ハンガー・ゲーム
監督:ゲイリー・ロス
出演:ジェニファー・ローレンス/ジョシュ・ハッチャーソン/ウィロウ・シールズ/ポーラ・マルコムソン/リアム・ヘムズワース/アレクサンダー・ルドウィグ/アマンドラ・ステンバーグ/イザベル・ファーマン/ジャクリーン・エマーソン/ウディ・ハレルソン/エリザベス・バンクス/レニー・クラヴィッツ/スタンリー・トゥッチ/ウェス・ベントリー/トビー・ジョーンズ/ドナルド・サザーランド
30点満点中17点=監4/話2/出4/芸3/技4
【戦いに挑む少女たち、少年たち】
若き男女24名が最後のひとりになるまで戦う“ハンガー・ゲーム”。それは、かつて中央に対して反乱を企てて敗れた12の地区にとって、罰であり希望でもあった……。幼い妹に代わってゲームへの参加を志願したカットニスと、彼女にほのかな想いを寄せるピータは、第12地区の代表として74回大会に挑むこととなる。優勝経験者ヘイミッチのアドバイスを得ながら準備を進めるふたりだったが、そこには策謀と危機が待ち受けていた。
(2012年 アメリカ)
★ネタバレを含みます★
【次が気になる、という点では成功】
理不尽な社会システムの中で懸命に生きる若者たち。っていう話は腐るほど作られてきたわけで。『2300年未来への旅』に『THX-1138』、最近だと『アイランド』。日本には『バトル・ロワイアル』や『イキガミ』などがある。『逃走中』もそうだな。
古今東西でウケている題材。閉塞し搾取されるばかりの世界になんとか抗いたい。そんな想いは国境と時代を超えて普遍なのだな。
で、反抗=希望でまとめちゃうのがこのカテゴリーの基本フォーマットなんだけれど、本作は大胆にも、その一歩手前でストップ。さすがに主人公は生き残るものの、絶望的な空気から抜け出さないままで締めている。
とはいえ絶望エンドというほどでもなく、このまんまだと中途半端だよなと思ったら、あくまでも序章、すでに続編が撮られているらしく、そちらでは反乱に向けての動きがある模様。
監督が『アイ・アム・レジェンド』のフランシス・ローレンスに替わり、フィリップ・シーモア・ホフマンとかアマンダ・プラマーとかジェフリー・ライトとかが出ているらしい。YA映画の割に豪華だ。
つまりは、本作単独では消化不良。『バトル・ロワイアル』の焼き直し劣化版。ちなみにIMDbのディストピア・カテゴリーでは本作が7.2評価なのに対して『バトル・ロワイアル』は7.8だ。首位が『Vフォー・ヴェンデッタ』の8.2っていうのはアレだけれど。
ハナっから2本か3本でまとめればいい、という意識があったのかな、ちょっとゆったりめの展開。人間関係とかトレーニングの様子などが盛り込まれていて退屈ではないのだけれど、ゲームに突入するまでが長いのは確か。長編小説の導入部的。“つかみ”として前回大会の描写から始めれば面白かったのに。
そのあたりを考えると、TVシリーズ向きかなとも感じたりする。職業プレーヤーやゲームマスター側を主役にしたスピンオフを作れそうだし。
ゲーム場面が少ないのに退屈じゃない理由の1つがキャスト。ジェニファー・ローレンスって、ほんと引き出しが多くて大きいなぁ。戸惑いも怒りも計算も田舎臭さもミックスし、弓の名手っていう設定にも無理を感じさせないところが凄い。
ジョシュ・ハッチャーソンはいい具合に成長しているし、アレクサンダー・ルドウィグって『ウィッチマウンテン』の子か。イザベル・ファーマンって『エスター』なのか。そういう驚きもある。ウディ・ハレルソンの滲み出るカッコよさも、見事に変身したエリザベス・バンクスも楽しい。
ただ、ウディ・ハレルソンのヘイミッチ、ウェス・ベントリーのゲームマスター・セネカやドナルド・サザーランドの大統領など、掘り下げるべきキャラクターが十分に掘り下げられていない印象も残る。
そのへんも次回作でフォローされるんだろうか。
作りとしては、上手く誤魔化しているな、という感じ。
そもそもこのシステムで民衆を抑え込めるのか、とか、各地区の規模を見る限りとても中央の生活を支え切れないだろ、とか、勝者の扱いとか、いろいろと疑問が残るというか、描かれていない部分が多く(これまた続編に持ち越しなのかな)、リアリティとしては薄い。
これをフォローするため、近接、フレームから簡単にハミ出す人物、覗き見的でドキュメンタリー的な撮りかたが採用され、音のオン/オフやSEのナチュラルさにもこだわりを見せて、全体にダイナミック。短いカットそれぞれに贅沢なまでの物量が投じられていることも感じる。
要するにストーリー/設定としての甘さを、見た目でカバーして引っ張っていく力技。うむ、ここが甘いとB級どころかC級に堕してしまうので、正しい方向性ではあるだろう。
また『アメリカン・アイドル』を模した見せかた、ゲームの様子がTV中継されている描写もあって、リアリティ番組に馴染んだ世代には親近感の持てる作りだろう(と同時に、この手のものに熱狂する価値観への嘲笑も含まれているようにも思う)。
というわけで、いくつかの不足を補うだけの“格”とか仕上げの良さがあり、また、いくつかの不足が逆に「この先どうなるんだよ」と思わせるともいえる。そういう意味では成功作なのかも知れない。
●主なスタッフ
脚本/ゲイリー・ロス『シービスケット』
脚本/ビリー・レイ『消されたヘッドライン』
脚本/スーザン・コリンズ(原作者)
撮影/トム・スターン『ヒア アフター』
編集/スティーヴン・ミリオン『コンテイジョン』
編集/ジュリエット・ウェルフラン『恋愛睡眠のすすめ』
美術/フィリップ・メッシーナ『エアベンダー』
衣装/ジュディアナ・マコフスキー『ダレン・シャン』
音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード『スノーホワイト』
音楽監修/T=ボーン・バーネット『クレイジー・ハート』
音響/ロン・ベンダー『ドライヴ』
SFX/スティーヴ・クレミン『宇宙人ポール』
VFX/シーナ・ドゥガル『ワールド・オブ・ライズ』
スタント/アラン・ホップルトン『ナルニア』
スタント/チャド・スタヘルスキ『シャドウ ゲーム』
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