ドライヴ
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:ライアン・ゴズリング/キャリー・マリガン/ブライアン・クランストン/アルバート・ブルックス/オスカー・アイザック/クリスティナ・ヘンドリックス/ロン・パールマン/カーデン・リオス/ジェームス・ビベリ
30点満点中19点=監5/話3/出4/芸3/技4
【破滅へと向かう疾走】
自動車修理工場で働きながらカー・スタントマンの仕事もこなす男には、実行犯を犯行現場から確実に逃がす闇のドライバーという裏の顔があった。工場のオーナー・シャノンの夢であるカーレースへの参戦が具体化する中、隣人アイリーンと親しくなった彼は、アイリーンの夫スタンダードがムショ仲間から質屋強盗を手伝うよう脅迫されていることを知り、手伝いを買って出る。だがその計画には、彼らをハメる陰謀が隠されていた。
(2011年 アメリカ)
【映画的な映画】
2011年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。なるほど、特異で鋭角的でオリジナリティにあふれる仕上げかただ。
おそらくシナリオは相当に薄いはず。物語的な内容という意味ではなく、文字通り、ホンの厚さという点で。
たとえば「待つ」「じっと見る」「殴る」とだけ書かれているであろう箇所でも、役者の芝居をしっかり捉える間(ま)の巧みさと編集の小気味よさで、雰囲気たっぷりに撮ってみせる。
表情から心理を読み取らせる静けさ、終盤は一転してのバイオレンス。観客を事件の真っ只中に放り込んだり、かと思えばたまたまカメラが居合わせたというイメージのシーンがあったり、出来事を全部見せないままで流れを生み出したりなど、雰囲気創出の手際とリズム感は極上だ。
痛めつけられる男をダンサーたちがじっと見ている、という場面のシュールさもイケている。
役者も、寡黙ながら思っていること考えていることを顔と仕草でとっぷりと表現してみせるライアン・ゴズリング、哀切と疲れと希望と美貌を混沌とさせるキャリー・マリガン、おっさんの悲しさあふれるブライアン・クランストン、普通の悪党の中に潜む狂気を発揮するアルバート・ブルックスと、それぞれいい仕事だ。
撮影は、シネマスコープサイズを生かし切る絵画的なフレーミングからスピーディなアクションまで自由自在。影と光のバランスもまた美しい。
IMDbでTechnical Specを見ると、CANONのEOS 5DとかIconix HD-RH1とか機材(たぶん最近のカーアクションでは多用されている機器)もユニークだが、それがちゃんと見た目の面白さや展開の衝撃性へとつながっている。
その場の生音を拾い上げ、そこにベースを強調したサントラを乗っけることで生み出される“胃袋キリキリ感”も楽しい。
物語の何かが心に残る作品というわけではない。が、ああこういう撮りかたは確かに面白いなぁと、画面に引きつけるパワーを終始まき散らしながら観る者をガシっとつかむ、映画的な映画である。
●主なスタッフ
ジェイムズ・サリスの原作を『スノーホワイト』のホセイン・アミニが脚色。撮影は『ワルキューレ』のニュートン・トーマス・サイジェル、編集は監督とずっと組んでいるマット・ニューマン。
プロダクションデザインは『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』のベス・マイクル、衣装は『ボビーZ』などに携わったエリン・ベナッチ。音楽は『コンテイジョン』などのクリフ・マルティネス、サウンドエディターは『アンストッパブル』などで仕事をしたヴィクター・レイ・エニス。
SFXは『アリス・イン・ワンダーランド』のジェームズ・ロリマー、スタントは『宇宙人ポール』などのダーリン・プレスコット。
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