ソウル・サーファー
監督:ショーン・マクナマラ
出演:アナソフィア・ロブ/ヘレン・ハント/デニス・クエイド/ロレイン・ニコルソン/キャリー・アンダーウッド/ロス・トーマス/クリス・ブロシュ/ケヴィン・ソーボ/マリーナ・バーチ/ジェレミー・サンプター/ブランスコム・リッチモンド/コディ・ゴメス/クレイグ・T・ネルソン
30点満点中17点=監3/話3/出4/芸3/技4
【片腕のサーファー】
カウアイ島。サーファーである両親のもと、自身もサーフィンの才能を開花させ、優しい兄ふたりや親友アラナらに囲まれて幸せに暮らすベサニー・ハミルトン。だが地区大会が間近に迫ったある日、サメに襲われ左腕を失ってしまう。一命は取り留め、厳しいトレーニングを経て復帰したベサニーだったが、片腕のハンデはいかんともしがたかった。失意の中、津波の被害に遭ったプーケットをボランティアとして訪れた彼女は……。
(2011年 アメリカ)
【ドライにまとめたおかげで奥行き不足】
実話ベース。スピードは十分、というかリアルタイムに出来事を畳みかけることによって緊迫感を醸し出している。ただし思っていたよりアッサリ風味だ。サメに襲われるところからして、いきなり淡白。
もちろん腕を失ったことによって直面する困難な状況は描かれるし、フィジカル以上にメンタル面が課題になることも示唆され、そこにはウジウジや落ち込みもあるけれど、それよりも希望、乗り越えるための工夫、可能性を重視してドライに見やすくまとめてあるイメージだ。
そのぶん、人間関係が浅い。励ましたり協力してくれたりぶつかったりする相手=両親、兄たち、親友、ライバルの扱いがやや記号的で“その人だからこそベサニーに与えられた影響”といった雰囲気が希薄だ。朝ドラの総集編くらい“人”が省略されている。
引き上げられたサメをわざわざ出したんだから、その事実に対する父親の葛藤のようなものも描くべきだったろう。日々の積み重ねが進化を呼ぶというテーマや、プーケットで出会った「同情したことを恥じないで。それが新しい視点を生む」という価値観も、素敵なものだけにもっと掘り下げてほしかったところだ。
サメに食われるかも、という恐怖要素があるのでハワイのプロモーションにはできなかったのかも知れないが、せっかくのロケーションやカルチャーをもう少し盛り込んでもよかったはず。
あと、努力だとか周囲の協力だとかを全面で描きながら、結局は“神の御加護”を持ち出し、天性の才能で難局を乗り切っているわけで、そのあたりもキリスト教的信仰心の薄いアジア人一般ピーポーの心には響かない要因。
波やボードを生き物のように捉える撮影は素晴らしいものの、肝心のサーフィン技術の凄さが伝わってこないのも難。サーフィンの場面ではベサニー自身がスタントを務めているとのことだが、「これはスゴイ!」といったセリフに頼りきりで、サーフィン素人が見て感じるヴィジュアル的インパクトには欠けている。
アナソフィア・ロブは、なかなかいい。一時期は「劣化したかな?」と思わせたのだが、一安心。
監督・脚本はアイドル映画やタレント主体のお気楽TVドラマを作ってきた面々らしいので、そのバックグラウンドが素直に出た作品かも知れない。
●主なスタッフ
撮影/ジョン・R・レオネッティ『デッド・サイレンス』
編集/ジェフ・W・キャナヴァン『ショーシャンクの空に』
音楽/マルコ・ベルトラミ『キャリー』
音楽監修/ジュリア・マイケルズ『しあわせの隠れ場所』
音響/ダニエル・ペイガン『ゴーストライダー』
VFX/ダン・シュミット『シングルマン』
スタント/ブライアン・L・ケウラナ『ファミリー・ツリー』
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