ワン・デイ 23年のラブストーリー
監督:ロネ・シェルフィグ
出演:アン・ハサウェイ/ジム・スタージェス/トム・マイソン/ジョディ・ウィッテカー/レイフ・スポール/パトリシア・クラークソン/ケン・ストット/ロモーラ・ガライ/ヘイダ・リード/アマンダ・フェアバンク=ハインズ/トビー・レグボ/メイシー・フィッシュバーン/エミリア・ジョーンズ
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【あるふたりの23年間】
大学の卒業式で“寝そこなった”エマとデクスター。その後ふたりは恋人とはならず、たがいを尊重し距離感を大切にしつつ友情を育み続ける。それぞれ別の人と付き合い、夢を追い、生活に追われ、挫折と幸福とを繰り返しながら、旅に出かけ、慰めあい、いたわりあうエマとデクスター。ともに心に秘めた想いを行動に移すことなく時を過ごすのだが……。親友と呼び合う男女の、7月15日という1日の出来事を23年間に渡って描く。
(2011年 アメリカ/イギリス)
【誰かと誰かの関係】
何が友情で何が“男女間の愛”なのか。その価値観も線引きも、それを踏まえたうえでどう行動するのかも、結局は個々による。
よって本作(というか、ふたりの関係)の受け取りかたも観る者によって異なるのだろうが、ドライではなくセンチメンタルでもなく身勝手すぎるわけでもなく、まぁありふれた表現だけれど“友達以上恋人未満”のかなり恋人寄りってのが素直な印象。
エマを演じたアン・ハサウェイの、デクスターをプールに沈める際の表情がいい。なんか、エマの感情を言葉にするとすごく安っぽくなるような気がするけれど、この表情ひとつですべてを物語ってみせて、やっぱり上手いんだよなと思わせる。過去作のどれとも異なる“やつれ”とか、イケていない女性のイケてないスタイル(ちょっと肉感的な体型と、縮こまった背中のライン)も見せてくれて、上々だ。
ジム・スタージェスの芝居はちょっと定型的だけれど、わかりやすくって適度に自虐的で、年月にともなう変化量もキッパリとしていて、こちらもまた素晴らしい。
ふたりの経年をしっかり表現したメイクの仕事も立派だし、丸1年お話が飛んでも無理なくつながる、あるいはつながらないからこそ人生は面白いと感じさせる構成も良。年によって「!」的カットで始めるなど、見せかたやテンポの作りかたの上手さもある。
で、このふたりに限らず、誰かと誰かの関係って主観と客観とではまったく異なる、というのが、本作における最大の真理かも。見た目通りじゃないから人は苦しかったりする。
もちろんエマとデクスターの場合は、客観的な見た目がどうであれ主観的な“わたしたちふたり”に不満や心残りがあるわけで、それも苦しさの源となるわけなんだが。
また「時間と想いを無駄にするな」というメッセージ性もこめられていると捉えることも可能だろう。
いずれにせよ、思った通りに行かないのが人の想いというもの。この監督は『17歳の肖像』でもそれを描いていたし、主観と客観とのズレも『17歳の肖像』ではテーマとなっていた。
監督のアイデンティティを感じられるってのは、良作である証拠である。
●主なスタッフ
撮影/ブノワ・ドゥローム『陰謀の代償』
編集/バーニー・ピリング『17歳の肖像』
美術/マーク・ティルデスリー『キラー・インサイド・ミー』
衣装/オディール・ディックス=ミロー『バンク・ジョブ』
ヘアメイク/レスリー・スミス『ゼロ・ダーク・サーティ』
音楽/レイチェル・ポートマン『ミス・ポター』
音楽監修/カレン・エリオット『タイタンの逆襲』
音響/グレン・フリーマントル『127時間』
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