アジョシ
監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン/キム・セロン/キム・テフン/キム・ヒウォン/キム・ソンオ/リ・ジョンピル/タナヨン・ウォンタラクン/キム・ヒョソ/ソン・ヨンチャン/ベク・スリョン/ナム・キョンユプ/カク・ドウォン/ジョ・ショクヒョン/ソン・サンキョン/リ・ジェウォン
30点満点中21点=監4/話4/出5/芸4/技4
【おじさんと少女】
クラブでダンサーとして働く母ヒョジョンのもと、孤独に育つ少女ソミ。彼女が唯一心を開くのは、質屋を営む“隣のおじさん”だけだ。だがヒョジョンが麻薬を横領したため、ソミはマンソク兄弟に拉致され、彼女を救うべく“隣のおじさん”は単身で動き始める。いっぽうマンソク兄弟とオ社長との取引を監視していた警察も消えた麻薬を追うが、捜査の過程で浮かび上がった“隣のおじさん”ことチャ・テシクの正体を突き止めて……。
(2010年 韓国)
【映画としての面白さがギッシリ】
あーもう。ときたまこういうのにぶつかって身悶えすることが、映画を観る悦びなんだよなぁ。
遊び心があったり哲学や人生を吐いたりしながらも、たとえば「ソミはどこだ?」などといった物語の進行にかかわるセリフは大胆にカットし、“見せる”ことでストーリーを進めていく。けっして説明せず、けれどいいタイミングでお話を整理してみせて、行動の裏にあるそれぞれの狙いや想いなどを解きほぐしていく。
その語りのバランスが見事で、伏線をひとつたりとも無駄にせずしっかり回収して、感動まで呼ぶ。
この青暗く沈んだ質感。背景をボカして浮かび上がらせた人物たちの実在感と哀しさ。短いカットを的確に畳みかけることで生まれるスピードとアクセントの効いた語り口。研ぎ澄まされたアクション。深く、あるいはスリリングに響く音楽。つまり、作りの確かさに満ちているデキ。
事故のシーンや2階から飛び降りる場面のダイナミックさも、確実に本作を1ランク上のステージへと押し上げている。
でね、ウォンビンですよ。なんかいろいろ話すより「この映画のウォンビンはカッコイイ」っていうだけで十分かも知れん。どうカッコイイかの説明すら不要かも知れん。
相手を務めたソミ役のキム・セロンちゃんも素晴らしい。「韓国のダコタ・ファニング」とか大韓民国映画大賞新人女優賞を最年少で受賞といった噂や実績は、まったく誇張でないことを思い知らされる。
この手の作品では不可欠の“追う側”を丁寧かつ熱く演じ切るキム・テフンや、拍子抜けするほどの残酷さと間抜けさをいいあんばいで披露するマンソク兄弟など、周辺キャラの描きかたとキャスティングも上々だ。
そんなわけで、映画としての面白さがギッシリ詰まった1本。
●主なスタッフ
編集は『猟奇的な彼女』などのキム・サンビョム。この人の力がかなり大きい。音楽は『オールド・ボーイ』のシム・ヒョンジョン。
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