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2017/07/17

ムーンライト

監督:バリー・ジェンキンズ
出演:トレヴァンテ・ローズ/アシュトン・サンダーズ/アレックス・ヒバート/アンドレ・ホランド/ジャハール・ジェローム/ジェイデン・パイナー/ジャネール・モネイ/ナオミ・ハリス/マハーシャラ・アリ

30点満点中18点=監3/話3/出4/芸4/技4

【あらすじ……彼の成長】
 マイアミ。麻薬と男に溺れる母ポーラからは、ほとんど見向きもされず生きる小さなシャロン。学校でもツマハジキ、数少ない理解者といえば友人ケビンだけ、構ってくれる大人は近所に住むドラッグディーラーのフアンと、そのガールフレンドであるテレサくらいだ。高校に上がっても、彼の立場は変わらず。むしろ思春期ゆえの難しさに、苦悩は大きくなるばかり。やがて立派な体格も処世術も身につけて成長したシャロンだったが……。
(2016年 アメリカ)

【内容について……外観と中身の関係・違い】
 セクシャルマイノリティ(ゲイ)でドラッグの売人でアフリカ系アメリカ人。自分との共通点はこれっぽちもなく、どれほど想像力を動員しても、シャロンに感情移入することは難しい。

 でも、というか、だから、というべきか。
 望まぬ出来事、偶然の出会い、誰かの行動が、現在と未来をパワフルにシェイクし、予想もしない方向へ自分を動かしていく。もちろん道を自ら選ぶことも可能なはずだけれど、用意される選択肢は置かれた境遇によって異なり、限定もされる。“選べる道”の中に、そもそも選びたいものがないってことだって考えられるわけだ。
 そんな人生のありようが、遠い世界にいる遠い人の物語だからこそ、真実味を帯びる、ということもある。それがこの映画だと捉えたい。

 もうひとつ。

 黒い肌は月の光の下では青く見える。それは、モノの見えかたなんてある一面にすぎず、角度によってコロリと変わることを示唆しているのか。あるいは、もともと持っている資質や特性が美しい光によって表出するだけのことなのか。はたまた誰かや何かに照らされ(影響を受け)て姿かたちは変わるけれど、果たして中身はどれほど変化するものなのか、という疑問を提示しているのかも知れない。

 いずれにせよ、外観と中身の関係・違いについて思索させるためのキーワードなのだと考えてみる。
 若い頃と成人後のシャロンの外見的な相違。でもその体内に一貫して息づいている一途な想い。彼は確かにアフリカ系アメリカ人であり、ヤバい商売に足を突っ込んでいる雰囲気も醸し出しているが、じゃあゲイでありツラい幼少期を過ごしたことまで判断できるだろうか。
 その見た目によって社会から排除されてきた歴史を持つ人々だからこそ抱える「視覚的に捉えられた私と、本質的な私の違い」という大テーマを、小さな男の小さなラブストーリーの中で語ろうとする作品でもあるのだろう。

【作りについて……キャスティングとカラーリング】
 フアン役マハーシャラ・アリがオスカーを獲得。特異なポジションにいる特殊なキャラクター(というか、彼もまた遠い世界の遠い人だな)であり、正直どの程度の演技力なのかわからないけれど、強い存在感を放っているのは確か。でも、ナオミ・ハリスの熱量のほうが印象的だし、幼少期(アレックス・ヒバート)~少年期(アシュトン・サンダーズ)~成長後(トレヴァンテ・ローズ)と3人の役者が表現したシャロンの、そのシームレスなつながりもまた見事だ。

 肌の色合いの表現=撮影と色調のコントロールには、かなりこだわったとのこと。テーマとも密接にかかわる部分であり、当然の配慮だろう。細かな粒子がギラリと光って、まるでスクリーンに存在を塗りたくるような各人物の描かれかたは、眼に焼きつく。

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