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2015/12/23

スター・ウォーズ エピソードVII フォースの覚醒

監督:J・J・エイブラムス
出演:デイジー・リドリー/ジョン・ボイエガ/アダム・ドライバー/オスカー・アイザック/ルピタ・ニョンゴ/アンディ・サーキス/ドーナル・グリーソン/グウェンドリン・クリスティー/マックス・フォン・シドー/サイモン・ペッグ/ハリソン・フォード/キャリー・フィッシャー/アンソニー・ダニエルズ/ケニー・ベイカー/ピーター・メイヒュー/マーク・ハミル

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【あらすじ……新たな伝説の始まり】
 砂漠の惑星ジャク―。廃品回収を生業として暮らす少女レイは、姿を消した“最後のジェダイ”=ルーク・スカイウォーカーの居場所を知るドロイドBB-8を拾う。BB-8を追うのは、帝国の残党による新組織ファーストオーダーと、その指揮官でフォースを持つカイロ・レン。ファーストオーダーを裏切ったトルーパーFN-2187ことフィンはレイと合流して宇宙へ脱出、ファーストオーダーに抵抗するレジスタンスの基地を目指す。
(2015年 アメリカ)

【内容について……期待に満ちた序章、と捉えたい】
 オリジナル(エピソードIV~VI)とプリクエル(エピソードI~III)を観終えた時点で「絶対に作られるべき」との想いを強くした完結編3部作が、ようやくのスタートとなった。

 新キャラクター(ヒロイン)の登場、ハン・ソロとレイアの再会、共和国の実質的崩壊、衝撃的な死、レイとルークの邂逅など重要な出来事は描かれるものの、展開としてあまり進まない印象。過去6作は時代劇に西部劇に戦争映画に海賊映画と、さまざまなカテゴリーの面白さをハイブリッドしてみせたが、今回はかなりシンプルだなぁという心証も残す。アクションのバリエーションも意外と少ない。
 新機軸といえばダークサイドに堕ちたカイロ・レンが光(善)に心を許してしまいそうになると悩むところ(アナキンが「闇に堕ちそうだ」と悩むのとは真逆で、これはジェダイの描写としてはなかなか新鮮だ)くらい。
 全体に、大人しすぎると感じてしまうほどだ。

 シリーズ初見の人がどう思うかはわからないが、『スター・ウォーズ』サーガにどっぷりハマっている人が「期待外れだ」と感じたとしても、無理のない話だと思う。プリクエル3部作の高密度に比べると、はっきりと薄いのだ。

 が、にもかかわらず楽しいんである。

 まずは『スター・ウォーズ』の、サーガとしての完成度の高さというか、40年近くの時間を使って築き上げてきた世界の質量の大きさを再認識。
 もう冒頭の「バンっ」て音だけで自分の中の期待感メーターがブーンと振れていくのがわかるし、ハン・ソロの登場でいっそうワクワクはアップ。ご丁寧に砂漠、森林、氷、デススター、親子が対峙する場面の背景として用意される機械の穴など、過去作の象徴的ヴィジュアル・イメージがリフレインされて、観客は否応なしに“スター・ウォーズ銀河”へと引っ張り込まれることになる(だから、前6作は観ておいたほうがいい)。

 また「1つのエピソードが過去と未来をつなぐ。誰かの存在が別の誰かの生涯に影響をおよぼす。そんなダイナミズムを味わえる」という当シリーズの大きな魅力が、依然として健在。
 とりわけ痛感させられるのが、ベイダー卿の偉大さだ。「生きたダース・ベイダーが登場しない作品」はシリーズ初となるわけだが、それでもその存在感は強烈で、今回の3部作にも“彼”は色濃く影を落とすことになりそうな気配。さすがは100 Villainsの第3位である(だから、前6作は観ておいたほうがいい)。

 そういう観点で考えると、前述の“薄さ”も「3作トータルで観客を満足させればいい」という開き直りに思えてくる。
 スノークの正体、レイの生い立ち、カイロ・レンの心理、ジェダイの現状などバッサリ省略された要素も多く、C-3POとR2-D2のコンビはほとんど見せ場なし……。そんな、本作の中途半端さも、すでに確固たる地位を確立し文化の域にまで達した『スター・ウォーズ』シリーズの、7番目の物語、最終3部作の序章、という立ち位置であることを存分に利用した「まだまだ。これからですから」的なパッケージじゃないだろうか、と感じるのである。

 思えばプリクエル・トリロジーでは、ダース・ベイダー誕生という結末を誰もが知っていた(それでいてあれだけの面白さを実現したことが、あらためて凄いと思う)。対して今回は、どこへ向かうのか、未知のトリロジー。その“未知”に対する期待は、十分に煽ってくれる映画だと思う。

