ロック・オブ・エイジズ
監督:アダム・シャンクマン
出演:ジュリアン・ハフ/ディエゴ・ボネータ/ラッセル・ブランド/マリン・アッカーマン/ブライアン・クランストン/ケヴィン・ナッシュ/ジェフ・チェイス/T・J・ミラー/メアリー・J・ブライジ/ポール・ジアマッティ/アレック・ボールドウィン/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/トム・クルーズ
30点満点中17点=監3/話2/出4/芸4/技4
【弾けろロック魂】
1987年のハリウッド。シンガーを夢見てオクラホマからやって来たシェリーは、運よく知り合ったドリューの紹介で憧れの“バーボンルーム”に職を得る。そのバーボンでは伝説のロックバンド=ステイシー・ジャックス&アーセナルの解散コンサートが近づき、ロックを毛嫌いする市長夫人パトリシアの抗議デモが激化。シェリーとドリューの恋の行方は? 落ちぶれたステイシーは立ち直れるのか? パトリシアの狙いは何なのか?
(2012年 アメリカ)
【直球勝負】
舞台となる1987年に来日したのは、ビリー・ジョエル、マドンナ、そしてマイケル・ジャクソンといったポップス界の超大物たち。当時、U2やボン・ジョヴィも『ビルボード』誌では“ポップ”に位置づけられていたらしい。ヒップホップも台頭を始めている。
つまり、ロックの危機と呼べた時代。まぁ本作にちょっぴり漂う“ロックの危機”は、いくぶん誇張されたものだろう。だいたいこの映画自体、ノリが軽いし。
監督は『ベッドタイム・ストーリー』のアダム・シャンクマンだけれど、『Glee』でもメガホンを取っていて、音楽のアダム・アンダース&ピアー・アストロムも『Glee』で名を売った人たち。そんなわけで本作もスタートからゴールまで一貫してYA向け、挫折と成功を歌う軽ぅい青春ミュージカルだ。
うん、軽いお話と軽い作りだよなぁ。典型的おのぼり少女がロックスターを目指す若者と出会い、そこに伝説のロッカーが絡んでっていう安さ。ハリウッドの看板から夜景を見下ろしながら恋を語っちゃったりするし。「バーボンルーム」とか「ビーナスクラブ」なんてネーミングもヒネリなし。
80年代風のダンスをとりたてて工夫せず撮るところも含め、愚直なまでに軽い。
そこに、なんとかロック魂をプラスしようとする心意気が、この映画の味わい。1小節につき4~8カットくらい使って疾走感を演出し、シーンを夜と室内に絞ることで猥雑さも醸し出す。小便してる最中にもフェティッシュなプレイにも歌を乗っけて、なんともグルービィ。『マグノリア』や『ザナドゥ』をパロってしまうのも反逆のロック魂か。
役者も、主演ふたりが生真面目にボーイ・ミーツ・ガールをまっとうする周囲で、“その曲を歌い続けている感”たっぷりに熱唱するステイシー役トム・クルーズ、悪ノリに近いところまで突き抜けているキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、コミックリリーフの似合うアレック・ボールドウィンといった大御所勢がいい仕事。本作の作りのキモである「ストレートで実直なんだけれど、スパイシーさもプラス」というスタイルを体現するとともに、ニヤニヤを巻き散らかしてくれている。
「ハムスターが死んだとき、あなたの歌に救われた」
「男に品位を求めてもムダ」
みたいに、音楽の真実、男女間の真理に突っ込んでいくのもロック魂といえなくもないか。
スッゲーくだらない軽ぅい青春ミュージカルなんだけれど、そのくだらなさにロック魂を注入しようとして熱くなって、でもやっぱり軽いっていう、イケテなさもまたロックかもね、と思わせる作品。
●主なスタッフ
原案/クリス・ダリエンツォ
脚本/ジャスティン・セロー『アイアンマン2』
脚本/アラン・ローブ『ウォール・ストリート』
撮影/ボジャン・バゼリ『魔法使いの弟子』
編集/エマ・E・ヒコックス『パイレーツ・ロック』
美術/ジョン・ハットマン『ツーリスト』
衣装/リタ・ライアック『アポロ13』
音楽監修/マット・サリヴァン『ドリームガールズ』
振付/ミア・マイケルズ
音響/ジョン・A・ラーセン『猿の惑星:創世記』
音響/ミルドレッド・イアトロウ『幸せへのキセキ』
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