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2017/09/11

LOGAN/ローガン

監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ヒュー・ジャックマン/ダフネ・キーン/ボイド・ホルブルック/スティーヴン・マーチャント/エリザベス・ロドリゲス/リチャード・E・グラント/エリック・ラ・サール/エリゼ・ニール/クインシー・ファウス/パトリック・スチュワート

30点満点中21点=監4/話4/出5/芸4/技4

【あらすじ……その少女を守るために】
 ほとんどのミュータントが死滅した世界。不死身を誇ったウルヴァリンことローガンは治癒能力を喪失しつつあり、プロフェッサーX=チャールズも老いて能力のコントロールがままならない状態だ。チャールズの面倒を見ながらリムジンの運転手として暮らすローガンは、ガブリエラと名乗る女性から少女ローラをノースダコタへ送るという仕事を請け負う。が、なんとローラはローガンと同じ“アダマンチウムの爪”を持つミュータントだった!
(2017年 アメリカ/カナダ/オーストラリア)

★ネタバレを含みます★

【内容について……シリーズ最高傑作】
 諦めや哀しみといったネガティヴかつ静的な意識をまとい、肉体的な衰えも感じ始めている男=ローガンが、体内に湧き上がる衝動を抑え切れず、自分のできることを漢(おとこ)としてやり抜く姿を描き切る。

 これまでの歩みは無駄だった、というあまりに酷い宣告を突きつけられ、精神に変調をきたしつつある老人=チャールズが、わずかな希望にしがみついて苦闘し、ひっそりと役割を終える様子を画面に刻みつける。

 望まぬ力を与えられ、宿命を背負わされ、ようやく巡り会えた理解者・指導者への思慕すらも持て余し、それでも自分の足で歩こうと決意する、幼きミュータント=ローラの成長を綴っていく。

 たがいに特殊な存在であるがゆえに、ともに修羅場を潜り抜けてきたがゆえに、血と歴史の連なりゆえに、三者にはしっかりと、唯一無二のつながりが築かれる。悪態をつき、反発し、意見を異にし、それでも同じ地平線を目指す者どうしとして寄せ合う確かな信頼と、そこから生まれる「守らなければ」という使命感。

 そんな彼らの様子を、悪党撃退西部劇風アクション+ロードムービーのミックスでまとめあげる。しかも、ひねくれた『シェーン』+血塗られた『ペーパー・ムーン』という驚天動地のアレンジだ。
 あくまでも純エンターテインメントとしてスリルとワクワクを積み重ね、ユーモアを込めながらも、全編に渡って“斜陽”の気配をみなぎらせ、“終焉”も予感させる絶妙なバランス。その緊迫した空気によって、観る者を2時間強のあいだ惹きつける。

 いやおい、待ってくれ。まさかこのシリーズで泣かされるとは思っていなかったぞ。

 終盤、ローガンの背後から(打合せもなしに)ローラが飛び出して敵を駆逐する、そのコンビネーション。説明セリフに頼らず、情感あふれるシチュエーションでもなく、激しくスピーディな戦いのシーン、すなわち“ローガンの血が生きるべき場所”で、行動によって「ああ、このふたりは間違いなく同じ景色を見ている」ということが示されて、震える

 疑いようもなく『X-MEN』シリーズにおける最高傑作だ。

 ちなみに本シリーズのIMDb/自分の評価は以下の通り。
『X-メン』 ----------------- 7.4 / 16
『X-MEN2』 --------------- 7.5 / 18
『X-MEN:ファイナル ディシジョン』---- 6.7 / 16
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』 - 7.8 / 18
『X-MEN:フューチャー&パスト』 ----- 8.0 / 18
『X-MEN:アポカリプス』 --------- 7.1 / 16
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』----- 6.7 / 17
『ウルヴァリン:SAMURAI』------- 6.7 / 17
『LOGAN/ローガン』----------- 8.3 / 20

 私的上位4作品(18点以上)はIMDbで7.5以上、下位5作品は7.4以下と、序列は似ている。世間(といってもアメリカ人か)の感覚と自分の感覚がほぼ共通しているってことが、少し意外だったりする。

【作りについて……中心3人の存在感】
 野卑で粗暴、けれど義に厚いという本来の性質に疲弊と焦燥と諦観とをプラス、新しいウルヴァリン/ローガンを、ヒュー・ジャックマンが鮮やかに創出。衰えて格闘にキレがなく、けれどX-24は若々しく狂暴で、また劇薬注入後には「これぞウルヴァリン」という活躍ぶりを見せる。そんな肉体表現の使い分けも見事だ。
 パトリック・スチュワートも、もう見る影もないチャールズを好演。後ろ姿だけで「やがて朽ちていく、かつての英雄」を演じてしまう。

 そして、ダフネ・キーン。不器用で純粋で狂暴で寂しいローラを真っ直ぐに演じる。ふてくされて助手席に座っている姿も、鋭い爪で兵士どもを斬りまくるアクションも(もちろん多分にスタントに助けられてはいるが)、どこを割っても確かにローラなのだ。
 彼女が与える衝撃と存在感は、ジョディ・フォスターやダコタ・ファニングの登場時に匹敵する。

 ド派手なVFXはナシ。特殊能力の発現ヴァリエーションも限られる。だがそれでも、描くべき人間ドラマ=ミュータントが抱える苦悩をしっかりと盛り込めば、ちゃんと『X-MEN』になることがわかる。
 末世感や閉塞感、自己破壊衝動、強い意志、人と人との関係、運命に対する反抗といった諸要素は、『17歳のカルテ』や『“アイデンティティー”』や『3時10分、決断のとき』などで描かれてきたこと。目を覚ましたら場所と状況が変わっている、という語り口は『ナイト&デイ』だ。
 これまでジェームズ・マンゴールド監督が培ってきた、または愛してきたテーマや表現技法を余さず盛り込んだ、この人の本領発揮といえる内容と仕上がりである。

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