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2015/07/13

007 スカイフォール

監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ/ジュディ・デンチ/ハビエル・バルデム/レイフ・ファインズ/ナオミ・ハリス/ベレニス・マーロウ/ベン・ウィショー/ロリー・キニア/オーラ・ラパス/ヘレン・マックロリー/アルバート・フィニー

30点満点中16点=監3/話2/出3/芸4/技4

【復讐劇に立ち向かう007】
 トルコでの任務に失敗したMI6のチーム。欧州各地に潜伏する工作員の情報が詰まったハードディスクドライブは奪い去られ、007ことジェームズ・ボンドは川へと落下、死亡したものとされる。さらにMI6本部を爆破され、工作員の身元もリークされて、MI6の責任者Mは追い詰められていく。現場に復帰したボンドは手がかりを追って上海へ飛び、事件の首謀者との接触に成功。それは、Mに裏切られた元MI6のシルヴァだった。
(2012年 イギリス/アメリカ)

★ややネタバレを含みます★

【迫力はあるが浅い】
 アクションの迫力は、なかなかのもの。とりわけトルコの市場を舞台とするファースト・シークエンスは、カメラの数、カットの数、ドカドカと潰される露店にクルマ、スピーディな編集と、お金も時間もかけて丁寧に作られていて一気に作品へと引き込んでくれる。

 アストンマーチンの登場カットを「パーパンっ」と金管で彩るなど、アクション以外も小気味良く軽快。音楽がいい具合にスリルを盛り立てる。
 中盤に登場する廃墟は軍艦島らしい。ほかにも怪しげなアジアや地下基地など全体に舞台/ロケーションはバリエーションとインパクトに富み、終盤ではフルスケールで建てられたボンドの生家を惜しげもなくぶっ飛ばす。衣装のスタイリッシュさも楽しい。

 と、周辺パーツや手堅いまとめについては褒められるのだが、シナリオ/スト-リー展開のマズさと、底辺にあるべき“007らしさ”の欠如がなんとも口惜しい。

 おなじみ「極秘情報が記録されたハードドライブ」という安直なアイテムで幕を開け、走る列車の上にチェーンが転がっていたり、仲間ごと狙撃してみたりと無理くりな突き進みかた。
 掌紋認識システム採用の銃は簡単に奪われ、お約束のように役目を果たしたと思えば、そこで終わり。ボンドガールはアッサリと死亡、それを見たボンドの反応もアッサリ。セキュリティなんぞ無視して敵のPCにアクセスするわ、腕が鈍っていたはずのボンドは前触れなく復活するわで、あちこちに説得力不足の描写が見られる。

 CIAからの情報で簡単に逃亡犯が見つかるのは「すべてはシルヴァによる罠。誘い込まれるボンド」と解釈できるけれど、そこに漂っているべき危険な香りはなく、MI6側としては当然抱くはずの疑いもなく、ズルズルと事態が転がっていく。
 だいたい、天才的なハッキングで始まり、かなりの物量と人員も投入していると思わせるシルヴァの復讐劇が、あれれと思う間に雑な計画から田舎の肉弾戦へと突入していくあたり、頭が悪い

 新生ボンドシリーズの、1つのターニングポイントとして作られていることは理解できる。だからこそなおさら、このテーマであれば本来ならミッチリと描かれるべき「使い捨ての駒としての“情”」が希薄なのは大きなマイナスポイントだ。
 なっちゃん超約がいつもよりマシだっただけに、物語の浅さが気になってしまう。

 あと、「嵐が来る」ってのは『ダークナイト』? まさか『ターミネーター』ではないわな。鏡を使ったトリックは『F/X』だし、クライマックスのヘリは『地獄の黙示録』だしで、妙な引用も邪魔に感じる。
 メンデスは『お家(うち)をさがそう』とか『ロード・トゥ・パーディション』とか大好きなんだけれど、今回は持ち上げられないデキである。

●主なスタッフ
脚本/ニール・パーヴィス『007/慰めの報酬』
脚本/ロバート・ウェイド『007/カジノ・ロワイヤル』
脚本/ジョン・ローガン『ヒューゴの不思議な発明』
撮影/ロジャー・ディーキンス『TIME/タイム』
編集/スチュアート・ベアード『グリーン・ランタン』
二班監督/アレクサンダー・ウィット『バイオハザードII アポカリプス』
美術/デニス・ガスナー『ジャーヘッド』
衣装/ジェイニー・ティーマイム『タイタンの逆襲』
音楽/トーマス・ニューマン『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』
音響/ペール・ホールバーグ『ウルフマン』
音響/カレン・ベイカー・ランダース『アイ・アム・ナンバー4』
SFX/クリス・コーボールド『ダークナイト ライジング』
VFX/スティーヴ・ベッグ『アンノウン』
スタント/ゲイリー・パウエル『アンストッパブル』
格闘/ニコラ・バーウィック『クリスタル・スカル』

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