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2015/07/02

トゥモローランド

監督:ブラッド・バード
出演:ジョージ・クルーニー/ブリット・ロバートソン/ラフィー・キャシディ/トーマス・ロビンソン/ティム・マッグロウ/キャスリン・ハーン/キーガン=マイケル・キー/クリス・バウアー/ピアース・ガニォン/マシュー・マッコール/ヒュー・ローリー

30点満点中19点=監4/話3/出4/芸4/技4

【あらすじ……人類の未来は、その手に託される】
 NY万博の発明コンテストに自作ジェットパックを持ち込んだフランク・ウォーカーは、謎の少女アテナに誘われるまま見知らぬ空間へと足を踏み入れる。いっぽうNASAのロケット発射台解体を妨害しようと試みるケイシー・ニュートンは、触ると目の前に不思議な景色が広がるバッジを入手。ふたりが観たのは、超高層ビル、ロボット、空飛ぶ鉄道など未知の科学がひしめく世界だった。ここはどこ? 彼らが選ばれた理由とは?
(2015年 アメリカ/スペイン)

★ネタバレを含みます★

【内容について……どちらの狼に餌をやる?】
 核の危機、地球温暖化、戦争などの政治的混乱……。ケイシーはとても大切なことをクラスで学んでいるけれど、それを教え伝える側には熱意などない。「こんなことを学んだって、君たちは聴く耳を持たないし、知ったところでどうしようもない」と諦めている。
 絶望という名の狼と、希望に光る狼。戦えば、どちらが勝つのか? その問いに対する回答を、教師らは用意していないどころか考えたくもないと耳をふさぎ目を閉じているのだ。

 でも、この映画の作り手の中には「諦めたくない」という想いが渦巻いている。宇宙開発やスーパーコンピュータなど、ともすれば科学は金食い虫と揶揄されたり悪者にされたりもするけれど、それでも、かつて子どもだった頃に夢見た輝かしい未来はきっと実現可能であり、ならば、そこへと向かうための歩みを止めてはならないと突っ走る。
 辿り着きたい場所がある。だから僕らは向かう。躊躇も邪魔も、諦めに負けそうな心もグっと押し退けて戦おうとする。

 偶然ながら本作の鑑賞前、チケット発券機の用紙切れが発生。劇場スタッフが機械を開けて補充するのを見る機会に恵まれた。
 もうそれだけでオトコのコはワクワクしちゃうんだよね。“見知らぬテクノロジーやシステムに対する好奇心”が、きっと男性のDNAの中には埋め込まれている。科学は人類の幸福のために必要である、とか、難しく考えるよりもっとシンプルな次元での欲求=ワクワクを止めることなんて、できやしないんである。

 いっぽうケイシーの楽観的な信念と、そのオプティミズムをただの能天気で終わらせないための行動力は、オンナのコならではのものだろうか。
 星々が大好きな幼きケイシーは、パパからこう訊ねられる。
 What if nothing is there?
 対する答えは「What if everything's there?」だ。ひょっとすると、この楽観的な信念=道の先にあるものに期待するワクワク感こそが、人類を前へ前へと推し進めてきたのかも知れない。

 こうしたモチベーションはどんな人の中にも潜んでいると訴えるのがラストシーン。登場するのは、ごくごく普通の人々である。
 普通の人らしく仕事と日々の暮らしに追われ、疲れ、ほとんどギブアップと口にしそうにも見える。だとしても、どこかに「まだまだ諦めたくない」という想いが眠っているのなら、「進んでいる道の先にいろんなハッピーが待っているかも知れない」と少しでも信じられるのなら、OK、僕らにはまだ資格がある。歩みを止めないためのパワーが残されている。誰もがプルス・ウルトラになれる。
 ペシミストやシニシストに嗤われたとしても、何か熱く語れるワクワクが心の中にあるなら、その人の生は、過去も現在も未来も全肯定されるべきというメッセージが、とても嬉しい。

 2015年。予定通りなら、もう鉄腕アトムは飛んでいて、ロボコップが実用化され、マーティがホバーボードで追いかけっこしている頃だ。ああ、超磁力兵器に大地を焼かれたりセカンドインパクトが起こったりしていた可能性もあるのか。『ブレードランナー』は2019年が舞台、もう間もなくじゃん。

 まぁ多少の遅れは、よし。それと、ディストピアよりユートピアを信じることにしよう。

 There are two wolves who are always fighting.
 One is darkness and despair. The other is light and hope.
 The question is……, which wolf wins?

