ライフ
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:ジェイク・ギレンホール/レベッカ・ファーガソン/ライアン・レイノルズ/真田広之/アリヨン・バカレ/オルガ・ディホヴィチナヤ/森尚子
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4
【あらすじ……その新生命は人類を脅かす】
トラブルに見舞われながらも帰還した火星探査機を、かろうじて回収した国際宇宙ステーション(ISS)のクルーたち。彼ら6名は探査機が持ち帰った土壌サンプルの中に微生物を発見する。カルビンと名づけられたその微生物は、当初は原始的な単細胞生物に思われたのだが、やがて高度な知性を示すようになる。急速なスピードで成長を続けるカルビン。ISSを、そして地球上の人類を脅かす、恐るべき事態が始まろうとしていた……。
(2017年 アメリカ)
【内容について……これは警告なのだ】
いやあ、それにしても怖いもの知らずの映画だ。
なにしろ『エイリアン』と『アビス』と『ゼロ・グラビティ』をゴチャ混ぜにしたんだもの。あと『トレマーズ』っぽいところや『シン・ゴジラ』を思わせる部分もあるし、触手趣味もフリカケてっと。詳しく調べればまだまだ盛り込まれた“映画ファンにはお馴染みのアレ”はありそうだ。
つまりは「どっかで見たぞ」的であり、しかも荒唐無稽な物語でB級どころかC級と断じられても不思議じゃない中身なんだけれど、ちゃんと演出して、一流どころの役者(驚くほど豪華で、もったいない使い方)とスタッフを揃えて、使うべきところにリソースを注ぎ込めば、それなりに面白く仕上がるのだな。
また、多国籍のクルー(それぞれが何かの専門家)が協同で生活・研究を進めるISSの存在が現実社会に定着している、ってのも大きい。その事実によって、ちょっぴりだけどリアリティが増強されているわけだから(まぁISSの中で何かを燃やそうとしている時点でアレだが)。
それと、あくまで“閉鎖空間ノンストップ・サスペンス”として、深く考えずハラハラドキドキを楽しむ映画ではあるものの、ちょっとした警告も込められているのだと思う。
想定外は必ず起こる。そのキッカケは、たいていヒューマン・エラー。そして、究極のサバイバル・シチュエーションにおいては、ヒロイズムも自己犠牲の精神も、何の役にも立たない。
数々の厄災を毎年のように経験し続けていて、すぐにまた次の大きな厄災が来ることも予見されていて、それでもどこか「遠い出来事」として捉えて対策を怠っているわれわれ日本人が、なにより心に刻まなければならない警告が、ここにはあるのだ(いや、そんな大層なモノじゃなく、やはりあくまでも娯楽作なんだけれど)。
【作りについて……監督・脚本家の得意技発揮】
監督は『デンジャラス・ラン』の人。あちらは「説明を省略して一気にアクションで見せる部分と、必要最低限の説明をバランスよく配置し、軽快かつスリリングな流れを生み出している」作品だったけれど、本作も同様。得意なスタイルを遺憾なく発揮している印象だ。
脚本のレット・リースとポール・ワーニックは『ゾンビランド』のコンビで、なるほど、過去に作られた同テーマの映画を研究・分解・再構築する手腕に長けているらしい。バカバカしさとリアリティとをミックスしながら先の読めない展開を作り出して、こっそり重要なメッセージを混ぜ込む技も持ち味。こちらも面目躍如の仕事ぶりだ。
多彩なサイズ、解像度の高さ、スピード感と浮遊感で一気に見せる撮影は『ザ・コンサルタント』のシーマス・マッガーヴェイ。本当にISSに乗り込んだような気分にさせる美術ナイジェル・フェルプスとSFXデイヴィッド・ワトキンスは『ワールド・ウォーZ』の面々。VFXは『ハリポタ』シリーズのジョン・モファットや『ゴースト・イン・ザ・シェル』のダグ・スピラトロ、スタントは『ゼロ・グラビティ』のマーク・ヘンソン。このあたりの仕事も素晴らしい。
とりわけ冒頭部、人とカメラを自在に動かして、観る者をISSの中に誘う1カット長回しが上々。「ただ物語をダラダラ撮ってるだけじゃありませんよ」という意思表示から始めるこういう作品を、歓迎したい。
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