96時間/リベンジ
監督:オリヴィエ・メガトン
出演:リーアム・ニーソン/マギー・グレイス/ファムケ・ヤンセン/ラデ・シェルベッジア/ルーク・グライムス/ジョン・グライス/D・B・スウィーニー/リーランド・オーサー
30点満点中18点=監4/話2/出4/芸3/技5
【妻と娘に迫る復讐鬼。男はふたたび立ち向かう】
元CIA工作員のブライアン・ミルズは、要人警護のため赴くトルコ・イスタンブールに元妻レニーや娘キムを誘う。合流した3人だったが、武装集団に襲われてブライアンとレニーは囚われの身に。彼らを拉致したのは、かつてキムを誘拐したもののブライアンに倒された犯罪グループの親兄弟たちだった。復讐心を燃やす一味に、辛くも逃げ延びたキムの助けを借りながら対抗するブライアン。妻や娘を守るべく、イスタンブールを駆け巡る。
(2012年 フランス)
【定型を真面目に丁寧にまとめました】
まぁぶっちゃけ、展開とかやってることとかは『トランスポーター』シリーズと変化ないんだが。
それどころか、娘の成長に気を揉む父親、家族の危機、復讐、アメリカ人vsイスラム圏のマフィア、執拗なカーチェイス、超プロフェッショナルと素人のコンビ……などなど、アクション映画の定型ともいえる要素ばかり。前作に「元妻もピ~ンチ」と安直に盛っただけだし。
でもね、確かに真新しさはないけれど、スマートに、丁寧に、奇をてらわず手間ひまかけて作ればそれなりに面白くなるよ、という見本にも思える。
序盤は基本的に、ブライアン側と悪党側、2軸のカットバック。緊張と緩和のリズムが生まれている。両者が邂逅してからも“あっちとこっち”を交互に描くことに徹していて、これはもうハラハラのセオリー。
カースタントはさすがの迫力で、クルマがポーンとひっくり返るだけで何カット割るんだっていうくらいの手のかけかた。
弾はケチらず壁にボコボコと穴が開き、格闘は目にもとまらぬ速さ。とにかくノンストップ、スリリングかつスピーディに突き進む。
免許を持たないキムが狭い路地を猛スピードで駆け抜けたりスピンターンを決めたり、そりゃ無理めの設定だろう。けれど「面白ければ、それでいいじゃん」という開き直りが潔くって素敵。アルバニアの犯罪集団がトルコで英語を話すフランス映画、っていう無国籍感というか無責任さも、実はアクション映画の必須要件じゃないかと感じる。下手に説得力を持たせようとあれこれ背景や人物設定をヒネっても、結局勝負は“観える迫力”で決まる、みたいな価値観である。
と、単純な構図と展開で「ひたすらなアクション」を楽しむ映画であるわけだが、21世紀型アクションのフォーマットとして定着しつつある“復讐の連鎖に対する疑問”にも踏み込んでいるあたりが誠実。
それと今回、やっぱアクションはオッサンの専売特許だな、と思い知った次第。ジェームズ・ボンドにハリー・キャラハンにジョン・マクレーン、とにかく、くたびれたオッサン(ボンドはダンディだけれど)どもが体を張って頑張る姿に、観客は一家の主の頼もしさを見出すのである。
●主なスタッフ
脚本/リュック・ベッソン『ロックアウト』
脚本/ロバート・マーク・ケイメン『ダニー・ザ・ドッグ』
撮影/ロマン・ラクールバ『コロンビアーナ』
編集/カミーユ・ドゥラマーレ『トランスポーター3』
編集/ヴァンサン・タベロン『タイタンの戦い』
衣装/オリヴィエ・ベリオ『パリより愛をこめて』
音楽/ナサニエル・メカリー『リボルバー』
音響/フレデリック・デュボア『ヒットマン』
SFX/フィリップ・ウビン『ハプニング』
スタント/アレイン・フィグラーツ『バビロンA.D.』
スタント/ミシェル・ジュリエン『アイアンマン2』
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