« ザ・コンサルタント | トップページ | ラ・ラ・ランド »

2017/06/24

愚行録

監督:石川慶
出演:妻夫木聡/満島ひかり/小出恵介/臼田あさ美/市川由衣/松本若菜/中村倫也/眞島秀和/濱田マリ/平田満

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【あらすじ……事件の裏側、人の裏側】
 若きエリート会社員・田向とその妻、そして幼い娘が自宅で惨殺されてから1年。もう人々の話題にものぼらなくなったたこの未解決事件を、雑誌記者の田中武志だけが追っていた。なぜ彼らは殺されなければならなかったのか? 犠牲者の同僚や元同級生らへの取材で次第に明らかとなる、田向一家の“本当の顔”。また武志は、ネグレクトの疑いで逮捕された妹・光子という問題を抱えており、弁護士とともに奔走するのだが……。
(2016年 日本)

【内容について……誰も彼も必死なのかも知れない】
 まぁ確かに誰も彼もが愚かなおこないに終始する(オープニングのバス車中で見せた武志の行動から、もう素晴らしく下劣)わけだけれど。

 でもどっちかというと「みんな、ただ必死なだけじゃん」と感じる。自分のなすべきこと、やりたいことに対しては100のパワーを割くけれど、それ以外のものはいっさい切り捨てる。その人生スタンスは、考えようによっては憧れの対象にもなりうるんじゃないか。
 のんべんだらりと日々を過ごす身からすると、実は、田向や武志のメンタリティはちょっと羨ましかったりする。

 ただし度を超すと、あるいは不器用だと、その生き様はすぐさま非人間的な“愚行”となるわけで。

 現実社会を振り返っても、成功者とされる人の多くが、この種の愚行=ゴールへ向けて他人などお構いなしに突き進む生きかた、に身を委ねているんじゃなかろうか。
 金持ちや地位と名声を手にした人物は、愛されることなく、たびたび妬み・嫉み・やっかみのターゲットとなる。それは、単に負け犬の遠吠えではなく、裏でうごめいているのもただの卑屈さだけではあるまい。ひょっとするとみんな「あんたらどうせ、どこかで“愚行”に走っているんだろ」という洞察を働かせているのかも知れない。

 なんだか映画の本筋から離れた感想になってしまったけれど、ここで描かれているのは、「恨まれる(または道を踏み外す)覚悟がないのなら、平々凡々に生きてろ」ってことのように思える。だってたぶん、100のパワーを正しい方向にだけ注ぐのは、難しいはずだから。
 ああでもできれば、他人の粗探しに100のパワーを割くような人間だけには、なりたくないものである。

【作りについて……画面の雰囲気と芝居が内容に合致】
 監督はポーランド国立映画大学で学んだ人らしく、撮影のピオトル・ニエミイスキも同窓生だとか。色調補正などもポーランドで実施しているとのこと。これがもう明らかに効いている。
 明かりと影のコントラスト、抑えられた色、冷涼な画質は、作品世界の出来事が人の世の温かみとは無縁であることを伝える。

 演技陣も良質。映画の主人公は武志=妻夫木聡ながら、あくまで聞き役に徹していて、“生気を失った表情の裏に潜む炎”にゾクゾクさせられる。その佇まいは最終的に「いやお前、ナニ傍観者を気取ってるんだよ」という思いを観る者に湧き上がらせて、この人はこういう役にピッタリとハマるのだなぁと再認識できる。

 満島ひかりは、本来は前向きな役もできるはずだけれど、ここでは何かに怯えているようで、生きのびたい本能と自己破壊衝動の間で苛まれて、つまりは世紀末の小動物っぽい魅力が炸裂。
 小出恵介、松本若菜、眞島秀和は、本人のイメージが下がりそうで心配な役どころ(実際に私生活で下げちゃった人がいるのは残念だけど)。それをまっとうしたのが偉い。

|

« ザ・コンサルタント | トップページ | ラ・ラ・ランド »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/42478/65451860

この記事へのトラックバック一覧です: 愚行録:

« ザ・コンサルタント | トップページ | ラ・ラ・ランド »