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2014/12/18

ゴーン・ガール

監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス/タイラー・ペリー/キャリー・クーン/キム・ディケンズ/パトリック・フュジット/デヴィッド・クレノン/リサ・ベインズ/ミッシー・パイル/エミリー・ラタコウスキー/ケイシー・ウィルソン/ローラ・カーク/ボイド・ホルブルック/セラ・ウォード

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸4/技3

【消えた妻。その失踪の裏に隠されたもの】
 ミズーリ州の小さな町、突如として失踪したエイミー。町をあげての大捜索が始まるものの、夫ニックとの冷えた仲、偽装された現場と拭い取られた血痕、ニックの浪費と浮気、エイミーにかけられた多額の生命保険などが次第に明らかとなる。エイミーが残した「結婚5周年のプレゼントを探すヒント」を頼りに身の潔白を立てようと奔走するニックだったが、マスコミはニックに妻殺しの容疑をかけ、ボニー刑事にも疑いの目を向けられ……。
(2014年 アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【男性の鑑賞は禁じます】
 アメリカでは、これが日常なんだろうなぁ。ひとたび失踪事件が起こったなら、たちまち町をあげての大イベントだ。マスコミが群がるのと、あることないこと掘り起こされて、より扇情的な“ストーリー”が語られるようになるのは日本も同じだけれど。

 で、この騒動の様子を、割合に淡々と描いてフィンチャーらしくない。お馴染みとなったトレント・レズナー/アッティカス・ロスによる浮遊感とキリキリ締めつける痛みとを両立させたサウンドトラックや、ノイズたっぷりの音作り、陰影豊かかつシャープに切り取られる場面などに“それっぽさ”はあるものの、フィンチャーの過去作ほどスタイリッシュでも先鋭的でもなく、生真面目に撮られている印象だ。
 確か『ゾディアック』では「この手の作品では凝ったカメラワークは邪魔になる」といいながら思いっ切りフィンチャー節を効かせていたのに。

 ニックの行動と回想にエミリーの日記や警察の捜査も交えて、事件を俯瞰する描写になっているのもポイント。『セブン』でも『ドラゴン・タトゥーの女』でも『ゾディアック』でもほぼ一方向からの語り口だったはずで、これまたフィンチャーのやり口からは外れている。
 観客が与えられている情報量は、作中のどの人物よりも多い。生真面目に撮られている“いろいろ”を見ながら、それぞれに考える、というのが前半部だ。

 着地点(事件の真相)はもちろん、なぜこの映画が作られたのか(この監督なんだから単なる「これこれこうでした」ではないはずだ)もわからないけれど、ニックの人物像がマスコミによって捻じ曲げられていることを理解し、いっぽうでエミリーが苦しんでいたこともどうやら本当らしいと知り、あるいはニックが何か隠している可能性も排除できないまま。
 確かに「情報は持っている」という優越感はあるものの、じゃあ何が起こっているのかと問われても僕らは肩をすくめるしかなく、作中で述べられる「もっともシンプルな答えが正解」という疑いを抱きながらの、約1時間である。

 それが一転する後半。いきなり提示される真相。
 いや、真相だけじゃない。なるほど何が起こったのかという部分もショッキングながら、その衝撃度よりむしろ重いのは“真実”だ。生真面目に、ストレートに、さまざまな情報を並べ立てている前半部において、ひとつの真実=エミリーの人となりに関しては意識的に“描かない”という方法論が採られていて、ある意味で煙に巻かれていたことを僕らは知る。

 さらにいえば、後半部でも当初はちょっぴりエイミーへの同情を誘うように描かれているのだけれど、そのシンパシーが次々とむき剥がされていく展開。そこにこそ“真実”があるという、意地悪な事件。
 そりゃあニックもね、奥さんが消えた夫としてはどこかよそよそしく他人事のように振る舞ってしまうのも無理ない。ニックの妹マーゴが義姉を苦手に感じるのも仕方ない。

 なぁんだ、多くの情報を与えられているといったって、結局のところもっとも肝心なことを知らぬままあれやこれやと考えていたんだから、僕らも無責任なマスコミによるインチキ報道を面白がる連中と同列じゃん。
 その“気づき”をもたらすための生真面目な前半部であり、衝撃の後半部であり、わかっているつもりで何もわかっていない「事件の当事者以外のすべての人」を嗤うのが本作の狙いだったのかも知れない。

 だらしない体型を作ったのか、ベン・アフレックのイケていない旦那の風貌が楽しい。エミリー役ロザムンド・パイクは、メイクや衣装や撮りかたの力も大きいだろうが、変幻自在の“ザ・女”を好演する。
 弁護士ボルトのタイラー・ペリー、ボニー刑事のキム・ディケンズ、どちらも職務に忠実で、かつ“デキる”という雰囲気を醸し出していて、このふたりも大きな魅力だ。

 いやぁ、それにしても怖い話。っていうか「女って、怖い」というべきだろうか。とにかくすべてを自分の意志の下でコントロールしたい、それこそが女性最大の習性、ってところか。
 でも、そうやってコントロールされているのが意外と幸福なのかも知れないね、などと既婚者は思ったりするのである。

●主なスタッフ
撮影/ジェフ・クローネンウェス
編集/カーク・バクスター
美術/ドナルド・グレアム・バート
音楽/トレント・レズナー
音楽/アッティカス・ロス
音響/レン・クライス 以上『ソーシャル・ネットワーク』
衣装/トリッシュ・サマーヴィル『ドラゴン・タトゥーの女』
ヘアメイク/ケイト・ビスコー『アルゴ』
ヘアメイク/キム・サンタントニオ『ブッシュ』
SFX/ロン・ボラノウスキー『インフォーマント!』
VFX/エリック・バルバ『オブリビオン』

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