カンヌ国際映画祭受賞ショート特選
WOWWOWにて放送された、短編映画のカンヌ出品作・受賞作特集。製作国もさまざまな6本。ちょっと期待ハズレ。まぁそもそも体質的にカンヌで選ばれるものは自分にあわないのかも知れない。
30点満点中平均15点=監3/話2/出3.5/芸3.5/技3
■■アイロン(2006年 日本)
監督:中野裕之
出演:家住勝彦
安アパートで黙々とアイロンをかけ続ける男。坊主頭で背中には力士の入れ墨。白いものを見るとアイロンで伸ばしたくて仕方がないと彼はいう。
畳のアップにヤクザという純日本的なものを、モノクロで捉え、オケや現代音楽やジャズを乗っけて独特の世界を作り出す。いってみればそれだけ。
安アパートや昭和と思しき世界の造形、シャープな画質などはいい。役者は元ボクサーの人なのかな。彼の見た目と声質・芝居のギャップは、作品全体のテーマともつながっているのか。
長編の中に挿入される1エピソードならすごく面白いと思うが。14点。
■■頭のない男(2003年 フランス/アルゼンチン)
監督:フアン・ソラナス
頭のない男は、憧れの女性をダンスパーティーに誘うことを決意する。生まれて初めて頭を買いに店を訪れた彼だったが……。
冒頭からのヴィジュアル・イメージは大友克洋の『大砲の街』を想起させる。影響を受けていても不思議じゃない。その美術、色調、VFXで、奇妙な世界を上手く作り出しているし、主人公の行動や心情を“恋の始まりにおける怯え”の現れだと捉えれば、スっと心に馴染む。17点。
この監督が撮った『アップサイドダウン 重力の恋人』も楽しみ。
■■華麗なる晩餐(2008年 カナダ)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
丸焼きに内臓にソーセージ。肉料理を黙々と、ガツガツと食べ続ける上流社会のゲストたち。だが一瞬の後……。
ここまでの3本、耳に鋭い音楽でキャッチーに始めている。それがショートにおける1つの定番手法なんだろうな。限られた時間空間の密度を高めて一気にお届けします、みたいな。
で、クローズアップに引きの絵、フロアごとに異なるパターンと、豊富なバリエーションによっても濃度を上げてみせる本作。コントなんだけれど、人間の欲とその末路をコンパクトに示していて悪くない。17点。
■■ベリック(2010年 ロシア/デンマーク)
監督:ダニエル・ジョゼフ・ボーグマン
出演:ベリック・シスディコウ/アブディ・イスカコフ
異形の頭のまま成長したベリックと、友達からなかば除け者にされている少年アディル。アディルが遊んでいたサッカーボールをベリックが自室に持ち帰ってしまい……。
一応はベリックという存在を周知させる役割を持つ作品であるはずだが、それ以上のもの、薄い中に世界の縮図が描かれている映画だとも感じる。でも題材的には長編向きかも知れない。14点。
■■メガトロン(2008年 ルーマニア)
監督:マリアン・クリザン
出演:ガブリエラ・クリス/マキシム・エイドリアン・ストリニュ/ダミアン・オアンセア/エルウィン・シムセンソーン
8歳の誕生日を迎えた少年が、外食のため母親とともに街へ出る。離れて暮らす父親は来てくれるだろうか。あのオモチャはあるだろうか。
親子が食べに行く様子を、1カットを長めに切り取ってそのまんま見せるような作風。音も“その場”風。なんかメイン音声とサラウンドが逆転しているように聴こえる。マクドがスペシャルという文化・価値観の世界は興味深いが、どこにでもあるような光景を捉えただけに思える。13点。
■■インタビュー(1998年 フランス)
監督:グザヴィエ・ジャノリ
出演:マチュー・アマルリック/ジャン=マリー・ウィンリング
伝説の女優エヴァ・ガードナー。マスコミ嫌いで知られる彼女にインタビューできることとなった記者は勇んでロンドンへ赴くが……。
それだけ、の話なんだけれど、マチュー・アマルリックのキッパリした芝居が素敵で嫌いじゃない。16点。
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