はあっさりと裏切られる】
おかしいなぁ……。『ゴジラ』を観に行ったはずなんだが、やっていたのは『ガメラvsギャオス』みたいな内容だったぞ。
いや、それはいいのだ。むしろ、こういうヒネリというか平成『ガメラ』寄りというか、初代『ゴジラ』ではなく娯楽路線に走って以降の『ゴジラ』に近づけるような回転技は大歓迎だ。
冒頭のフィリピン・シークエンスでは「おいおい『エイリアン』までブっ込んできやがったぞ」ってワクワクしたし。
ムートーとゴジラの関係、古代生物を監視し続けてきたモナークの存在なども含め、基本設定は、実は楽しいと思う。
が、その先がダメ。
放射性物質を体内にたんまり溜め込んでいるムートーをアッサリ殺そうとする無茶。安全対策が脆弱すぎる原子炉。「明日も一緒だよ」という約束の直後に急用が入る安直な展開。
雌ムートーのぞんざいな処理。人類史を揺るがすほどの大事件なのに、事を進めるのは提督ひとりと科学者ひとりと1兵卒。不十分な態勢で核弾頭を運ぶなど作戦の妥当性も疑問。
怪獣の通り道では、わざわざ危険な橋の上で警察や軍が待ち受け、民間人をないがしろにし、海には艦船がギッシリ。さあ殺してくださいというようなもので、危機管理意識があまりに希薄だ。電磁波パルスへの対策もナッシング、かつ、なぜナビが使えるのかなど描写も甘い。
主人公は都合よく生き延び、都合よく撃退法に出くわし、あの大混乱の中で都合よくはぐれた相手と出会う。
いやぁ、穴だらけですわ。製作は「基本設定はいいと思う。が、そこに説得力を与えるディテールがダメダメ」と評した『パシフィック・リム』のチームだ。ああ、全っ然進歩してないじゃん。
脚本はマックス・ボレンスタインというあまりキャリアのない人で、たぶん支配力としては原案デヴィッド・キャラハムのほうが強かったはず。自分の感想を調べてみたら、これまでこの人の脚本には高い点数をつけていない事実がある。『エクスペンダブルズ2』に至っては1点だし。
もうね、真っ当にストーリーを組み上げられていないのだ。サイエンス・フィクションとしてもモンスター・パニックとしてもミリタリー・アクションとしても面白く仕上げるノウハウを持っていないことは明らか。
役者に華がないのも痛い。
アーロン・テイラー=ジョンソンは物語を引っ張っていく力感には欠ける印象。渡辺謙、デヴィッド・ストラザーン、ジュリエット・ビノシュというビッグネームはさしたる活躍の場を与えられず、もっともセリフ量が多いのは芝居の臭いブライアン・クランストン。
美貌のエリザベス・オルセンも「ただ夫を心配して危ない目に遭う」ってだけの存在だし、チャーミングな子役たちも生かし切れていない。
まぁこのあたりも役者のせいというより、ご都合主義的展開&粗いストーリー&詰め切れていないキャラクター設定、つまりは製作姿勢とシナリオのマズさに足を引っ張られているともいえるだろう。
せめてもの救いは、見た目の迫力。これは、なかなか。
冒頭部の鉱山など、たびたび舞台を大きく捉えるショットを見せて、スケール感を創出。で、壊せるところは片っ端から壊す。逃げ惑う間を与えず叩き壊す。壊された都市の雰囲気も上々だ。戦闘機の落下なんか、身震いするほどに素晴らしい。
ゴジラは、エメリッヒ版とは大違い、僕らの知っているゴジラらしいフォルムと肌の質感と動きを示し、オリジナルへのリスペクトを感じさせる。海中を進む際の蛇行(イグアナ的)も素敵だ。怪獣vs怪獣のバトルという、ともすれば安っぽくウソっぽくなる場面も、日本の風味を殺すことなく上手にハリウッドVFXでアレンジしてあって上出来。
演出的にはややまったりとした流れに陥ってしまう部分もあるのだが、もともとギャレス・エドワーズ監督の出世作『モンスターズ/地球外生命体』だって「SF映画あるいはモンスター・パニックというより、ロード・ムービー的」に上手くまとめた映画だったわけで、これがこの監督の持ち味だとわかっていれば問題はない。
それに「細かなカットワーク、手の込んだ美術、その場の音を拾う音響、作品の雰囲気に合致した音楽など、各パーツの仕事ぶりもいい」との感想を抱かせた『モンスターズ』の良さはしっかりと踏襲している。
日本を代表する映画のリメイクなのに日本の描写が“トンデモ”である点はさすがにガッカリだけれど、これだって監督のせいというより製作姿勢そのものに「まぁこんなもんで」という頼りなさがあったためだろう。
そんなわけで「この人が『ゴジラ』を撮るなら、おバカ映画にはならないだろう」という監督に対する期待を、製作姿勢とシナリオのおかげでいともたやすく裏切ってくれちゃった(ように感じた)仕上がりなんである。
●主なスタッフ
原案/デヴィッド・キャラハム『エクスペンダブルズ』
撮影/シーマス・マッガーヴェイ『路上のソリスト』
編集/ボブ・ダクセイ『ハムナプトラ』シリーズ
美術/オーウェン・パターソン『スピード・レーサー』
衣装/シャレン・デイヴィス『ザ・ウォーカー』
キャラデザ/ハワード・ロウ『アイ,ロボット』
音楽/アレクサンドル・デスプラ『ゼロ・ダーク・サーティ』
音響/エリック・アーダール『アルゴ』
音響/イーサン・ヴァン・ダー・リン『ワールド・ウォーZ』
SFX/トミー・フレイジャー『レギオン』
VFX/ジム・ライジール『イーグル・アイ』
VFX/ジェフ・カポグレコ『タンタンの冒険』
VFX/ダーレン・ポー『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』
スタント/ジェイク・マーヴィン『2012』
スタント/ジョン・ストーンハム・Jr『イントゥ・ダークネス』
怪獣格闘/ギャレット・ウォーレン『リンカーン』
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