お嬢さん
監督:パク・チャヌク
出演:キム・ミニ/キム・テリ/ハ・ジョンウ/チョ・ジヌン/キム・ヘスク/ムン・ソリ/ハン・ハナ/ジョ・ユンヒュン/
30点満点中20点=監4/話5/出4/芸4/技3
【あらすじ……ふたりの男、ふたりの女、いくつもの嘘】
1939年、日本の統治下にあった朝鮮半島。秀子は叔父・上月のもとで隔離されるように暮らしていた。上月は秀子が相続するはずの莫大な財産をもとに華族になることを企んでいるのだ。これを知った詐欺師は藤原伯爵を名乗ってふたりに近づき、さらに少女スッキを日本人メイドの珠子として上月家へと送り込む。秀子を誘惑し、自分が彼女と結婚することで財産を横取りするという計画だ。やがて秀子は籠絡されたかに見えたのだが……。
(2016年 韓国)
★ネタバレを含みます★
【内容について……欲情は強し】
前半は珠子の視点で伯爵の計画およびその進捗が語られ、後半は秀子お嬢さんサイドから「何が起こっていたのか」が描かれる。
で。
前編・後編の切り替えにあたる部分で、もう腰を抜かすやら声をあげたくなるやらの衝撃。眠気なんか吹っ飛びます。
そのストーリー的な、あるいは多視点構造としての面白さにドキドキさせられるわけだけれど、もう1つのドキドキファクターが、エロ。
安っぽいAVがスタコラ逃げ出すほどのエロ。「韓流だわ。観に行きましょうよ」てなノリで誘い合わせて劇場に来たようなおばさまがたを見かけたけれど、大丈夫かおい、気まずくならないか、と心配になるレベル。なにせR18+指定。
このエロ要素、観客へのサービスでも監督の趣味でも何でもなくて、実は本作におけるかなり重要なファクターだと思う。
上月も藤原伯爵も“頭”を武器にして秀子お嬢さんを支配しようとする。頭が生み出す知恵と理と利が先行し、“体”は道具にすぎず、“心”なんか無視だ(というか頭が良ければ体も心も取り込めると考えている)。
いっぽう珠子/スッキと秀子お嬢さんにとっては、“心”と“体”は不可分であり、その人の存在が欲しい、いっしょにいたいと望めば自然と肉欲もわいてくるもの、という価値観。そんな、生き物としての、より根源的な想いに突き動かされ、その幸せと快楽を守るために“頭”を動員する。
男どもと女たち、もうどっちが強いかは明らかなわけで。
久々にパク・チャヌク監督のパワーにやられた作品。
【作りについて……ふたりの主演女優にも感嘆】
秀子お嬢様役のキム・ミニ、珠子/スッキ役のキム・テリ、ともに美形であるだけでなく、「触れてはならない。けれど、だからこそ触れたい」という妖しさが極上だ。このふたりでなければ成功はなかっただろうと思わせるほどの熱量を放つ。日本語もかなり頑張っている。
ここが舞台ですっ、ヤバいことが始まっていますっ、という説得力に富む屋敷内美術と音楽、ややオイリーな画質なども同様に、物語および女性ふたりの関係性の「禁断・禁忌ゆえに抗えない魅力」を高めている。
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