 答えは「The one you feed.」。どちらの狼に餌をやるべきなのか、考えるまでもなく、決まっている。

【作りについて……スピード感と飛翔感】
 実は「俺、肯定されてる」と涙腺が決壊したラストよりもっと早くにウルウルっと来たのが、少年フランクの落下シーン。慌ててジェットパックを背負って噴射、地面スレスレで浮遊、そのまま着地するかと思いきや、次の瞬間にブゥオっと飛翔。
 鮮やかさに鳥肌が立ち、信じる先に夢の実現があるということを一気に納得させる手際に涙が出た。

 この場面のワクワク感を、以降、主人公3人に終始まとわせたのが素晴らしい。もともとブラッド・バード監督は「スピード感を削がない演出」が持ち味だけれど、さらに今回は“飛ぶ”ことに意味を持たせながら視覚的にも見事に表現する、という技法において、ジョー・ジョンストンの後継に達した印象もある。

 ケイシ―役のブリット・ロバートソンは、正直美形じゃないものの、ヒラリー・スワンクを思わせる“意志の確かさ”が表情や立ち姿から滲み出ていて上々。ラフィー・キャシディは、凛とした姿勢、憂いといたずらっぽさと情熱とが混在する視線で、アテナという役柄を好演する。
 トーマス・ロビンソン君は「たしかに成長したらジョージ・クルーニーみたいになりそうだな」と感じさせて適役。ピアース・ガニォン君は『エクスタント』のイーサンと比べてちゃんと“生身の人間”している。
 こうした若き才能は、本作の大きな見どころ。ジョージ兄貴とヒュー・ローリーが、彼女らを見守るように堂々と、かつ優しく激しくお芝居しているのが微笑ましい。

 2体のAAが“選ばれし者”をおびき寄せるために開いているトイショップが秀逸。ロビーがいる、R2がいる、アイアン・ジャイアントもいるし地球は静止しちゃう。オタクなら間違いなく行ってみたいと感じる店だ。
 このショップに加え、ワクワク感半端ないトゥモローランドの造形など美術の仕事は一級品。衣装も、トゥモローランドで暮らす人たちは「万博の延長」というイメージで統一され、主役3人はそのキャラクターを生き生きと伝える格好で、なかなかいい。

 追ってくるAAたちは、笑みが固定された表情。アテナ型から間違った方向にブラッシュアップされた、という細かな裏設定が読み取れて、そういう遊び心も楽しい作品だ。

●主なスタッフ
脚本/ブラッド・バード『レミーのおいしいレストラン』
脚本/デイモン・リンデロフ『ワールド・ウォー Z』
撮影/クラウディオ・ミランダ
音響/グウェンドリン・イエーツ・ホイットル
スタント/ロバート・アロンゾ 以上『オブリビオン』
編集/ウォルター・マーチ『ウルフマン』
編集/クレイグ・ウッド『P.О.C/ワールド・エンド』
美術/スコット・チャンブリス『イントゥ・ダークネス』
美術/ドン・マッコーリー『エリジウム』
衣装/ジェフリー・カーランド『インセプション』
ヘアメイク/アンネ・キャロル
ヘアメイク/モニカ・フッパート 以上『ゴースト・プロトコル』
音楽/マイケル・ジアッキノ『ジュピター』
音響/クリステン・メイト『戦火の馬』
SFX/マイク・ヴェジーナ『特攻野郎Aチーム』
VFX/クレイグ・ハマック『バトルシップ』
VFX/ジョン・ノール
VFX/エディ・パスカレーロ 以上『パシフィック・リム』

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