宇宙人王さんとの遭遇
監督:アントニオ・マネッティ/マルコ・マネッティ
出演:フランチェスカ・クティカ/エンニオ・ファンタスティキーニ/ジュリエット・エセイ・ジョセフ/アントネッロ・モローニ/リ・ヨン/ジャデル・ジラルディ/ロドルフォ・バルディーニ/フリオ・フェラーリ/アンジェロ・ニコトラ/マッシモ・トリジャーニ
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【中国語を話す宇宙人を前に】
ローマで暮らす翻訳家のガイアは、急な仕事の依頼を受ける。「国家の機密に関わる内容」と語るキュルティ局長に連れて行かれたのは、殺風景な尋問室。そこで待っていたのは椅子に縛られたイカ似の宇宙人=王(ワン)さん。「この星でもっとも多くの人が喋っているから中国語を学んだ」という王さんは文化交流のため地球を訪れたと繰り返すが、キュルティは信用しない。そのやり口にガイアは怒りを感じ、王さんに同情するのだった。
(2011年 イタリア)
【相互理解への高い壁、深い溝】
異文化交流の難しさを、トンデモ設定でやり切ってしまった怪作。
いやトンデモといっても、「この星でもっとも多くの人が喋っているから中国語を学んだ」っていうのは、ある意味納得。いっぽうで、中国語なんか地方によって丸っきり違うはずだよね、とか、電波を傍受してマスターする言語を決めたんなら英語かスペイン語あたりにしろよ、だいたいアンタらイタリアに来てるんだからイタリア語だろ、とか思ったり。
たぶん何人かで役割分担していて、たまたま王さんが中国語担当だったのかも。まずローマに来たのも、たとえば地球におけるキリスト教の社会的な役割とか人類史を理解したうえでのことなのかな。そういえばジョー・ダンテの『エクスプローラーズ』って宇宙人がテレビやラジオの電波を傍受して英語を学んだんだっけ。
そんな、裏設定とか過去の映画に思いを馳せたりして。
音楽での雰囲気作りが大きな特徴。ガイアが出かける際の服を選ぶ場面にオドロオドロな曲を乗っけたりして(というか全編に渡って低く不気味に響くサントラだ)、ああ、音楽によってずいぶんとシーンの印象は変わってくるんだよなと、あらためて認識させられる。
尋問室の殺風景かつ「以前からありました」感もいいし、王さんの造形やCGも頑張っている。
ガイア役フランチェスカ・クティカの、それなりに美しく、それなりにインテリジェンスがあり、個人で仕事をしているっぽい空気の醸し出しかたも上々だ。
全体に、低予算で小っちゃい作品ながら、コンパクトかつ丁寧に、最初から最後までヒリヒリグイグイと引っ張っていく、いい仕上がりだと思う。
ま、予想の範囲内だけれど。
にしても、まぁ無理だよね。宇宙人とイタリア人が中国語で会話しようと思ったって。
だいたい、ガイアが歯磨きする場面でわれわれ日本人は「蛇口に口を近づけて水をすする」っていう姿に驚く(彼女だけのクセかも知れないが)。1から4まで数えるキュルティの指の形(出川の哲っちゃん流に近い)にアレレと思う。三国同盟の間柄ですら、こっちとあっちの間には「?」が横たわっているんだもんな。
で、耳が確かなら「日本のアニメみたい」というセリフの部分、原語では「マジンガー」といっているように聴こえた(あちらでは大人気らしいからありうる)。イタリア、中国、日本と、歴史の古い国家・文化ばかりフィーチャーしているあたりに、本作を読み解くカギがあるのかも。
それだけ歴史のある国どうしでも(あるいは長い歴史と独自文化を持つ国どうしだからこそ)、たがいの流儀の違いに驚くばかりの世界だよね、みたいな。
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