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2015/12/15

気狂いピエロの決闘

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:カルロス・アレセス/アントニオ・デ・ラ・トレ/カロリーナ・バング/マヌエル・タリャフェ/アレハンドロ・テヘリア/マニュエル・テハダ/エンリケ・ビレン/ガルシア・オラヨ/サンチョ・グラシア/サンチャゴ・セグラ/フェルナンド・ギーエン・クエルボ/ファン・ヴィアダス/ホルヘ・クレメンテ/サシャ・ディベンデト

30点満点中17点=監4/話2/出3/芸4/技4

【あるピエロの過酷な生きざま】
 スペイン内戦によって大好きな父と引き離されたハビエルは、父が遺した「幸せになりたいなら運命の裏をかけ」という言葉を道しるべに、物静かながら心に熱いものを秘めた男へと成長する。やがて父や祖父と同じようにピエロとなるハビエル。笑いを振りまくピエロの相手役である“泣きピエロ”として活動を始めた彼は、美人曲芸師ナタリアと出会う。だがナタリアは、ハビエルの相方で暴力的なセルヒオと別れられない身だった。
(2010年 スペイン/フランス)

【一貫した一貫性のなさ】
 展開やストーリーの向かう先と描写の雰囲気が中盤から激変する、という評をいくつか見た気がするけれど、いやこれはもうハナっからトチ狂っているでしょ。

 1937年はアンダー、逆光、青が基調、1973年はややオーバー気味で赤みを増す、という見た目の対照性はあるものの、一貫しているのは混沌とした狂騒だ。戦争の指導者とモンスターを、聖職者と怪人を同一視するオープニングから、バイオレンスにエロにコメディ風味にホラー、戦争シーンやアクション/スタントには迫力があって、カテゴリーやジャンルにとらわれない形と流れが作られている。

 誰も本当の意味での解決を目指さず、ただただ思いつくまま支配欲と復讐心とねじ曲がった価値観と無知と無責任に操られて突っ走るストーリーもカオスなら(まぁ実際にはちゃんとストーリー的なものはあるのだが)画面から漂い出てくる空気もまたカオス。
 その一貫しないという一貫性ゆえに「なんでそうする?」的行動や展開が逆に無理なく押し迫ってくるような作品だ。

 暴虐的で支配的ではあるが、それゆえに牽引力もある者。執念深く、爆発すると何をしでかすかわからないが、ふだんは穏やかな者。その双方に色目を使って享楽と甘美と安らぎとを謳歌しようとする存在。
 で、誰も何も得られない。対抗する勢力のどちらも勝者にはなれない。上に立つ者は常に敗者。どちらに付き従おうとも犠牲者だ。
 そんな構図は、ファシズムと未熟な民主主義の激突に翻弄され、あるいは忘れたふりして時を待ち、はたまた「どっちも利用してやれ」と狡く立ち回ろうとした国民から成り立つ、スペインの歴史を揶揄するものか。知ったかぶりだけれど、たぶんそれが本作の意図だろう。

「幸せになりたいなら運命の裏をかけ」
「哀しみを知り過ぎた者は人を笑わせられない」
 それは真理かも知れないが、だからといって暴走したり好き放題やったり諦めたり押し殺したりしていては、何も生まれないんである。

●主なスタッフ
衣装/パコ・デルガド『ビューティフル』
音楽/ロケ・バニョス『マシニスト』
SFX/レイエス・アバデス『パンズ・ラビリンス』
VFX/フェラン・ピカール『トーク・トゥ・ハー』

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