ハードコア
監督:イリヤ・ナイシュラー
出演:シャールト・コプリー/ダニーラ・コズロフスキー/ヘイリー・ベネット/アンドレイ・デミエンティエフ/スヴェトラーナ・ウスティノヴァ/ダーリヤ・チャルーシャ/オレグ・ポドュブニー/ウィル・スチュワート/イリヤ・ナイシュラー/ティム・ロス
30点満点中19点=監4/話3/出4/芸3/技5
【あらすじ……俺は誰だ? 彼女はどこだ?】
研究室のベッドで目覚めたヘンリー。記憶はゼロ、全身はサイボーグ化され、妻だと名乗る美女エステルが目の前で微笑む。「瀕死だったあなたを復活させた」という彼女は、だが、超能力を操る謎のロシア人エイカンに連れ去られてしまう。ヘンリーは事情を知るらしい男ジミー(たち)の助けを得ながら、新しく手に入れた強靭な肉体を武器に、エステルを救出すべく奔走し躍動する。全編を通じてヘンリーの一人称視点で描かれる驚愕の作品。
(2015年 ロシア/アメリカ)
★ネタバレを含みます★
【内容について……面白さは極上だが限界も】
あの、もうね、目くるめく1時間30分。ひたすらヘンリー目線で突っ走る、そのスリルとコーフン。
こちとら『DOOM』『キングスフィールド』『エコーナイト』『キリーク・ザ・ブラッド』『クーロンズゲート』といった一人称視点ゲームにガッツリとハマったクチだから。
ただし。ワクワクするのは確かでも、ヘンリーが直面するピンチを追体験するとか、真のヴァーチャル・リアリティ作品とか、そういう感じではないように思う。
というのも、ゲームの場合はコントローラーの操作によって“プレーヤーが動きを選択し、ストーリーに干渉し、つまりは自分自身を主人公の立場に置くことが可能”であるのに対し、こちらはホントに突っ走るだけ。ヘンリーという、観客とは別個の自我が、そこにはある。
いわば“主人公の頭部に取り付けられたカメラの映像を媒介として彼の行動を見守る”、あるいは“オートマティックで進むストーリーに付き合う”ことになるわけで、それは通常の方法論で撮影された映画と同等だ。
この手法を映画に取り込むことの可能性や面白さよりも、ある意味では、限界と歯がゆさを認識できる作品といえるのかも知れない。VRヘッドセットで観れば、また印象も変わってくるだろうけれど。
それと、最終盤で抱いた疑問。あれ? 『ハードコア』を観ているつもりだったんだけれど、これって『攻殻機動隊』じゃないの?
だって全身義体に疑似記憶だもんね。いや実際、この後で観ることになる『ゴースト・イン・ザ・シェル』より、(内容的にもクオリティの高さ的にも)よっぽど攻殻ですわ。
【作りについて……現場の頑張り】
ただ単に「全編が一人称視点だと面白くね?」というワンアイディアに頼るだけじゃなく、1シーンごとのアクションに実に力が入っている。走る飛ぶ飛ばされる落ちる殴る殴られる撃つ。バリエーションは豊か、痛さや重量感や焦燥が伝わってくる。
VFXも多用しているはずだし、さまざまな場面をテンポよくシームレスにつなげていく編集の技も光るが、ポスト・プロダクション以上に、アクションのアイディアと思い切りの良さ、綿密な計算、SFX、スタントマンの度胸、撮影など、現場の頑張りで丁寧に撮っているなぁという印象だ(それゆえにドキュメンタリー感は薄くなっているが)。
ヘンリー目線なので「主演がいない」わけだけれど、そのぶん変幻自在に張り切っているのがシャールト・コプリー。演じていて楽しかったろう。なんだか奇人変人専任俳優の第一人者となった感すらある。
それ以外のメンツは、ちょっとB級臭さが勝っている(まぁ実際B級映画なのか)し、ティム・ロスですら力の入っていない芝居なんだけれど、それが逆に描かれていることのアヤシサと奇天烈さを増強させているのが、なんだか楽しい。
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