 一応、今後の予測的なものを。
 『スター・ウォーズ』シリーズは、星間戦争を描いた叙事詩であると同時に「スカイウォーカー一族の盛衰と活躍」を語る英雄譚でもある。プリクエルではアナキンを通じてジェダイの限界が、オリジナルではルーク(とアナキンの関係)を通じてジェダイ新生への可能性が描かれた。ならば最終3部作では「ルークが新しい教義のもとに新時代のジェダイを育てて帝国の残党と対決、これを駆逐し、『愛こそが最大のフォース』といった価値観を確立させるストーリーとなることだろう。いや、そうでなくてはいけない」というのが、当ブログでのスタンス。

 当然キーとなるのは、レイ、カイロ・レン、フィンの成長と、彼女らが背負う血の宿命だ。たとえばアナキンやオビ・ワンは、ああいう斬られかたは絶対にしなかった。が、本作の3人の姿に覚えるのは、物足りなさよりもむしろ、発展途上の者たちだけが放つ成長への期待。光と闇の狭間で揺れながら“新しいジェダイ”像をどう作り上げていくのか。
 実際、監督J・Jは「カイロ・レンは旧三部作でのダース・ベイダーよりも未熟な存在」「レイの苗字が出ていないのは意図的なもの」といっているらしいから、大筋としてはそのあたりがテーマとなるはず。

 まぁ、答えはまだ2年4年と待たなくてはならないわけだが、その高揚感とともに「終わりの始まり」に対する寂しさもちょっぴりあって、なんとも複雑な気分。『ローグ・ワン』などスピンオフの製作もアナウンスされているので簡単には“終わり”とはならないのだろうけれど。

 ともあれ、愛と戦争と光と憎しみが織りなす壮大な空想歴史絵巻に、リアルタイムで付き合える幸運に感謝しよう。

【作りについて……らしさ満載】
 大きな空間を作り上げ、その中にカメラを持ち込んで対象物を“捉える”ような絵作りは『スター・ウォーズ』ならでは。ほぼすべてのシーン/カットで奥行きや左右の広がり、高低を表現する立体的な場面構成が見られるわけだが、それが3Dによってより効果を増している。いっぽう、おなじみのワイプがほとんどなかったのは少々残念。

 デザインワークやサントラによる世界観の構築も、十分に『スター・ウォーズ』らしさを醸し出している。CGについてはもはや“何をかいわんや”のレベルだろう。
 上述の通りアクションのバリエーションは少なめながら、ミレニアムファルコンの挙動(ジャクー脱出のくだり)は、物理法則を無視している割には妙に説得力があって好きだ。

 新ヒロイン、レイ役のデイジー・リドリーは、欧米でもアジア圏でも人気の出そうな、健やかな美形。私見では、エヴァンジェリン・リリーと雰囲気が似ているように感じる。つまりはJ・Jの趣味か。
 フィン役のジョン・ボイエガともども、たぶん芝居は下手。その点も含めて「これからどうなるんだろう」という期待を抱かせて、悪くないキャスティングだと思う。

 日本製アニメ(特にサンライズ作品)からの翻案が、まぁ偶然なんだろうけれど、やたらと目につくのも特徴。トルーパーにレッドショルダーがいるし、シス~帝国~ファーストオーダーと「名前を変えながら存続する思想・組織」はジオン~アクシズ~ネオ・ジオンを想起させる。太陽をエネルギー源として恒星系まで壊滅させる惑星兵器スターキラーには「こいつ、加粒子砲そのものじゃないか」っていいたくなった。まんまガンド・ロワなんだもんなぁ。

 ちなみに今回、MX4Dにて鑑賞。前後左右の揺れ、焦げ臭さ、ふくらはぎへの“ちょっかい”は効果的だったものの、尻と背中への突き上げは、ちょっと邪魔。映像とのシンクロも完全には練られておらず、やりすぎと感じる場面も。まだまだ完成の域には遠い技術だと感じた。アトラクションとしての完成度は、さすがにTDLの『スター・ツアーズ』やTDSの『ストームライダー』の方がウンと上だろう。

●サーガ過去作
エピソード1 ファントム・メナス
エピソード2 クローンの攻撃
エピソード3 シスの復讐
エピソード4 新たなる希望
エピソード5 帝国の逆襲
エピソード6 ジェダイの帰還
クローン・ウォーズ

●主なスタッフ
脚本/ローレンス・カスダン『帝国の逆襲』
脚本/J・J・エイブラムス『SUPER 8』
脚本/マイケル・アーント『トイ・ストーリー3』
撮影/ダニエル・ミンデル
衣装/マイケル・カプラン
編集/メアリー・ジョー・マーキー
編集/メリアン・ブランドン
音響/デイヴィッド・アコード 以上『イントゥ・ダークネス』
美術/リック・カーター
音楽/ジョン・ウィリアムズ 以上『リンカーン』
美術/ダーレン・ギルフォード『オブリビオン』
ヘアメイク/アマンダ・ナイト
ヘアメイク/リサ・トンブリン 以上『ハリポタ・シリーズ』
SFX/クリス・コーボルド『ダークナイト ライジング』
VFX/ベン・モリス『ゼロ・グラビティ』
VFX/マイケル・マルホランド『ジュピター』
スタント/ロブ・インチ『ワールド・ウォーZ』

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