パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊
監督:ヨアヒム・ローニング/エスペン・サンドベリ
出演:ジョニー・デップ/ハビエル・バルデム/ジェフリー・ラッシュ/ブレントン・スウェイツ/カヤ・スコデラーリオ/ケヴィン・マクナリー/ゴルシフテ・ファラハニ/デヴィッド・ウェナム/スティーヴン・グレアム/オーランド・ブルーム/キーラ・ナイトレイ/ポール・マッカートニー
30点満点中18点=監4/話3/出3/芸4/技4
【あらすじ……呪いから逃れる槍はどこにある?】
ヘンリーは呪いに囚われた父ウィルを救うため、天文学者カリーナは顔も知らない父の期待に応えるため、そしてバルボッサは海の支配者となるために“ポセイドンの槍”を追い求めていた。その在り処を知るためのカギは海賊ジャック・スパロウが持つ“北を指さないコンパス”。だが落ちぶれたジャックは酒欲しさにコンパスを手放し、そのせいでジャックに恨みを持つ海の死神サラザールが復活。敵味方入り乱れての大海戦が始まる!
(2017年 アメリカ)
【内容について……徹底したベクトル】
上映時間は129分だけれど、たぶん、ぎゅっと詰めたら30分くらいの話。いや否定しているわけじゃなくて、むしろ歓迎。だって映画って“何を語るか”より“どう見せるか”が重要だから。
その解法として徹頭徹尾「アトラクション的に楽しんでもらう」というベクトルで撮られている、このシリーズ。何がどうなるのかハラハラワクワクの連続。今回は金庫強奪とかギロチン処刑のシーンでそれが炸裂して大爆笑である。
まぁそのぶん観ている側は疲れてしまって中盤あたりでお腹いっぱいになるし、ストーリーの流れがほとんど頭に残らない結果になるのだけれど。
あと、エリザベスにアンジェリカにカリーナと、常に“理知的な女性(しかも美形)の強靭な意志と主張”が物語を動かしていくのもシリーズ共通の味わい。
それと“体臭の濃そうなオジサマ(しかもオスカー級の役者)”の大暴れを見る楽しさもある。本作はサラザール=ハビエル・バルデムがその役を担うかと思わせておいて、「まさかあの人に泣かされるとは」というサプライズ。これも、どうすればお客さんに満足して帰ってもらえるかを考えたうえでのアイディアなのだろう。
もうひとつ「徹底しているなぁ」とニヤニヤさせられるのがジャックのキャラクター。基本、ロクなことはしないよね。少なくとも役に立つことや感心できることは何もしない。無謀な計画を言い出すのに手下まかせで本人は酔って寝ているだけだし、後先考えずに宝を売り払うし、何回も何回も助けられるし、いざという時の第一選択肢は「逃げる」だし。
でもオイシイところだけは持っていく。機転だけは利く。そして周囲を振り回して不幸のどん底に突き落とす。そりゃウィルだって「ジャックには関わるな!」と言いたくなります。
これだけの大作かつ超人気シリーズなのに、脇役やゲストたちこそが各作品の中心にいて、主人公はコミックリーフ/トリックスター/狂言回しで感情移入なんかできず、でも憎めない、ってのも珍しい。ああだから『ジャック・スパロウ』がタイトルじゃなく『パイレーツ(複数形ね)・オブ・カリビアン』なのだな。
と、ここまで書いてみて「たいしたこと言ってないな」と感じる。ま、そういう映画。ようやくこのシリーズの楽しみかたがわかってきたかも。要するに「たいしたことないから気楽に! アトラクションだから」なのだ。
それから、最後の最後に続編を匂わせるオマケのお楽しみアリ。エンドロールが始まった途端に席を立つ人もいたけれど、それってもったいないし、いくら「気楽に!」とは言っても作品への敬意にも欠けていると思うよ(まぁ『ツマンねぇ』『オマケとか続編とかどーでもいい』と感じて早々に劇場を去りたいっていうなら別にいいけど)。
【作りについて……トータルな仕上がりが上々】
ぎゅっと詰めたら30分とかアトラクション的とか述べたけれど、ストーリーのまとまりは過去作以上ではないだろうか(脚本は『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のジェフ・ナサンソン)。
撮りかたもスケール感・迫力とわかりやすさが両立していて、宝石で覆われた島などのヴィジュアルイメージ、劇伴らしいサントラ、破綻のないVFX、スリリングなSFX(とにかくギロチンに尽きる)など、トータルな仕上がりは2~4作目より好印象かも知れない。
ちなみにImdbでの点数(2017年7月現在)と自分の採点は以下の通りである。
『1st』……8.0/18点
『デッドマンズ・チェスト』……7.3/17点
『ワールド・エンド』……7.1/18点
『生命の泉』……6.7/17点
『最後の海賊』……7.0/18点
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