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2014/12/02

インターステラー

監督:クリストファー・ノーラン
出演:マシュー・マコノヒー/アン・ハサウェイ/ジェシカ・チャステイン/エレン・バースティン/マッケンジー・フォイ/ティモシー・シャラメ/ジョン・リスゴー/ケイシー・アフレック/ウェス・ベントリー/リーア・ケアンズ/リーアム・ディケンソン/トファー・グレイス/デイヴィッド・ギャシー/デヴィッド・オイェロウォ/コレット・ウォルフ/マット・デイモン/マイケル・ケイン/(以下、声の出演)ビル・アーウィン/ジョシュ・スチュワート

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【娘たちの世代へ希望をつなぐ旅】
 蔓延する疫病のため農作物が次々と死滅し、食糧難にあえぐ地球。かつてはNASAのパイロットとして活躍したクーパーも、いまはトウモロコシ畑を耕して暮らす。だが“重力”に導かれて辿り着いた先で彼は、人類が移住可能な星を探すという任務を託される。それは、最愛の娘マーフや息子トムとの永遠の別れを意味する遥かな旅。科学者アメリアらと宇宙船に乗り込み、土星近くにあるワームホールへと向かうクーパーを待ち受けるのは……。
(2014年 アメリカ/イギリス)

【見た目の良さはあるものの細部と掘り下げに不満】
 人類進化の謎を解き明かすわけじゃないけれど、ツァラトゥストラを思わせる音楽が響き、マシュー・マコノヒーはモノリスになる。要するにノーラン版の『2001年』だな。その傲慢さが好ましい。

 作りは悪くないと思う。
 まずは美術面が秀逸。ワームホールへの突入や恒星の光に満ちた外宇宙、ブラックホール、スペースコロニーなどの表現は、“スペースオペラ”とは異なる、ハードSFとしての佇まい。大津波の迫力、極寒の星の寂寥感も見事だし、時間が物体化した五次元空間も楽しい。

 とりわけTARSですよ。あの奇天烈な造形と、そのフォルムに似合わぬ活躍っぷり。キャラクターとしては本家のHAL9000というより『月に囚われた男』のガーティ、『攻殻機動隊S.A.C.』のタチコマあたりに近いけれど、その“軽さ”がまたツボ。コイツのおかげで本作のSF度が高まっているともいえるほど重要な存在だろう。

 スケール感のある内容の割にはバストショット以上の寄りなど芝居をしっかり捉える絵を多用し、クーパー&マーフ父娘のパーソナルな物語である点を強調。オンボードカメラ的な映像はリアリティ向上に寄与(カットが切り替わった際に時計の文字盤=時刻が違っている箇所があったように記憶する。重要な場面なのに残念)。音のオン/オフの上手さは、観る者に「!」を与えるとともに物語の流れを立体的にもしている。

 出演者たちの芝居力も大きい。どちらかといえばマッタリと進む長尺の作品。それを、反骨と知性が融和したマシュー・マコノヒー、タレ目が哀しいアン・ハサウェイ、安定のジェシカ・チャステイン、若者を導く役が板についたマイケル・ケイン、マッケンジー・フォイの可愛らしさなどが支えて、退屈を呼ばない。

 ただ、看過できないほどのマズさを抱えているのも事実。ディテールが決定的に不足しているのだ。

 小麦が死滅した世界でビールらしきものを飲む人々。そこにエクスキューズ(たとえばトウモロコシで作ったアルコール飲料とか)はあって然るべきだし、娯楽の乏しい時代の人々の暮らしも盛り込んでよかっただろう。そもそも星系間移民やスペースコロニーへの移住で解決するような問題なのかも曖昧。強引に「この世界は、もたない」とセリフだけで説明・説得しようとする。舞台が畑と室内と宇宙船内にほぼ限られていて、設定世界の広がりが見えないというか、ほとんど無視されちゃっている。滅亡へと向かう人類の切迫感を出せていないのが気に食わない。

 ほかにも、重力が歪んだ星でたやすく脱出速度に到達するシャトルとか、後遺症がほとんどない冷凍睡眠とか、主人公だけ都合よく成功するドッキングとか、そのあたりのリアリティも引っ掛かる。

 要は社会学的・物理学的なサイエンス描写が練り込めていないのだ。

 なにより、娘を想う父、父を慕う娘、すなわち本作の中心となるべき部分のディテールが掘り下げ不足。
 クーパーでいえば「食料が貴重な世界において、ドローンを追いかけるために平気でトウモロコシをなぎ倒していく」というメンタリティの持ち主であるわけだ。マーフは「『アポロ計画はねつ造』というねつ造」を認めない少女だ。そのあたり、ふたりのキャラクターをもっともっと濃厚に描き、かつ、たがいにかけがえのない相手として存在している事実を、コッテリと印象づけなければ成立しない物語じゃなかろうか。

 どうも大きな出来事・事象・仕掛けが主になってしまって、“情”の部分は「父娘なんだから、これくらい想いあって当然でしょ」と、背景やディテールは「そんなの見せなくてもいいでしょ」と、力ずくでねじ伏せてくるというか、軽視されちゃった感じ。

 この監督が、ふたつの価値観の対立や、入れ子構造、ストーリー上の仕掛けなどを面白く見せる技に長けているのは『インセプション』『ダークナイト』シリーズからも明らか。でも、ひょっとすると、本質的なSFマインドとか、「細部にこそ神は宿る」的な配慮とか、人を描く力とかは十分じゃないのかも知れない。

 簡単にまとめると「こちとら30年も前から星野之宣を読んでますから」ってことになる。いやぶっちゃけ『遠い呼び声』や『2001夜物語』のほうが、うんと面白くて、ずっと先駆的なんだよなぁ。

●主なスタッフ
脚本/ジョナサン・ノーラン
音響/リチャード・キング
SFX/スコット・R・フィッシャー
VFX/ポール・J・フランクリン
スタント/ジョージ・コトル
 以上『ダークナイト ライジング』
撮影/ホイテ・ヴァン・ホイテマ『裏切りのサーカス』
編集/リー・スミス『エリジウム』
美術/ネイサン・クロウリー『ジョン・カーター』
美術/ディーン・ウォルコット『スピード・レーサー』
衣装/メアリー・ゾフレス『カウボーイ&エイリアン』
ヘアメイク/ルイサ・アベル『マイティ・ソー』
音楽/ハンス・ジマー『それでも夜は明ける』
SFX/ジェームス・パラディ『GODZILLA ゴジラ』

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