ウルヴァリン:SAMURAI
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン/TAO(岡本多緒)/福島リラ/スヴェトラーナ・コドチェンコワ/ブライアン・ティー/ハル・ヤマノウチ/ウィル・ユン・リー/ケン・ヤマムラ/角田信朗/ファムケ・ヤンセン/真田広之
30点満点中17点=監4/話3/出3/芸3/技4
【因縁の地、日本での戦い】
死に追いやってしまったジーンの幻影に苦しみながら、もう誰も傷つけることのないよう山奥をさまようウルヴァリンことミュータントのローガン。そこへ現れた雪緒は、彼女の雇い主である矢志田が死の淵にいることを告げる。矢志田は、長崎に原爆が落ちた際、ローガンが救った男。日本を訪れたローガンは、矢志田の息子シンゲン、孫娘のマリコ、忍者、やくざ、政界、ミュータントのヴァイパーまでもが絡む争いに巻き込まれることとなる。
(2013年 アメリカ/イギリス)
【楽しく長閑なバカアクション】
トンデモ日本も目につくものの、まぁ許容範囲。むしろ米国産グラフィック・ノベルにありがちな(そこでのみ通用する)“アナザー・ジャパン”と捉えればいいんじゃないか。あのハイテク・ベッドとかね。
だいたい、武装したコワモテたちがおおっぴらに警護する葬儀、そこに法務大臣が参列しているバカ映画なんだから、リアリティなんか求めちゃいけないわけで。
それに、階調の少ない(黒がツブレまくり)絵で捉えると、寺とか屋敷とかカプセルホテルのビルとか温泉地が、こんなふうに映って“日本っぽい異空間”が作られるんだと感心させられたりもする。
日本人役に中国系を当てるってのも、いまさら目くじら立てずともよし。ヒロインふたりに演技経験のほとんどない人材を持ってきたのだって、マリコ役TAOは静止画より可愛く、ストーリーを引っ張っていく役をまっとうしているし、雪緒の福島リラ(デヴォン青木と見分けがつかん)もよく動いている、ていうか、そう撮ってもらっていて、映画を支えている。
シナリオは、説明に次ぐ説明で決して上等ではないんだけれど、必要なこと(忍者集団の存在とかシルバー・サムライの前フリとか)をちゃんと盛り込んであって、意外と真面目。「やっぱりな」という安心感もある。
むしろ気になったのは、銃撃戦の中でもパニクらない通行人(あ、これもひょっとして日本人リスペクトだったりして)と、新幹線&高速バスの2日旅程だった長崎~東京間をクルマで一瞬にして移動したところだ。
だいたいね、腕の立つ風来坊がヤクザの跡目争いに巻き込まれて娘と恋に落ちて……っていう古臭くて長閑な展開が、もう小林旭やら渡哲也の世界なわけです。『鉄の爪を持った渡り鳥』みたいな。
日活や東映作品ではなくウエスタンに影響されているんだろうけれど、結果としての日本リスペクト(?)が嬉しく、舞台を中途半端に広げずほぼ日本に絞った点にも好感が持てる。
なにより、楽しんで作ったんじゃないかなぁ。「日本にはこんなホテルがあるらしいよ」「ギャハハ。じゃ『火星探検』で」「あと日本っていったらやっぱ鳥居がシンボリックなランドマークでしょ」とか。
とりわけ新幹線でのアクションがもう、笑えるのなんの。アクションのスタンダードである“列車の上”を新幹線にするだけで楽しくなるのだなぁ。
そんなわけで、もう何にも考えず楽しめるバカアクションなのである。
そうそう、ウルヴァリンを捉えて古井戸に放り込んだ帝国陸軍だか海軍だかって、優秀だったんだな。
●主なスタッフ
脚本/マーク・ボンバック『トータル・リコール』
脚本/スコット・フランク『ザ・インタープリター』
撮影/ロス・エメリー『アンダーワールド:ビギンズ』
編集/マイケル・マカスカー『メタルヘッド』
美術/フランソワ・オデュイ『リンカーン/秘密の書』
衣装/アイシス・マッセンデン『ナルニア国物語/第3章』
音楽/マルコ・ベルトラミ『スノーピアサー』
音響/ジョン・A・ラーセン『ロック・オブ・エイジズ』
音響/ドナルド・シルベスター『ナイト&デイ』
SFX/ブライアン・コックス『ダーケスト・アワー』
SFX/ルイス・クレイグ『ライフ・オブ・パイ』
VFX/フィル・ブレナン『スノーホワイト』
VFX/ヴィクトル・ミュラー『スノーピアサー』
VFX/ニック・ピル『ゼロ・グラビティ』
スタント/アラン・ポップルトン『終戦のエンペラー』
格闘/ジョナサン・エウゼビオ『ボーン・レガシー』
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