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2017/09/13

パトリオット・デイ

監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ/ジョン・グッドマン/ケヴィン・ベーコン/J・K・シモンズ/ミシェル・モナハン/アレックス・ウォルフ/セーモ・メリキッツェ/メリッサ・ベノワ/クリストファー・オシェア/レイチェル・ブロスナーン/ジェイク・ピッキング/レナ・コンダー/ジミー・О・ヤン/マルティネ・アサフ/マイケル・ビーチ/ジェームス・コルビー/カーラ・オコネル/デヴィッド・オルティーズ

30点満点中18点=監4/話3/出4/芸3/技4

【あらすじ……爆破犯を追い詰める102時間】
 2013年4月15日、愛国者の日(Patriots' Day)。ボストンマラソンのゴール地点で二度の爆発が起こり、多数の死傷者が出る。混乱の中、懸命に救護や避難誘導を続けるのは殺人課の刑事トミーらボストン市警の面々だ。デローリエ捜査官が率いるFBIも到着し、テロとして事件の捜査を開始する。やがて地域に詳しいトミーの尽力によって付近のビデオ映像が解析され、2人の容疑者、black hatとwhite hatが浮かび上がることになる。
(2016年 アメリカ/香港)

【内容について……憎しみを打ち消すもの】
 大惨事の中で、誰(主として捜査当局)がどのような意志でどう行動したかを描いている点で、肌合いとしては『ワールド・トレード・センター』に近い。ただし、あちらがプロフェッショナル賛歌の色が濃かったのに対し、こちらはやや異なるメッセージを発している。

 トミーはすぐさま的確な指示を出し、事態の推移に合わせて全警官・全捜査官が死力を尽くして行動する。小さな遺体のそばで、ただひたすら立ち続ける警官が示す使命感。それらを丁寧に拾い上げて描いていて、“頼れるプロたち”を称える映画であることは確かだ。
 いっぽうで、そんなプロたちもそれぞれ家庭を持ち、葛藤を抱える一個の人間であり、それでも逃げず苦難に立ち向かっている様子を示す。また一般人の犠牲者にも光を当て、彼らが悲劇的運命に負けず未来を切り開いていく姿も見せる。

 つまり礼賛されるのは、善は勝つ、愛は勝つ、悪や破壊には負けないという信念と、その信念に従って行動する人間そのものなのだ。

 捜査の進展と解決に寄与するのは、単に捜査機関の優秀さだけでなく、周辺の状況や偶然・幸運も大きかったことが提示される。この点では、マニー君グッジョブ。けれど彼の行動だって「負けない」「生き延びる」という強い意志の現れだったはず。
 地域に根差した日頃の活動ゆえにトミーは捜査に大きな影響を与えた。コリアー巡査は何発撃ち込まれようが銃を手放さなかった。彼らの行動を支えたのは、自分が暮らしている世界への愛着にほかならないだろう。

 またトミーたちは「絶対に犯人を捕まえる」と決意を口にするが、そこに復讐の意味合いは感じられない。「そうすること(自分たちの職務に全力で取り組むこと)が何よりも重要であり、それが最終的には平和と安心につながる」という宣言に思える。
 ピーター・バーグは『キングダム/見えざる敵』で「テロの要因として存在する憎しみvs憎しみの対立構図」を描いたが、本作では「その憎しみを打ち消すための、希望としての、愛と善をまっとうするメンタリティ」を正面から見据えている。その変化が興味深い。

【作りについて……誠実な仕上がり】
 爆破の瞬間や地獄絵図と化した現場の様子を、リアリティたっぷりに再現したSFX、VFX、スタント、美術、音響の仕事が素晴らしい。
 そのリアリティの中で、適度にドキュメンタリータッチ、適度に劇映画として撮影・編集がおこなわれていて、緊迫感やその場感を作り出すと同時に素直に作品内部へと入っていける雰囲気も生んでいる。『ソーシャル・ネットワーク』のトレント・レズナー&アッティカス・ロスらしい、静謐でミニマルっぽいサントラも、事件解決に黙々と取り組む警官たちの“芯の強さ”を支えている。

 事件とその解決のあらましはwikipediaの「ボストンマラソン爆弾テロ事件」の項に詳しいが、ここを読むと、本作が上手に整理され、ほとんど嘘がないことがわかる。それでいて(というか、だからこそなのか)社会派一辺倒ではなく、娯楽作的な雰囲気も感じさせる展開が秀逸。まずは日常を見せてから、という語り口も馴染みやすさに寄与している。
 実直で、誠実で、面白さ味もある仕上りだ。

 マーク・ウォールバーグは“問題のある熱血漢”をストレートに演じている印象で、いつも通り。これに対してケヴィン・ベーコンは、この人が最近観る者に抱かせている“冷徹さ”だけではなく、揺れ動く心と責任者としてのプレッシャーも見せ、それでも成すべきことを成し遂げる難しい役柄を上手く表現している。
 ジョン・グッドマンは「歳を取ったなぁ」というイメージ。それが出しゃばらない渋さにつながり、警視総監役に説得力を与えている。
 J・K・シモンズは、歩いているだけでなんでこんなにカッコイイんだろうか。他の映画でもそうだけれど、自然と「長年その仕事に就いてきた」という雰囲気を出せる力量に感心させられる。

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