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2017/06/28

ラ・ラ・ランド

監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング/エマ・ストーン/キャリー・ヘルナンデス/ジェシカ・ロース/ソノヤ・ミズノ/ローズマリー・デウィット/ジョン・レジェンド/フィン・ウィットロック/J・K・シモンズ

30点満点中18点=監4/話2/出4/芸4/技4

【あらすじ……それでも彼と彼女は夢を追う】
 ロサンゼルス。ウエイトレスとして働きながら女優への夢を追うミア。バーでのピアノ演奏で生計を立てながら、いつかは自分の店を持ち大好きなジャズに身を浸して暮らしたいと願うセブ。だがミアはオーディションを受け続けるも芽が出ず、セブは自分勝手な行動から職を失ってしまう。過酷な現実と対峙しながらも前向きさを保つ彼と彼女。ふたりは偶然の出会いから恋に落ち、未来へ向けての歩みを支え合うことになるのだが……。
(2016年 アメリカ/香港)

【内容について……よく出来ているが】
 キレイに作られているけれど、感情移入できるかといえば、そうでもないわけで。なぜかと考えると、たぶん主演のふたりが美形だから。あと、現実世界の厳しさよりロマンチックさが勝ってしまっているから。
 要するに、キレイにデキすぎている、からかなぁ。

 夢を諦めてしまった人、あるいは夢の途中にいる人が彼と彼女に成功を託す楽しみかたもあるのだろう。実際、映画ってそういうものだとも思う。 けれど、本来、夢に人生を賭けるのってツライこと。たとえばミアは、華やかな服を持っていて全体に小奇麗、売り込みのためにパーティにも積極的に参加。そんなふうに自分自身を一定のレベルに置いておくためには、削らなきゃならないものも多かったはずだ。セブにしたって望まぬ活動に勤しむことへの自己矛盾がもっともっとあっただろう。そのあたりを意識的にスルーしているように思える。

 スルーしたというか、そういったディテールよりも「主役ふたりに対して観客が抱くイメージ」に頼った、あるいは「描かなかった部分は誰もが当然想像できるものとして扱っている」という感じか。

 それと、どこかに「最終的には『何かと引き換えにした夢の実現』へと収束するのだろう」という空気が漂っていて、実際その通りとなるわけで。

 うん、やっぱりキレイにデキすぎているんだよなぁ。もちろん、そうしたベクトルで作られた“ボーイ。ミーツ・ガールのミュージカル・コメディ”であるのだから、このウェルメイド感や“軽さ”は正解なのだとも思う。これはもう好みの問題。

 目指したベクトルの範囲ではよく出来ているのは確か。ラストのフラッシュバックによって「ラブストーリーで重要なのは“切なさ”」という大命題もクリアしてくれたし。

【作りについて……撮影への不満と役者の確かさ】
 オープニングのフリーウェイの場面をはじめとして、全体に派手で明るくて丁寧に撮られている。終盤の、いかにも“セット然”とした場面もミュージカル黄金期へのオマージュとして微笑ましいし(美術は『キル・ビル』などのデヴィッド・ワスコ)、衣装(『インターステラー』などのメアリー・ゾフレス)も華やかだ。

 ただ、画面・場面の鮮度には不満。スミがかっていてパぁっと突き抜けないというか、ゴチャゴチャしているというか。監督がこだわったらしい夕暮れのマジックタイムも、もっと鮮やかに撮れたんじゃないかと思う。オスカー受賞だけれど(撮影は『アメリカン・ハッスル』などのリヌス・サンドグレン)。

 主演ふたりは文句なし。特にエマ・ストーンは、ミアという役を演じることが嬉しくて楽しくて仕方ないといった風で、こちらはオスカーにも納得。

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