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2015/04/07

ジュピター

監督:ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
出演:ミラ・クニス/チャニング・テイタム/ショーン・ビーン/エディ・レッドメイン/ダグラス・ブース/タペンス・ミドルトン/ニッキ・アムカ=バード/ラモン・ティカラム/デイヴィッド・アヤラ/ググ・ムバサ=ロウ/エドワード・ホッグ/ティム・ピゴット=スミス/ジェームズ・ダーシー/ジェレミー・スウィフト/ペ・ドゥナ

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4

【あらすじ……地球の命運を握るのは、彼女】
 強盗に父親を殺されて以来、誰も信じなくなったロシア生まれのジュピター。いまは親戚とアメリカへ移り住み、貧しい暮らしを続けている。そんな彼女に忍び寄る、いくつもの影。それは、宇宙の経済を牛耳り、さらに地球がもたらす大きな利権をもわが物にせんとするアブラサクス家の3きょうだいが送り込んだ刺客たちだった。人間と狼を合成して生まれた戦士ケインに助けられたジュピターは、自分が狙われる理由と対峙することとなる。
(2015年 アメリカ/イギリス)

★ややネタバレを含みます★

【内容について……ワクワクはあるが、詰めの甘さと尻すぼみ感も】
 ウォシャウスキーさんたち、自分たちが面白いと感じるモノを好き勝手に作るのはいつものこと。それが観る側に届くかどうか、ズレているのか大丈夫なのか。作品によって感想・印象の振り幅は大きい。
 まぁハッキリいって、今回は『スピード・レーサー』に続く“やっちゃったほう”といえるわけで。

 いや、前半はすこぶる面白い。自らの宿命を知った主人公が、多くの謎や敵・味方と対峙するという定型のストーリーながら、スピーディかつ迫力たっぷりに引っ張っていく。反重力ブーツをはじめとするガジェットの数々や多彩なエイリアンの登場は「これからどんなアクションでワクワクさせてくれるんだろう」と感じさせる。

 ドゥナちゃんの奇抜ないでたちは、明らかに日本のアニメを模倣したものだろう。表情パーツの後ろがむき出しになっているアンドロイドは『アイ,ロボット』あたりか。『スター・ウォーズ』のニオイもするし、設定的にもヴィジュアル的にももっとも影響を受けているのは『デューン/砂の惑星』かも知れない。
 つまりは各種スペースオペラやSFの遺伝子を真っ当に受け継いだ雰囲気を漂わせながら、同時にさまざまなカルチャーを貪欲に取り込んでいる。この監督作品のテーマである“命の意味、人のおこないの永遠性”という哲学を上手くエンターテインメントの中に落とし込もうとする努力も見られる。ゴッタ煮といえる世界観。それもまた楽しい。

 が、女王就任の手続きから始まるオチャラケを機にトーンダウン。意外と展開が広がらず、尻すぼみになっていく。
 たとえばバレム、タイタス、カリークの3きょうだいがジュピターを懐柔したり脅したりする“やり口”の違いが際立っておらず、ジュピターの葛藤が“通りいっぺん”になってしまっている。

 そのジュピター、たいしたことを何もしない。巻き込まれてキャーキャーいいながら都合よく生き残る。番人エイリアンやドラゴン型エイリアンが彼女の視線に射すくめられて動けない、という描写のひとつでもあれば、転生女王としての神秘性も出ただろうに。
 何もしないならしないで、だったらミラ・クニスじゃないはず。

 悪党どものオツムが決定的に悪い、というのもシラケの要因。あれだけ科学が発達しているのだから、いくらでもジュピターを殺すチャンスはあったんじゃないか。設定とストーリーの結合にツメの甘さが残る。
 ケインとスティンガーの関係、3きょうだいの確執などスピンオフは作れそうだけれど、本作内に限っていえばサラリとしすぎていて、話を膨らませる寄り道が少ない。

 放り込みたいモノは躊躇せず放り込むけれど、難しいところへは踏み込まずにデートムービーとして機能するスペースオペラを作ろうとした。そんな仕上がり。この姉弟に求められているのはそこじゃないんだよなぁ。

【作りについて……雰囲気はいいけれど】
 VFXは、さすがのレベル。可変オーニソプター的な戦闘機などガジェット類のデザインワークも上質。スピードと迫力を創出する撮影・編集、スケール感たっぷりの音楽も素晴らしい。
 芝居の幅の広さを見せるエディ・レッドメインが頼もしく、ドゥナちゃんとググちゃんが出ているだけで個人的には幸せだったりする。

 ただ、序盤で期待したほどにはアクションのバリエーションは多くない。

●主なスタッフ

脚本/ザ・ウォシャウスキーズ
撮影/ジョン・トール
編集/アレクサンダー・バーナー
美術/ヒュー・ベイトアップ
衣装/キム・バレット 以上『クラウド アトラス』
ヘアメイク/ジェレミー・ウッドヘッド
ヘアメイク/パウラ・プライス 以上『スノーピアサー』
ヘアメイク/レスリー・スミス『ゼロ・ダーク・サーティ』
特殊メイク/ホセ・モラ=ペレス『タイタンの逆襲』
音楽/マイケル・ジアッキノ『イントゥ・ダークネス』
音響/デイン・A・デイヴィス
VFX/ジョン・ゲイター 以上『スピード・レーサー』
SFX/ジャリラ・オトキー
スタント/ベン・クーク 以上『フューリー』
SFX/ドン・パーソンズ『パブリック・エネミーズ』
スタント/デイヴィッド・リーシュ『メカニック』
スタント/R・A・ロンデール『コンテイジョン』

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