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2016/04/15

セクレタリアト/奇跡のサラブレッド

監督:ランドール・ウォレス
出演:ダイアン・レイン/ジョン・マルコヴィッチ/ディラン・ウォルシュ/マーゴ・マーティンデイル/ネルサン・エリス/オットー・ソーワース/ディラン・ベイカー/ジェームズ・クロムウェル/フレッド・ダルトン・トンプソン/ドリュー・ロイ/ネスター・セラーノ/AJ・ミシャルカ/カリッサ・カポビアンコ/ショーン・マイケル・カニンガム/ヤコブ・ローデス/ケヴィン・コノリー/エリック・ラング/スコット・グレン

30点満点中18点=監3/話4/出4/芸4/技3

【燃えるような赤毛の馬にすべてを託して】
 優しい夫と4人の子供らに囲まれて暮らす平凡な主婦ペニー。母が逝き、父も弱り始めた彼女に遺された生家は赤字経営の牧場だった。唯一の頼みの綱は、ボールドルーラーの産駒。やがて仔馬はセクレタリアトと名づけられデビューする。距離不安が囁かれる中、愛馬の活躍を信じるペニーは、夫や兄の制止も聞かず、「自分のレースをしろ」という父の言葉を胸に、調教師ルシアンや厩務員エディらとともに、自らの道を突き進むのだった。
(2010年 アメリカ)

【意外といいが、看過できない点も】
 コイントスやビッグレッドなど現在の日本競馬にまでつながる逸話が出てきて、ハンコック親子やピンカイも登場。フィップス氏が「うちの会計士より遅い」と嘆いた馬の親Hasty Mateldaは、その子孫としてタイキシャーロックなんかが出ている。あと、セクレタリアトのシンジケートには善哉さんも参加してたとか。それにもちろんヒシマサルね。
 競馬ファンにとって、マストとはいえないまでも、いろいろ面白い要素が詰まっていることは確か。

 映画としても及第点。全体としてTVサイズにも思えるものの、真面目に作られている印象。ダイアン・レイン、ジョン・マルコヴィッチ、マーゴ・マーティンデイルの生真面目な芝居をコントラストの効いた画面で拾い、美術や衣装やヘアメイクの仕事も上質、音楽の雰囲気と乗せかたも手堅く、ダレないテンポと緊張感と叙情性とをキープしている。

 たとえばケンタッキーダービー前のセクレタリアト。飼葉を食べる様子で観客をホっとさせ、次いで“空になっていた1つめの飼葉桶”を見せてエディに勇気を与える。こういう気の利いた、クソ真面目だけれどちゃんと頭を使っていることがわかる描写が、本作の格を上げている。

 シナリオというか、お話の進めかたの手堅さが大きなポイント。セクレタリアト自身の見せ場は意外と少ないが、ペニーの伝記映画へと振ることでスマートにまとめてみせている。冒頭の葬儀で人物紹介や状況説明をすませ、そこから丁寧に、助けてくれる存在やライバル、家族の様子などを順序よく描いていくわけだ。

 なんでディズニーが競馬映画なんだ、という疑問も、ベルモントS前のダンスパーティーで「支える」、「つながる」、「想いの強さが人を動かす」といったディズニーらしいテーマを誠実にアピールしてみせて納得。

 そんなわけで、競馬ファンかつ映画ファンという立場の観客を満足させることなんか無理だろうとあまり期待していなかったぶん、仕上がりの良さにソコソコの爽快感を覚えるデキ。
 でも当然ながら、競馬ファンかつ映画ファンという立場からの不満もあるわけで。

 物語の原動力となる“ペニーのモチベーション”に関する描写不足が、かなり痛い。これに関しては田端到さんが書いていらっしゃる通り、「同牧場産のリヴァリッジがセクレタリアトの前年にケンタッキーダービーを制した事実をスルーしたこと」が主要因の1つだと思う。父さんが積み重ねてきたものを信じたからこそ、というペニーの行動のベースが明確に示されていれば、このあたりの不満は薄らいだはずだ。
 ただ反面、リヴァリッジの省略によって生まれたスマートさもあることは確か。ならばせめて“この牧場で父と過ごした時間”のフラッシュバックをもっと多用したり、「自分のレースをしろ」をより重要なキーワードとして扱うべきだったのではないか。

 僕ら競馬ファンは戸山先生が「スピードは天性のモノ。スタミナは鍛えられる」といえば「そういうもんだ」と、「菊花賞も自分のペースで走っていれば勝てた」といえば「なるほど」とミホノブルボンの競走成績を眺められる。そこには、それを僕らに信じさせるミホノブルボン自身の走りとか坂路の効用に関するデータ/印象といったものが大きかったわけで。
 セクレタリアトについても、単にペニーが「強いと信じている」だけでなく、その速さと強さを見る者に納得させるだけの根拠や描写ももっと欲しかったところ。あと、用語のリアリティもイマイチ。これは字幕のせいだが。

 それからレースシーン。直線で明らかに追っていない、それどころか手綱を絞ってるのは興ざめ。ベルモントSの再現度はペニーが喜んで手を振っているところも含めて上々だけれど。

 さて、本棚で眠っている『ホース・トレーダーズ』でも読むか。

●主なスタッフ
撮影/ディーン・セムラー『2012』
編集/ジョン・ライト『インクレディブル・ハルク』
美術/トーマス・E・サンダース『赤ずきん』
衣装/ジュリー・ワイス『きみがぼくを見つけた日』
音楽/ニック・グレニー=スミス『ザ・ロック』
音響/カミ・アスガー『ゾンビランド』
音響/ショーン・マコーマック『アポカリプト』
スタント/ラスティ・ヘンドリクソン『トゥルー・グリット』
スタント/フレディ・ハイス『3時10分、決断のとき』

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