ハッピーサンキューモアプリーズ
監督:ジョシュ・ラドナー
出演:ジョシュ・ラドナー/ケイト・マーラ/マリン・アッカーマン/ゾーイ・カザン/パブロ・シュレイバー/トニー・ヘイル/ピーター・スカナヴィーノ/リチャード・ジェンキンス/マイケル・アルジエリ
30点満点中17点=監4/話3/出4/芸4/技3
【NY。男と女の日々】
ひょんなことから、里親のもとに帰りたくないラシーンと暮らすことになった小説家のサム。その親友で無毛症のアニーは元彼のアイラと再会して自己嫌悪に陥り、弁護士サム2の誘いに迷惑そうだ。サムの従妹メアリー・キャサリンは恋人チャーリーがロスへ移住したいと切り出したことに戸惑う。そしてサムは街で見かけたミシシッピに声をかけ、ふたりの距離は近づくのだが……。NY、不器用な男と女の、朝と昼と夜の物語。
(2010年 アメリカ)
【どうってことないけれどハッピー】
2010年のSundance Film FestivalでAudience Awardに輝いた作品。ああ、なるほど。どうってことのない話で、どうってことのない映画なんだけれど、不思議と観る者にフワフワしたいい気分を味わわせてくれる。
監督・脚本・主演を務めたジョシュ・ラドナーの、うつろな眼がいい。ふっと黙り込んだりお喋りが過ぎたり、その裏側は、いろいろ考えているように見えて実は刹那的だよね、という雰囲気が楽しい。
マリン・アッカーマンって、そうか『ウォッチメン』のシルク・スペクターですか。えらく変身したもんだが、アニーの持ついたたまれなさと懸命な前向きさを好演。ゾーイ・カザンは、これまで子役寄りのYAって感じだったけれど、今回はしっかり悩める女性になっている。
彼らの住む世界の作りかたが秀逸。Jaymay(音楽)の寂しげな声と街のノイズが等しく扱われ、記憶にある限り、すべての部屋に絵や写真や地図が張られていたように思うんだが、つまり人はいろんなものに取り囲まれて暮らしているってこと。
世界は(彼らも含めて)いろんなものでできているのだと、押しつけがましくなく伝えてくれるわけだ。
で、「歩いていれば治る」なんて真理をちらつかせつつ、何年か後のことなんて考えず、いまの自分の価値観を大切にして、変わったり変わらなかったりを繰り返しながら、自分を取り囲む世界の中で精一杯やっていこうよと締めくくる。
サムがラシーンに「ミシシッピの歌が下手だったらどうしよう」と相談するあたりからの怒涛の展開が、実に鮮やかだ。
ラドナー監督の次作『Liberal Arts』も、ちょっと観てみたい。
●主なスタッフ
撮影/シェイマス・ティアニー(『ボーイズ・ドント・クライ』)
衣装/セーラ・ビアーズ(『ボーイズ・ドント・クライ』)
音楽監修/アンドリュー・ゴーワン『バタフライ・エフェクト』
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