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2014/12/04

フューリー

監督:デヴィッド・エアー
出演:ブラッド・ピット/シャイア・ラブーフ/マイケル・ペーニャ/ジョン・バーンサル/ローガン・ラーマン/ジム・パラック/ブラッド・ウィリアム・ヘンケ/ケヴィン・ヴァンス/ハヴィエル・サミュエル/スコット・イーストウッド/アナマリア・マリンカ/アリシア・フォン・リットベルク/ジェイソン・アイザックス

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【前線へ。そしてまた前線へ】
 第二次大戦終盤。ベルリンへ進む連合国軍に戦況は有利も、敵はいっこうに降伏せず、強力なティーガー戦車に苦戦を強いられ、ウォーダディーことドン・コリアー軍曹が率いる小隊も激戦の末に優秀な副操縦士を失う。新たに配属されたのは事務職に就くはずだった新兵ノーマン。彼を鍛えながら、コリアー、バイブル、ゴルド、クーンアスの乗るシャーマンM4中戦車は前線からまた前線へと走り続ける。与えられた任務は壮絶と過酷を極めた。
(2014年 アメリカ/中国/イギリス)

【期待からはズレたものの、仕上がりは良】
 僕ら現代人のほとんどは、暮らしのために働いている。いっぽうこの映画の中の出来事は、歴史的に見れば「世界を作る」ための一コマということになるのかも知れない。コリアーたちだけでなく、当時は多くの人が「世界を作る」仕事に従事していた。
 かといって崇高なわけじゃない。やりがいも、あるのかどうか。泥と血と硝煙にまみれて砲弾をぶっ放し、機関銃を撃ちまくる日々。あるいは爆弾を落としたり敵艦に突っ込んだり。彼らの仕事は“戦争”である。敵を殺すことである。

 そして、あの十字路を守ることが本当に現代の世界を作るのに必要だったのか、不可欠だったのか、それは誰にもわからない。

 戦争の空虚さを第一義として描く点では『Uボート』以降の戦争映画に共通のテーマを内包しているといえる作品。
 また、1つの出来事をたっぷりと見せる作風(なにしろ本作、冒頭部、野営地、平原、街、アパート内、行軍、十字路と、シーンの数は10に満たない)は『ハート・ロッカー』に近い。

 ただしリアリティというか、たとえば『プライベート・ライアン』~『バンド・オブ・ブラザース』~『ザ・パシフィック』の路線のように、観る者をその場に叩き込む近接感を重視しているかといえば、そうでもない。
 デヴィッド・エアー監督は『エンド・オブ・ウォッチ』でモキュメンタリー的な手法に取り組んで成功させたけれど、本作は劇映画として真っ当に撮られている印象

 いや、頭や脚が吹っ飛ぶなど残虐描写はふんだん。パンフレットによれば「ヨーロッパ中のコレクターから本物の戦車を借り受け、英国ボービントン戦車博物館所蔵の世界で唯一可動するティーガー戦車を初めて撮影に使用」したそうだ。そういう意味でのリアルさはある。
 恐らくは巨大なセットを建て、それを惜しげもなく破壊したであろうこともわかる。戦場では弾が乱れ飛び、土煙が舞う。美術、SFX、音響効果の仕事で、全編に渡って迫力のあるものになっている。

 ただ、画面が大きく揺れたり、対象が画面からハミ出したりといった、戦場に潜り込むような撮りかたはせず、マルチカメラっぽさもなし。あっちとこっちから何テイクか撮って取っ組み合いの場面を作ったり、狭い戦車内を立体的に見せたりと、丁寧な仕上げ。画面も役者たちもそれほど汚れない。観る者をあくまでスクリーンのコチラ側に置き、第三者的な視点でいろいろと考えてもらおう、という感じ。
 この監督だし、衣装のオーウェン・ソーントンあたりがミリタリー・マニアらしいし、もっとドロドロした、戦争映画というより“戦場映画”になるかと思えば、意外とキレイだ。

 出演陣も、頼れる軍曹のブラッド・ピットを筆頭に、イメージ通りのマイケル・ペーニャ、逆にこれまでとはイメージが異なるのにピタリとハマっているシャイア・ラブーフ、新兵の苦悩を等身大に表現するローガン・ラーマンと、いずれもキッパリとした芝居で、至極真っ当。
 とりわけクーンアス役のジョン・バーンサルが、戦争は人間からデリカシーも繊細さも奪うのだという事実をよく伝えていて出色だ。ジェイソン・アイザックスが、登場機会は少ないながらも信頼厚いヴェテランの雰囲気を醸し出していて、ルシウスとは思えぬカッコ良さで魅せる。

 そんなわけで、期待とはちょっとズレていたし、“いまさら”感も拭えない内容ではある。けれども、テーマを伝えるには十分かつ見ごたえのある仕上がりとはいえるだろう。

●主なスタッフ
脚本/デヴィッド・エアー『S.W.A.T.』
撮影/ローマン・ヴァシャノフ
衣装/オーウェン・ソーントン
 以上『エンド・オブ・ウォッチ』
編集/ドディ・ドーン『プロヴァンスの贈りもの』
編集/ジェイ・キャシディ『アメリカン・ハッスル』
美術/アンドリュー・メンジース『クレイジーズ』
ヘアメイク/アレッサンドロ・ベルトラッツィ『バベル』
音楽/スティーヴン・プライス『ゼロ・グラビティ』
音楽監修/ゲイブ・ヒルファー『ブラック・スワン』
音楽監修/シーズン・ケント『ザ・ファイター』
音響/ポール・N・J・オットソン『ゼロ・ダーク・サーティ』
SFX/ジャリラ・オクティ『ワールド・ウォーZ』
SFX/アンディ・ウィリアムズ『クラウド アトラス』
VFX/デレク・バード『LIFE!』
VFX/ジェローム・チェン『ベオウルフ/呪われし勇者』
VFX/テイラー・チューリップ=クローズ『X-MEN FG』
スタント/ベン・クーク『スノーホワイト』

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» 「フューリー」 [ここなつ映画レビュー]
第二次世界大戦物で、戦車戦にスポットを当てた作品。よく考えてみたら当然のことだけれど、戦車はチーム制になっていて、内部のメンバーや役割は定められている。そこには命を賭けた、友情を超えた絆が存在する。その中の一機フューリー号での戦いを描いた作品である。戦車戦の迫力、恐ろしい戦場の様、息を呑んでただただ見続けるしかない。ウォーダディーことドン・コリアー(ブラッド・ピット)がリーダーを務めるフューリー号は、ドイツ上陸後の激しい戦闘で副操縦士を失い、新たにメンバーに加わったのは、兵士になってわずか8週目の新... [続きを読む]

受信: 2014/12/12 12:56

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