マシンガン・プリーチャー
監督:マーク・フォースター
出演:ジェラルド・バトラー/ミシェル・モナハン/キャシー・ベイカー/マイケル・シャノン/マデリン・キャロル/リアン・カンポス/スレイマン・スイ・サヴァネ/グラント・G・クラウス/ピーター・ケイリー/リーヴァイス・グラハム/ムドゥドゥジ・マバソ/ジュニア・マゲール/ファナ・モコエナ/アベナ・エイボア
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸4/技3
【彼は銃を持ってアフリカに立つ】
友人ドニーとともにクスリと暴力に満ちた無軌道な暮らしを続けるサム・チルダース。が、人を刺した恐怖と、神に救われたという妻リンの影響で教会へ通うようになり、これまでの日々を悔い改める。建設業を立ち上げて平穏な生活を手に入れたサムは、アフリカの窮状を訴える牧師の言葉を聞いて自ら南スーダンへ飛ぶ。内戦のため子どもたちが虐殺や誘拐の被害に遭っていることを知り、保護施設の建設に乗り出すサムだったが……。
(2011年 アメリカ)
【こちらとあちらを、どう考えるか】
実話ベースの映画。2011年に北(スーダン)からの分離独立を果たした南スーダンだが、油田の利権を巡る国境紛争など、いまなお内戦中といっていい状況にある模様だ。
Yahoo!で「スーダン」と検索したら、トップに来るのは国連難民高等弁務官事務所のスポンサードサーチ(本作を観た2013年当時)。国境なき医師団のサイトも表示される。どちらも緊急支援の依頼だ。
毎月1500円の寄付で、教科書71人分、栄養治療食毎月45食分を賄えるのだという。200円あれば満たされる腹に2000円のものを流し込んでいる僕らに、払えない金ではない。
でもいっぽうで、僕らには“暮らし”がある。その2000円の美食に意味を見出している人生がある。遠い異国より3・11の被災地支援を重視したいという想いだって否定されるべきではない。
じゃあ、かといって。いやけれどでも。結局のところ、地域や文化や価値観の多様性を自分自身へのエクスキューズにしながら、余裕のあるときにできることをする、というところへ落ち着く。
本作でもそんな「こちらにある生活や意識と、あちらへ向ける情熱」のバランスが1つのテーマになっているように思う。これは民間・市民レベルでの国際援助における永遠の難問だろう。できることとやりたいこと、こちらとあちらの幸せの“おりあい”は、どこにあるのか。あるいはそもそも、「こちら」「あちら」と分けること自体が間違っているのかも、という突き付け。
エンドロールにおいてサム・チルダース本人が語る「自分の家族が誘拐されたら、誰も手段なんて問わないだろう」という言葉に説得力を感じながらも、作品内ではサムだって苦悩と行き詰まりを経験しているわけで。
対症療法的な“やりくち”ではなく、紛争じたいを失くし貧困や差別や暴力を根絶するための方法はないのかという原則論にも考えを巡らすよう、観る者を誘導する気配がある。
どちらにしても、「トラは見た?」と無邪気に尋ねるペイジのようなアフリカへの無関心(ひいては自分が見えているもの以外への無関心)を諌め、観る者に“考え、行動へ移すキッカケ”を与える役割を担うべく作られた映画であることは確かだろう。
無軌道だったサムが神や信仰心に走る部分は、彼自身の“考え、行動へ移すキッカケ”としては、ストーリー的/描写的にちょっと弱い。が、ここはどう描いても、もともと地域や文化や価値観に違いがある非キリスト教信者(またはサム以外の人)に対する説得力など生まれまい。個々が自分なりのキッカケを見つければ、それでいい。
映画的にいっても、より重要なのはサムが“神の不在”を感じる部分だろう。無力感、責任感、価値観の違い、自分にできること、正義。それらをミックスさせて、たとえ回答は得られないとしても行動にはつなげられる。そんなサムの、ある種のたくましさ。
ただの直情的マッチョというイメージの強いジェラルド・バトラーが、ここではそのイメージをしっかりとサムに投影させていて適役だ。
そして「笑顔が嬉しい」というデンのセリフ。もちろん、その言葉を裏づけるような画面。何を信じていようが、この、子どもたちの笑顔は無条件で守られるべきものであるはずだ。
こうしたことを考えさせるために、監督が、慣れ親しんだスタッフとともに実直に撮った映画だと思う。
●主なスタッフ
撮影/ロベルト・シェイファー『007/慰めの報酬』
編集/マット・チェシー『君のためなら千回でも』
美術/フィリップ・メッシーナ『ハンガー・ゲーム』
衣装/フランク・L・フレミング『恋とニュースのつくり方』
音楽/アッシュ&スペンサー『ステイ』
音響/グレゴリー・キング&ダーレン・キング『バトルシップ』
SFX/コーデール・マックイーン『インビクタス』
SFX/ラッセル・ティレル『顔のないスパイ』
スタント/ダン・レミュー『ウィッチマウンテン』
スタント/アダム・ホートン『ダークナイト ライジング』
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