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2015/09/24

EVA〈エヴァ〉

監督:キケ・マイーヨ
出演:ダニエル・ブリュール/マルタ・エトゥラ/アルベルト・アンマン/アン・キャノヴァス/ルイス・オマール/クラウディア・ベガ

30点満点中17点=監3/話3/出4/芸3/技4

【あの人の面影を宿す彼女】
 故郷の大学へ呼び戻されたアレックス。10年前、兄のダヴィドや想い人ラナとともに自律型ロボットを研究していた彼は、あることがキッカケでこの地を離れたのだった。完成が間近となった自律型ロボットの情動プログラム開発を恩師フリアから託されたアレックスは、そのモデルとして、感性豊かでユニークな価値観を持つ少女エヴァを選ぶ。だがエヴァは、いまや夫婦となったダヴィドとラナの娘。複雑な想いを抱きながらアレックスは……。
(2011年 スペイン)

★ネタバレを含みます★

【もっと掘り下げれば魅力は高まったのに】
 かなり早い段階で“ネタ”は読めてしまうため、短編向けの内容ではあるだろう。が、そこを頑張って90分、しっかりまとめた点は評価できる。

 アレックスの生家の周囲に小さな十字架がいくつかあって、これは幼い頃に飼っていたペットのものだろうか。いまもネコ型ロボットを大切にしている様子や、人懐っこい支援ロボットのマックスに対して「その感情レベルには慣れていない。落としてくれ」と頼む姿からも、アレックスが、他人(人間)とのコミュニケーションを苦手としていることがうかがえる。
 だからラナの心も受け入れられなかったのだな、彼女に惚れている兄への遠慮もあって身を引いたのだな……。

 物語の背景や登場人物の感情をほとんど説明することなく、匂わせて読み取らせる雰囲気作りは上々だ。監督にとっての長編デビュー作らしいが、確かなセンスを感じさせる。

 ロボットや空間に浮かぶプログラミングなどCGは画面によく馴染み、鮮やかに蘇るS・I・8(といっていいのだろう)の虹彩はクール。掌紋認証型セキュリティ、ホログラフ、ディスプレイの表示、ロボットのエネルギーシステムなど、ガジェット/近未来デザインの出来も素晴らしい。
 雪に閉ざされた地のロケーションは切なさを助長し、ノイズから静寂へと移る場面は、その効果と、終焉の到来を予感させる侘しさとが上手く一体化した名シーンだろう。

 と、心に訴えかける部分も多々あるのだが、まだまだ要素が不足している印象もある。アレックス、ラナ、ダヴィド、エヴァの“想い”を物語る描写やエピソードが、コンパクトかつ平板にすぎる、1つで何もかもを感じ取ってもらおうとしすぎ、といったところだろうか。
 とりわけ、ロボットという言葉に対して「自由」を連想し、ラナやその娘のエヴァに複雑な感情を抱くアレックス、そんな彼の悔恨や情念は、もっと積み重ねるようにして描き、作り手が作品(ロボットの感情プログラム)に与える影響を丁寧に盛り込んでほしかったところ。

 現状でもエヴァのキャラクター設定は絶品だと思う。あの不可思議な、大人の男がどう逆立ちしたって近寄れない悪魔性とイノセンスは、演じたクラウディア・ベガ(近年ではシアーシャ・ローナンやクロエ・グレース・モレッツなどに次ぐ衝撃度を与える存在感だ)の芝居&ヴィジュアルともあいまって、本作最大の魅力となりえている。

 が、彼女にしても、他の子どもとの対比はもっと盛り込んでほしかったと思うし、“どこかラナに似ているけれど、さらに進んだ価値観”の持ち主であることを鮮烈に感じさせて然るべきだったろう。

 テーマも描写の雰囲気も出演陣の演技やヴィジュアルもいいだけに、アレックスやラナやエヴァの深い哀しみへの寄り添い、掘り下げがやや不足で、「それだけの話」になってしまっていることが惜しい。

●主なスタッフ
編集/エレーナ・ルイス『永遠のこどもたち』
SFX/レイエス・アバデス『パンズ・ラビリンス』
VFX/ヨルディ・コスタ『マシニスト』

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